聖女マリア-2
「へぇ……」
要するに、マリアの見る予知夢は何度も同じ夢を見た時はそれが現実となるが、一回みただけの夢はただの夢であって現実ではないことの方が多いということらしい。
「……ごめんなさい、お役に立たないかもしれないわね」
「あ、いや、別に……」
自分から持ち掛けておいて引こうとするマリア。孝太郎は慌てて手を降った。これがマオウなら、冷たく突き放すかツッコミをいれるかするだろう。
「……わかった。協力する。俺も神は倒したいから」
するとマリアの表情が明るくなった。
「本当ですか!?」
そして彼女は、勢いで孝太郎に抱き着いた。突然のことに彼は戸惑いを隠せないでいる。
「あ、いや……え?」
「あ! ごめんなさい!」
マリアは孝太郎に絡ませた腕を解いた。
「悪い……俺、日本人だから慣れてなくて……こういうの」
「いいえ、悪いのは私なんです。……えっと」
ここでマリアは言葉に詰まった。
「えっと……お名前は?」
「飛騨孝太郎です」
「ひだ……たかたろう?」
「はい」
「では、孝太郎さん、よろしくお願いします」
マリアはにっこりと笑って、孝太郎の手をとった。
「あ、ああ。こちらこそ」
握手を終えた時、孝太郎はあることを思い出した。
「あ、そうだ。マリアさんみたいに神の滅亡を願う人がいるんだ。俺達と同じエアリス人の魔法使いと、あれはゴスロリなのかパンクなのか……よくわかんないけど、そんな感じの女。近いうちに皆で顔合わせした方がいいのかな……って思ってるんだけど」
「それは……神を倒そうと動いてる方々ですか?」
「まあ、そうだな。二人とも戦闘能力はあるし。それ以外に、神と対等な力を持ってそうな奴もいるし」
「神と……対等な力!?」
マリアは目を丸くした。
神と対等な力を持つ者。考えられるのは一人しかいなかった。
「まさか……魔王様!?」
「そのまさか」
あのマオウに様付けされたことに孝太郎は違和感を覚えたが、それは割とどうでもいいことであった。
「青の勇者と魔王様が手を組んだというのですか!?」
孝太郎の口から二度目の「そのまさか」が出た。
「お願いです!!」
マリアが孝太郎の手を強く握った。
「今から、私を魔王様の元へ連れていってもらえないでしょうか!?」
「えっ!?」
孝太郎は戸惑った。今日出会ったばかりの女性を変人魔王の元へ連れていって何か起きたら……、と。
「お願いします!!」
しかしマリアの目は魔王の元へ行きたい事を強く訴えていた。
「うーん……どうするかな……」
孝太郎は頭を掻いた。
「……そうだ! さっき言ってた魔法使い達も連れて来ていいか?」
クウサはマオウと知り合いのようだから、マオウが変なことをしようものならクウサが止められる。もしそれが駄目でも、ルーナと自分の二人掛かりならなんとかできるかもしれない、と孝太郎は考えた。
それともう一つ、早いうちに顔合わせをしておきたかったという理由もあった。いつまでも「魔法使い」「あの女」などの言い方をしていては不便だからだ。早く顔合わせをすれば、団結も早くなるだろう。
「そうですね……。私も会ってみたいです。そのお二方に」
「なら、まずはルーナを呼ぼう。あ、魔法使いの方な。手紙を出すから、一回家に帰らないと……」
「お供します」
「なら、行こうか」
孝太郎はフライヤーの呪文を唱え、宙に浮いた。
「えっと……マリアさんは飛べるの?」
「いえ……私ができるのは予知夢だけで……」
「そっか。なら、街の青い旗が立ってる場所ってわかる?」
「はい。この近くのですよね?」
「そこで待っててほしいんだけど」
「わかりました。では、そこで待ってますね」
そう言うと、マリアは空き地から出ていった。孝太郎も天へ、自宅へと昇って行く。




