第14話 パーティー
ギルドを出てから数時間、リークに連れられて、街を巡った。そこで少年は、旅に便利な雑貨を買ったり、今までに知り得なかった社会常識を大量に知ることができた。
「それと……この話は僕があんまり好きじゃないから避けて来たんだけど……君、西への旅って、やっぱり結構遠くまでするんだよね?」
ギルドの近く、間も無く仲間が帰ってくるというタイミングで、リークは聞いてくる。
「ん? まあな。世界の端まで行くつもり……というか行かなきゃならない」
少年は、魔王について避けていた訳ではないが、あえて他の人に話すことは無かった。だが、リークになら普通に話してみても良いな、と思い始めていた。
「そうか……。まあ、それについては詳しくは聞かないけど、君に言っておかなきゃダメな事がある」
妙に畏まったリークに少年は、駄目なことなんて何だろうと疑問に思う。
「少なくとも今、僕たちがいるこの国で国や領の境を越えるには、ある種の許可や身分が必要なんだ。君は、農村産まれと言ってたよね。なら多分……通れない」
少年は、その言葉を聞いて色々考える。抜け道くらいあるだろう? 許可というのはどれ程のだ? そのまま声に出すも、リークはそれらを塞いでいった。
「ダンジョン産の魔導具で、領境を通ったら分かるようになってる。まあ、警備隊をボコせるなら良いんだけど。許可っていうのも、商人とかで代々やってるとかじゃ無いと貰えないから厳しいかな……」
「そうか……。まあ、どうにかするよ。教えてくれてありがとう」
リークの言葉通り、いざとなれば警備隊をいなす気でいる少年も、出来ればそれは避けたいと、対策をボチボチ考えることにした。
「おーい、リーク! ギルドの前で何してるの? その子は?」
そんなことを話している少年の元に、リークのパーティーメンバーだろう。大きな槍を持った男が特徴的な、三人がやってきた。
「おぉう、少年! そうかそうか! 村から出てきたばっかなんだな! 俺は良いぜ、お前らはどうだ?」
ひときしりの説明が終わり、明日、一緒に依頼を受けるかという話なった。
「私もいいよー。リークも久し振りだろうし、目が多いと助かるよ」
「僕も賛成です。荷物持ちが多いと助かりますから」
背中に大きな鞄を背負った、モンスという背の小さな男がそれを言うとパーティー内に笑い声が走る。
「良かったよ。僕が勝手に決めた事だから、内心ヒヤヒヤしてたんだ。休んでた身だしね」
「俺も、こんなに軽く受け入れて貰えるとは思わなかった。じゃあ明日、宜しく頼む」
少年が、待ち合わせ場所などを聞いて帰ろうかと思っていたところ、パーティー内の紅一点、カリルがギルドを指差しながら大きな声で言った。
「ねね、今日はここで食べて帰らない? 明日に向けてパワーをつける的な意味で」
「お! 良いな良いな、それ。じゃあ、俺たちは獲物を提出してくるから、先に席取っといてくれよ」
一切の応答無しに決められていくそれを、少年は最低限の信頼関係を作るためには、必要かなと思い流していると、横から声が掛かる。
「ごめん今、僕、お金無いからさ、また明日でも良いかい?」
リークが金欠という話だった。
「まだそんな事言ってるんですか? リークさん。そもそも貴方が怪我したのは僕を庇ったからです。休んでる間の分け前を貰わないだけでも普通じゃないですから、これぐらい奢りますよ」
「そうだぞ! それに、ちゃんと飯を食わずに明日来られても心配だし、ミスして困るのはこっちだからな。じゃあ行ってくる。席、頼んだぞ」
そう言って三人はギルドに併設している、動物系素材買い取り所まで歩いていった。
「ああも言われると申し訳なさも、嬉しさに変わるなぁー。……明日は頑張らないと、行こうか」
「そうだな」
中に入ると、昼頃は乱雑に置かれていた椅子が綺麗に並べられ、長い縄で囲まれている。奥には、組合食堂と書かれた看板が、厨房への扉の上に付けられていて、いい雰囲気を作り出していた。
「こんなに……人がいたんだな」
「昼間は依頼に出てるからね。それに、その仕事終わりに食べてく人が多いってのもあるだろうけど」
何十人いるだろうか、まるで戦争の前のように、多くの武器を背負った男達がいる。そのような人が、美味しそうにスープをすすったり、受付嬢を順番にナンパしたりと、楽しく和やかな空気を作る一因となっていた。




