第28話 ミドルタイタン後
「この先にジャイアントタイタンがいるらしいからな……ここら辺の土を取れば良いんじゃないか?」
石棒を持ったタイタンの処理をしたあと、荒野の渓谷のような場所を進む少年達。そろそろ事前に聞いていたタイタンの縄張りと呼ばれる場所に入る頃だった。
「そーだねぇー。これ以上近づくとジャイアントタイタンに気付かれる可能性も僅かながらにも出てきてしまう。ここが……おっ、あれじゃあないかな?」
「う……あれは大きいわね」
渓谷を抜けた遥か先、僅かにしか見えないが、圧倒的な大きさによって分かる。あれがジャイアントタイタンなのだろう。
「そりゃあ騎士団も壁を欲する訳だな、あんなのとマトモに戦ってたら、人員なんて保てない」
「……一応言っておきますが、その壁として、貴方は戦うんですよ。それを忘れてはいませんよね?」
「まあな。そりゃ油断したら即死だろうけど、生きて戦うための方法は幾らでもあるからな。そっちこそどうなんだ?」
流石の少年も10m近い魔物を相手にしたことは無いが、生物学的な特徴は森の少女から聞いている。
例外の多い魔物という存在であっても基本的には物理法則には沿っているのだし、どうにかすることは可能だった。
「私はいざという時のため、ミュンジョーの側にいるつもりですから。騎士団や冒険者が壊滅するようなことがあれば、全力で走って逃げますよ」
「それじゃあ報酬は貰えないらしいが、良いのか?」
「ええもちろん。私が欲しいのはお金ではなく、ミュンジョーの安全ですし、ミュンジョーが攻撃をして活躍すれば、ミュンジョーの欲しい物も手に入ります。それで十分です」
この話を聞いた少年は、欲しい物は案外似ているのかなと、よく分からないながらに予想を立てていた。
「ここに来る前と言っていることが違うと思うのだけれど。そもそもここに来た理由だって、ヲンヌが前衛をこなすために慣れる必要があったからなのだし」
「実物を見て、考え直したのです。私が前に出て勝利するのと、私が前に出て敗北するの、後者の可能性も十分にある。そうなった時に、ミュンジョーの生存の可能性をより高めるには、私が側にいるべきだと」
少年としては、そうなるのは自身が死ぬ時なのだし、あまり考えては欲しくないが、先ほど自分がしてしまった凡ミス、あのような事をしてしまえばアッサリ自分は敗北するのだ。
ヲンヌの考えを否定することはできなかった。
「なに、怖気づいたりでもしたのかしら。まあ、あんなモノ相手だし構わないけど。……それに」
私が燃やし尽くしちゃうからね。
その言葉に少年は、張り合う気持ちでは無いが、身分を獲得するために活躍するという目的を阻害される訳にはいかないという思いと、あの巨体を燃やし尽くせるのかという疑問が浮かんでいた。
「よっし! オゥケェー。土はちゃんと取れたよ。問題が無いようであれば、片付けてすぐ出発するけど」
声の主へ視線を向けると、周囲には色々な道具を転がし、四角い箱をこちらへと掲げてくるキシスがいた。
「静かだと思ったら……手早く済ませたな」
「ここに留まっているのはリスキーだからね。それに君たちだって疲れる頃合いだろうし、早く帰りたいだろう?」
「いや、休憩も取ってるし、そこは大丈夫なんだが。……にしたって、それで上位種についての実験ができるって本当なのか? 土なんかで何か分かるとは思わないんだが」
土が欲しいという何となくの事しか言わないキシスに、少しばかり切り込んでみることにした。
「結果があっても無くても現状は、片っ端から試してみることしか出来ないのだよ。今回の、土壌に特殊な魔法または薬品が掛けられたことにより、上位種が生まれやすくなっている。ってのも根拠の薄い説でしかないしねー」
「それでもやるというのか。研究というのは、いまいち分からないな。俺はタイタンについて理解を深めるという目的は果たせたし、それ自体は構わないけど」
明確な答えや結果が無いものというのは苦手な少年であった。
「キシスの片付けも終わったようだし、残りの話は向こうでしない?」
二人の会話を遮るようにしてミュンジョーが帰還の意思を見せる。
「おっ、そうだね。また、ジャイアントタイタンをちょうど見ちゃったところだったから、その言葉はありがたいよ。もし実験について気になるなら、私について来ればいいさ」
「出発ですね。帰りも気を張って頑張りましょう」




