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剣神と黙示録 ~農村の少年が一柱の神になるまで~  作者: わたあめとは哲学である
約束をした日

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第20話 変な男

 森を抜け、草原を歩き、村で寝る。旅と言っても、やることはそれだけ。魔物にも襲われるけど、所詮は人間が一度は制圧することの出来た道の上、剣を抜けば容易に対処できる。


「あ、これ切れるんだ」


 旅立つ日に、森の少女から送って貰った、猪の革で出来ているブーツ。それを、足に固定しているヒモが切れてしまった。


「どうしようかなー」


 使い始めて1ヶ月しか経っていない。いくら歩き続けていたり、戦闘で磨耗していたからと言って、これは想定外に早すぎる


「なんか代用できるもの……」


 鞄の中を漁るも、紐の代わりになりそうな細長く丈夫な物は無い。少し痛いだろうが、木の枝からでも削って作ろうかと思ったその時、横の林の奧からガサガサとした音が聞こえる。


「何だっ!!」


 戦闘になったら邪魔になる。ガバガバのブーツを蹴飛ばすようにして脱ぐ。


(魔物ならすぐ襲ってくるはずだが……)


 警戒しても何も出てこない。小鳥か風か、勘違いしたのだろうか。少し意識を切り替えようとするも、やはり何かの気配を感じる。それも近付いてきている。


(盗賊か……? いや、囲まれては無いしな……)


 気配は一つ、すぐ側だ。先制しようか判断をつける直前、思わぬ反応に気が抜ける。


「人です」


 草むらの中から立ち上がるようにして出てくる背の高い男。もっと埃や歯に包まれていても可笑しくないだろうに、着ている服はシワ一つない綺麗な黒色だった。


「……何だ? お前?」

  

 一瞬、気を抜いた少年も、違和感多い反応、見たこと無い服、林の奧から出てきたという状況。これらから人を騙って人を襲う、森の化け物の類いかと魔物以上の警戒を見せる。


「私は人です。では、バグウが先に行っているので失礼します」


 バグウと言えば、何か食べている時だけ圧倒的な馬力を出せる動物で、足は遅いが重い物を運べるため商人がよく使っているものだが……


「あ、ヒモ」


 男が走り出したのをただ見ていた少年も、商人ならばヒモを持っているのではないかと思い、ブーツを持って追いかける事にした。

 それ以外にも、その男の存在がただ単に気になるというのもあったが。


 

 

「そこで止まって、どうしたんだ?」


「機を狙っているのです。静かにしてください」


 ほんの少し走っただけで、進み行く荷車とそれを木の影から見ている男に追い付いた。

 少年は男の事を、やはり盗賊ないしは変人かと思っていたが、後ろから荷車をよく見ることで、状況に気づく。


「襲われている……?」


 少年も影に身を寄せながら、小声で問いかける。


「そうなんですよ。御者の方や私の仲間……は問題無いのですが、捕えられているので助け出すために今はこうして、静かにっ」


 同じように小さく返答されながら、喋らないよう制止される。荷車の中で男達が喋っているようだ。


「後は……御者を殺して、お前が手筈通りに。この女と荷物はアジトにな。もう一人の男も囲って叩けば良い」  

 

「へいっ」


 縄で巻かれ、首元にナイフを添えられた女は、もがきながら声を出す。

 

「ちょっ、ヲンヌの奴は何処に……モゴッ」


「おいバカッ! コイツは見た感じ魔法使いだ。下手に詠唱でもされたら怪我人がでちまうんだぞ。喋らせんなよ」


「へいっ」

 

 盗賊達は、ずらかろうとしていた。どうにかして助けなければと思う少年に、男から声が掛かる。


「今、仲間から合図が来ました。こちらの戦力は二人、貴方含めれば三人。相手を全員生け捕りにしたいのです。手伝ってくれますか?」


 思考を回し色々考えるも、返事が纏まる前に事態は動く。


「あちぃぃぃ!!」


 なんと、青い髪をした女を連れて、荷車から出ていた男が火ダルマになっていたのだ。


「バカなのね、魔法なんて口の中で唱えれば使えるの。火よ」


 そんな光景を見ていた盗賊の一人もまた燃える。それによって、盗賊達は恐れをなしたのか逃げ始める。


「速いな!」


 横にいたはずの黒服の男が既に盗賊達の側まで迫っていた。それを見た少年は、男の言葉を思い出しながら戦いの現場まで駆け寄る。


「俺は……あっちだな」


 二人の盗賊が男の反対の林の中へと走っていった。自分はそちらに向かうべきだろう。幸いまだ姿は見えてるし、速度もそう速くない。すぐ追い付けそうだった。



「な、何だよお前!」


 一人ずつ、脚を切って動けなくする。少々面倒だが、少年は二人の盗賊を引きずって荷車へと運ぶ事にした。



 

「そいつら死んだと思ってたのに、よく消火出来たな」


 少し時間は掛かったが、荷車まで戻ってきた少年。火ダルマになった男が生きているのを見て、驚嘆していた。


「当たり前でしょ、自分で出した火くらい自分で消せるわ」


 顔を隠すかのように深くローブを被った女が答えてくる。背丈からして先ほど捕えられていた女だろう。


「やっぱ魔法使いってことか。あ、コイツ等も頼む」


 黒服の男が、盗賊達を縄で巻いていたので、少年も引きずって来た二人を任せることにした。


「あ、ちゃんと生きてますね。ご協力ありがとうございます」


「殺す必要も無かったしな。それで聞きたいんだけど、お前達は何者だ? こっちは冒険者しながら旅をしている者なんだが」


 少年は状況を知るために、首からギルドカードを見せながら黒服の男と青髪の女、二人の職を聞いてみる。

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