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剣神と黙示録 ~農村の少年が一柱の神になるまで~  作者: わたあめとは哲学である
約束をした日

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第6話 少女の圧

 悪魔の尾という植物を茹で初めて10分も経っただろうか。少女は、もう十分だと言うように、そそくさと別の鍋に悪魔の尾を移す。


「食べてみて、栄養価高い」


「これを……?」


 先ほどの説明の通りなら、食べたら熱を出す訳で、さらには、ただの茎のように見えるこれを食べるのは躊躇するところであった。


「塩をちびちびと掛けながらというのも良い」


 少年は、植物の入った鍋と布に包まれた小さな岩塩を手に持って、自分を眺める少女を見ては、断れなかった。


「それじゃあ……、コリコリしてるんだな。う、不味い?」


 少年としては、食感は面白く、味は微妙。評価が難しいところだった。


 (食べられるだけましか……栄養もあるらしいし)


 少女は、悪魔の尾を取り出した後の鍋を見せながら、《《使い道》》を説明する。


「この煮汁は、協会などで祝福をお願いすれば、万能の魔法薬になる。まあ、そんな役目もあるから身近。だからこそ毒として使われることも多い」


「へぇー、そうなのか」


 少年の住む村には、神父が回っては来ても、協会は無く、すぐには使えない知識だった。それでも、世の多くには協会はある。そのような場所なら一般常識であると少年が知るのは、まだまだ先の事だ。

 

「注意点だけど、魔法薬としての聖なる役目があるから、協会で悪魔の尾と言うと罰せられる。だから、そういう場所では天使の羽と呼ばれている」


「面白い話だな」


「それはそう」


 コリコリを楽しみながら、少女は小話をし続けた。



 

「やらかした。次にやりたいことの時間が無い」


 食べては話す。食べては話すを繰り返すこと、幾十回。とにかくそれは、カバンの中の、おおよそ食べられる物が無くなるまで続いた。


「いんじゃねーの? こうやって印象付いた方が、食い方とか色々覚えやすいし」


 この時点で少年は、茹でる焼く蒸すと言った世界の様々な地域で行われている調理法を会得していた。それだけではなく、食べる以外の使い方すらも見れば分かる程に。


「魔王誕生を阻止するための、最終的な日程の帳尻合わせは君がすることになる。余裕と期限の隔りがあるとは言え、余裕は作って起きたかった」


 そんな1日くらいと少年は思うが、実際に行うのは自分なのもあり、その意識には感謝していた。


「ほーん。まだ旅って言われても実感は沸かないけど……。って、俺はいつ頃出発すれば良いんだ?」


「私の感覚では、今から2年後。そして、10年以内には魔王誕生の鍵を壊せば良い」


 それは少年が今まで生きてきた年月と同等の期間。浮かぶ感想は一つだった。


「長いなー」

 

「西への移動で長くても5年。でも、前言った組織、カルツァインに勘づかれて妨害でもされれば、それは年単位で伸びる。それでも10年は掛からないと思う」


 そう言われても少年の気持ちは何も変わらない。


 


「予定を変えて、君には私に襲われて貰う」


「おっ、いよいよ剣の訓練だな?」


 未熟な技の練度を上げるチャンスだと奮起する少年。しかし、少女の返答は少しだけ違う物だ。


「剣では無い。生存、生き残るための訓練。これから、いつも君が帰る時間まで、三人の水人形に貴方を狙わせる」


 そう言って、少女は横の川から持ち上げるようにして、水で人を作りあげる。

 

「これは私からのハンデ、手に持つモノをよく見ると良い。…………貴方の敵は突然現れる。その瞬間、君は死ぬ」


 冷徹に告げられた言葉に、少年は突如理解する。少なくとも少女は自分に致命傷を与える気だと。


 (ああ、懐かしい。剣の練習で大きな怪我をした時、彼女は俺を即座に再生させた。それが可能なら、ここで俺がどうなろうと魔王を止めるためへの足枷にはならないはすだ)

 

 そして思う。一年の全てをぶつけよう。これは少女からの挑戦なのだから。


「水人形は今の君より弱い。それに致命傷を与えれば死ぬ。けれど、ここで直ぐまた誕生する」


「分かった」


 なんとも辛そうだ。少年は、僅かな知恵を働かせながら、辺りを見回す。

 

「じゃあ、始める。1分後にこちらは動き出す。それまでに距離をとることだ。さ、行って」

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