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剣神と黙示録 ~農村の少年が一柱の神になるまで~  作者: わたあめとは哲学である
約束をした日

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第23話 酒と依頼

「バカな冒険者が大声で叫び回ってたから来たけど、貴方、何したのよ?」


「腕相撲、したのさ……」


「だからって、こうはならないでしょう!?」


 元から少年とダングジジイの対決のよって熱狂に包まれていたギルドは、酒がもたらされた事によって、引っくり返った冒険者共の巣窟となっていた。


「あの、ミュンジョー? そろそろ出ないと……もう大分囲まれていますが」


「ぬぉー? ミュンの嬢ちゃんも来たのか。まあ食ってけ飲んでけ、えりゃぁ」


 少年の元へとやって来たさっきの二人組。ダングジジイはその片方へと肩を組むようにして、酒を飲ませようとする。

 

「ヒィィ! 火」


「ダング爺! ミュンジョーから離れるのです!!」


 様々な事情により、不味いと判断した黒服の男は、ダングジジイを全力で蹴り飛ばす。


「おぉ、そうかそうか。お嬢ちゃんは火の魔法が使えるんだっけか。そりゃここじゃ危ねぇよなぁ。代わりにボウズ、さあ飲めぇ」


「んぐっ」


 少年は、ミュンジョーがされたように肩を握られる。酒はもういいと、もがいても、力を入れただけじゃ抜け出せない。濃度の高い悪酒は、急速に少年を酔わしていく。


「西へ行くぅ!!」


 その言葉を最後に、少年の自我は無くなっていった。




「ん……はっ!」


 最初に飲んでいた薬草が効いたのだろう。速やかに起きれた少年は、鞄の中を一通り確認する。


「ふう……あれ」


 首をまさぐって気づく、ギルドカードが無い。少々焦って周囲を探していると、受付嬢が近付いて来た。


「また、こんなのに巻き込まれたら大変でしょうから、上位種の件、受付処理しておきました。組合カードはこちらです。何か問題ありましたら、すぐ再処理致しますが……?」


「ん……ああ、問題無い。ありがとう」


「いえ、では一週間後、朝の鐘がなるまでに騎士団庁舎……この東本道を真っ直ぐ進んだところです。に行ってくださいね」


「分かった。じゃあまたな」


「はい。頑張ってくださいね」


 外に出てみると、空は完全に真っ暗闇。しかし周辺は、大衆居酒屋が並ぶ町としての光で満ち溢れていた。


「とりあえず腹はいっぱいみたいだな……」


 自分の胃の中に入っている物を想像したくは無いが、それでも何かは貯まっている。飯屋に寄るつもりは無かった。それに、中途半端な睡眠は余計に眠気を誘う物であり、少年の目的地は一つに決まっていた。 


「宿屋……宿屋……」 


 一応、ここは都会の中の都会、少し見渡しただけで、宿屋を表す緑の旗がチラホラと目に入る。


 (うん、ここで良いか)


 少年は、質が多少悪くても構わない。最悪、1日で引き払えばいいと、喧騒から少し離れた、裏道へと入ったところにある宿屋を選んだ。



  

「さて、何を受けるか……」


 宿で夜を過ごし、朝飯を食べた少年は、金と腕慣らしのために討伐依頼を受けるべく、ギルドへとやって来ていた。


「おぉ、昨日の坊主か。何か依頼を受けるんだな?」


「さすがに一週間ぐうたらしたら腕が鈍るしな」


 相も変わらずダングジジイは、昨日と一切変わらない位置に座っていた。


「それなら、普通のタイタン狩りで動きに慣れておくってのはどうだ? 上位種戦じゃあ、良い動きして良い報酬が欲しいんだろお?」


「まあな、でもタイタンを倒した後が厳しそうなんだ」


 そもそもタイタンというのは、3mを越える人形の魔物で、その大きさと丈夫な皮膚を使って攻撃してくる。


 視界の通る荒野に生息しているのもあり、存在しているだけで厄介だが、素材として見ると必要な部分がある。


 その筆頭が内臓。乾燥させると石炭のように固くなるそれは、火をつけると良く燃える。悪い釜でも金属を溶かすことできる程の効果を持つため、鋳造の際によく使われる。


 しかし乾燥させる分、必要な量は多く、大きな魔物であるタイタンの内臓全てを運ぶ必要がある。


 つまりは、重いのだ。

 

「そうだな……坊主は一人だったな……」


 その事をお互いに知っているために、少年がタイタン狩りを選ぶのは難しいという判断に至った。

 そう結論づける直前に、ダングジジイはあることを思い出す。


「いんや、大丈夫だ! タイミングが良かったなぁ坊主。ちょうど行きたいって奴が、二人、いや三人いる。呼んでくるからちょっと待ってろ」

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