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剣神と黙示録 ~農村の少年が一柱の神になるまで~  作者: わたあめとは哲学である
約束をした日

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第32話 タイタン接近注意報

「持ってくのは……これだけで良いか」


 一応着けていたマントに、腰に回したカバンや鞘を取り外す。残るのは抜き身の長剣と……背中にある二本の短剣。

 

「ずっと見えてなかったけど、三本も剣を持ってくの? 予備? 何にしろ大荷物だねー」


 よく分からない動きで伸びをしているフィーリーが聞いてきた。


「ちょっとした小細工のためにな。上手くいけばこっちの長い剣じゃ切りつけられないし、その時に使う」


 二本の短剣は、規格外の体を持つジャイアントタイタンと戦うために、少年がわざわざ買ってきたものだった。

 

「へー、そうなんだ。まあ頑張ろー」


 戦闘に持っていく荷物を分けた少年達は、再度できていく隊列へと加わった。



「良いな? 冒険者ども、お前達はタイタン周辺を散開して時間を稼ぐだけでいいんだ。攻撃は我らが騎士団のカタパルトとバリスタ、それに魔法使い達がやってくれるのだからな!」


 さあ出発だという時に、冒険者担当の騎士団員がそんな事を言ってきた。数時間前にもっと詳しいことを聞かされている。それぞれが意気込んでいるのもあって、あまり関心は向けられなかった。


「この谷を抜ければすぐに奴の姿は見えてくる! その瞬間に戦いははじまるぞー! 総員進めぇー!!」


 その合図によって全員が速足で進み始める。そして、それから数分もしないうちに谷の途切れが見えてきた。それが意味するのはつまり……


「あれは……流石に大きいね」


「まあ……な」


 数日前に見たときと同じように、ジャイアントタイタンが遥か遠くの岩影にいた。その大きさは側にある壁のような岩ともそう差違は無かった。


「まだ気づかれてはいないし猶予はある! 最後列が谷を抜ける程度までには進み、そこにて迎え打つぞ!」




 近づくにつれて、ジャイアントタイタンの大きさというのは違和感や不思議さを感じさせられるように見えてきた。その感覚は確かに恐怖へと繋がるようで、それを表す声が真横からも聞こえてくる。


「うへへ、攻撃に当たらないようにするだけでも、無理じゃん、あれ。どーやって戦えば良いのさ」


「……俺らは騎士団の奴らとは違って軽装、特に協力する仲間がいるわけでもない。なら、攻撃を受け止めることなんかできっこないからな。足元に入って避けるようにして生存を目指すのが良いさ」


「うーん? できるかなぁ」


 最後に一言励ましの言葉を掛けてやろうかと少年が思った時、



「ギイィィ!! ガアァー!!」


 遠くからでもよく聞こえる声。その声の持ち主、ジャイアントタイタンは岩山を加工して作ったかのような混紡を地面に叩きつけ、こちらへと視線を向けていた。


「落ち着けぇ!! 冒険者は広がって、騎士は三人一組を忘れないように! 後衛も、接近途中にデケェのを一発はぶちこんでやれ! さあ来るぞ」 


 大声を轟かせ終わったタイタンは、のっしりと、しかし確かなスピードでこちらへと走ってくる。


「へっ、あんなの余裕……とは言えねぇけどよ、俺ら“鋼の鉄鎚”はここで終わるような玉じゃねぇ。誰も死ぬなよ、死なせるなよ」


「分かってるよ、リーダー。リーダーの方こそいつもミスるからな! よく見ておくぜ」


 少年のすぐ横にいる四人は、一応同じチームということになっているが、まだ一言も話していない。そんな人達の会話に耳を向けても、もはや遅い。

 タイタンのこちらへと迫ってくる動きを少しでも観察することに集中することにした。


 (下半身が比率として少し大きいか? いや、個体差と言えるくらいだな……やっぱ上位種って体の構造自体は変わらないのか……?)


「準備できたか……? よぉうし。タイタンは予定のルートを進んでいる! 合図したら発射だ!」


 後方では、戦いの先手を取るために準備していた攻城兵器とも言える巨大な弓と投石機が、発射体勢に入ったようだ。


(最初……最初が肝心……)


 少年は、相棒である不壊の剣を握りしめながら、とある作戦を成功させるために、発射の瞬間を固唾を飲んで見守っていた。

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