天使-3
「まあ……一応」
「じゃあ、神と天使について。私達が神と呼ぶのは主にネレシア・ラルズという名の神のこと。こいつが悪の神で最高神。他の神は奴にさからえない」
「それってつまり、ネレシア? 以外の神は悪じゃないってことか?」
クウサはうなずく。
「そういうこと。すべてが、というわけではないけど、ほとんどの神は善良よ。ネレシアが最高神だから誰も逆らえないのだけれど」
「へぇ……」
「けど、天使はちょっと違う。天使は神のしもべよ」
「しもべ……」
「天使は神の命令なら一般人だろうと容赦なく切り付ける。……まあ、ネレシアの目的は一般人から財を搾り取ったり娘を略奪するのが主だから殺しはしないけど」
さらに、ネレシアの現在の妃は、現国王の第二王妃をさらったのだという。名前はマリー・ラルズ。彼女には娘がいたが、産まれてすぐに彼女が連れ去られてしまったので、娘は母の顔を知らない。娘――――ラナン王国の王女は名をイザベラ・ラナンキュラスという。彼女は母の顔を知らぬまま、十二の時に殺されてしまった。表向きは暗殺。
「けどね、王女は殺されてなんかいないの。王が殺されたと嘘をついた。そして、慰霊の儀式の費用や死を哀れんだ民からの寄付金を集め、それを財政難の国のために使った」
「じゃあ……王女は生きているのか?」
「そう。生きている。けど、誰も知らない」
「待てよ……じゃあ、なんでお前は知ってるんだ?」
王女はね、とクウサはゆっくり口を動かす。
「長い髪を落とされメイドの子供の服を着せられ、街中のボロ小屋みたいな家にほうり込まれたの。誰も助けてはくれない。一人で生きていかなければならない。そんな生活を六年も続けてきた」
「それって……」
「けど、王女は希望を見つけた。青の勇者が見つかった。彼を頼れば母を救える」
「クウサ……」
クウサは孝太郎の手をとった。
「お願い。母様を救って!」
孝太郎は一瞬言葉を詰まらせた。
「……お、俺が勇者なら……救えるのか?」
「え?」
クウサは首をかしげる。
「勇者なら……見捨てられた娘とさらわれた母を……救えるのか?」
「……ごめん」
二人の手が離れる。
「あなたにはまだ、自分が勇者だって自覚がないのね……」
「いや……その……」
「いいわ。あなたがその気になるまで待ってるから。けどね、あなたが神を倒す事は変えられない運命」
クウサは孝太郎の目をまっすぐ見る。
「あなたは青の勇者。間違いなく、勇者なの」
「……勇者、か」
孝太郎は自身の手の平を見つめる。
「もし俺が本当に勇者なら…………いや、なんでもない」
彼は問う。
「他に言いたいことは?」
「そうね……話を変える。今度は魔法書について」
暗い話になったにも関わらず、それを素早く切り替えてクウサは話を始めた。
魔法書はその人に見合った魔法を教えてくれる。戦士系なら攻撃魔法を、僧侶系なら回復魔法を、魔法使いなら上級魔法を。魔法書が白紙なのはその為だ。
そして、呪文は自分で決めなければならない。慣れてくると二つの魔法を組み合せて使うこともできるらしい。
「次は……そうね……。とりあえず、今言ったことを頭に入れておいて。この世の理とネレシア神とそれ以外の神に天使、魔法書のこと」
「……わかった」
「さて、とりあえず話すことは話した。家まで送るわ。道もわかんないだろうし」




