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剣神と黙示録 ~農村の少年が一柱の神になるまで~  作者: わたあめとは哲学である
約束をした日

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第27話 抜き足、差し足、仕留める一手

 (だいぶ進んだな……)


 あの森で少女に教わった、気配を消して歩く方法。まずは、音を立てないよう重心をずらしながら進んでいく。次に、暗がりや障害物など相手の視界に入らないルートは確実に通る。


 そして最後に、


 (もし、見られても良いように背景と同化する!!)


 少年は、タイタンが自身の方を見た時でさえ、マントを被り、地を這うことによって気付かれないでいた。


「ギグゥ?」


 


 (次の次くらいだな……)


 スタスタと歩いては這う。歩いては這うを繰り返すこと数回。少年はかなり近距離へと接近していた。


「グルァウー」


 流石にこの距離になってくると、いくら技術があっても、どうしようもなく気付かれる可能性が出てくる。最新の注意をしながらも、速度を上げる必要があった。


 と、その時、踏み込んで体重をかけた足から僅かながらにも何かが千切れていく音が鳴る。

 

 (マズイ!!)


 少年は、原因が何であれ、音という注意を引くものを出してしまった以上、仕方ない。崩れるようにして地に身を均していく。


 ブチッ。


 しかし、却ってそれが音を出す原因になってしまった。


 (靴ヒモかっ!!)


 盗賊と追いかけっこをした森で切れた靴ヒモ。もちろん少年も商人の荷などを確認したが、しっくりくる物は無かった。そこで、あくまでも一時的に付けていたヒモ。


 それが、今この瞬間、絶妙な移動と踏み込みに耐えきれず、ほどけ千切れるようにして、裂けてしまったのだ。


「グルォ? ……ぎぐぅる!!」


 急いで身を地面に隠しきったものの、完全に引いてしまった注意は外れない。気付かれてしまったようだ。


「けっ!! とりあえず喰らえ!」


 ここまで来て通常戦闘に移るのには何処か惜しいような気がする少年も、これ以外にどうすることも出来ない。先手必勝あるのみだった。


「グルウゥゥ……!」


 助走も付けた重量級の一撃は、確かにタイタンを押し込むも、その手にある石の棒で防がれてしまった。


「あら? 自信があるんじゃなかったの?」


「靴ヒモがなっ!!」


 他のメンバーも暗殺失敗を察してこちらにやって来る。質問に対して不十分な返答だろうが、目の前には一応の強敵、タイタンがいる。悠長にはしていられなかった。


「ふむ……それでもあの余裕、私達が参加しなくても大丈夫そうですね。ミュンジョーはどう思います?」


「任せちゃえば良いんじゃないかしら。私も火の魔法に限ってはまだまだ使えるけど、温存しておくに越したことは無いし、このまま見てることにするわ。ほら、一本いったわよ」


 ミュンジョーの言葉通り、少年は数度の打ち合いでタイタンの片腕を完全に切りとばしていた。このまま戦闘が続いたとしても、出血多量で決着がつくのは明らかだった。


「流石の大きさだねー。あの体、片腕だとしても私じゃ殴り殺されそうだよ。あぁ怖い」


「それにしては、そう怖そうに見えないけれど?」


「そりゃあね。あそこまで痛め付けられて、もういつ死ぬかも分からない者だからね。安全も確保されてるし……」


 片腕を失ったタイタンは、少年の猛攻により体は傷だらけ。それでもまだ剣戟をいなしているタイタンを仕留めるため、少年は算段をつける。


 (まだ死なねぇのか……、殺りきるにしても、この分厚い体に突きは不安が残る。やっぱ首か? いや、届かねぇな。こうなれば残った腕も貰うしかないか)

 

「っ! てらっぁ!」


 少年は隙のあるタイタンの右側面へと周り、タイタンの剣を外側へ押し弾くための一撃を加える。それよりできた脇の下の空間。少年は切り上げるようにして、腕に大きな切り傷を与える。


「グルゥ……」


 切断とはならずとも、完全に腕が動かせないタイタンにはそれ以外の様々な負傷も重なり、限界が来ていた。


「……っ!」


 ここまでして苦痛を長引かせる必要はもう無いと、前屈みになるタイタンの首へ、最後の一撃を加えた少年。


「おおう……これは中々」


 主要な部位の欠落、大きな血管が切られたことによる出血。少年達の前には、タイタンの座り込んだ死体が、悲劇のオブジェのように佇んでいた。

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