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推しに告白(嘘)されまして。  作者: 朝比奈未涼


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83/108

83.仕上げ。




優雅で楽しい、そしてほんの少し恥ずかしい、そんなひと時を過ごした後。

時間になったので、私たちは厨房へと戻ってきていた。


いよいよ、生チョコタルト作り再開だ。

次の工程は寝かせていた生地をタルトの形にする、というものだった。

ちなみに千晴はまたあの座り心地の良さそうな椅子に座って、こちらをどこか楽しげに見つめていた。

まるでどこぞの王族のようだ。




「この生地を伸ばすのよ、慎重にね」


「う、うん」




千夏ちゃんに見守れながらも、木の板…いや、千夏ちゃん曰く、ペストリーボードと呼ばれるものの上に置かれた生地を、めん棒でゆっくりと円になるように伸ばしていく。

最初は薄くなりすぎることを恐れて、おそるおそるめん棒を転がしていたが、千夏ちゃんに「少しずつ力を入れて。少しずつよ」と言われたので、指示通りに力をそっと加えていった。




「…っ」




そして少し歪だが、直径15センチほどの円がようやく一つ完成し、私はやっと息を吐いた。

緊張で今この時まで息をすることを忘れていた。




「あとはこの生地を型に入れて、はみ出ている生地をこのパレットで削ぎ落とすの」




いつの間にか千夏ちゃんも作っていたらしい円の生地を使って、千夏ちゃんが手際よく次の作業内容を教えてくれる。

私はそれを一瞬たりとも見逃さないように見て、忘れぬうちに自分の生地を睨んだ。




「お義姉様、ポイントは優しく、よ」


「うん…!」




千夏ちゃんの真剣な声に、私は同じく真剣な声で返す。

それから震える指先に力を込めて、何とか続きの工程に入った。


こうして私たちは、それぞれ三つずつ、タルト生地を作った。

そして形になったタルト生地はまた冷蔵庫で寝かされた。

その後、オーブンで焼き、次にその焼けたタルトに、チョコと生クリームを混ぜたものを流し入れた。

この工程を経て、やっと、生チョコタルトの土台が完成した。


作業の途中、板チョコを刻む段階で、板チョコを木っ端微塵にしてしまうという場面もあったが、まな板の上でのことだったので、一応は大丈夫だった。

千夏ちゃんに絶句され、千晴に大爆笑されたが。


こうして完成した生チョコタルトの土台。

次はいよいよ最後の仕上げであるトッピングだ。




「あとはこちらにある苺やブルーベリーを使って、美しくトッピングするだけよ」




テーブルの上にある苺やベリー系のフルーツを千夏ちゃんが丁寧に両手で指す。

ボウルに入れられているそれらは、生チョコを冷蔵庫で冷やしている間に、千夏ちゃんと私で一緒に準備したものだった。フルーツを洗ったのは私で、切ったのは千夏ちゃんだ。


私の前に並べられたなかなかいい感じの生チョコタルト。私が作ったとは思えないクオリティのそれに、あとは目の前にあるフルーツをいい感じにトッピングするだけ。

さすがにそれだけなら料理が苦手な私でもできるだろう。


私は早速タルトの上に一つ一つフルーツを慎重に並べ始めた。




「…」




そして並べ始めて固まった。


…なんか元気いっぱいすぎないか?


生チョコタルトに所狭しと並べられたフルーツたち。

ギチギチに詰められたそれはとても窮屈そうで、綺麗には見えない。


じっと目の前の生チョコタルトを見つめて、小さなブルーベリーをとりあえずまだ空いているところに置いてみた。

だが、それでも、やはり印象が良くなることはなかった。


何で?


どうしたらよくなるのかわからず、千夏ちゃんの方を盗み見る。

すると、千夏ちゃんの前には、芸術的な生チョコタルトがもう三つも並んでいた。

私はまだ一つもできていないというのに。




「…すごい」




千夏ちゃんの美しく、美味しそうな生チョコタルトに思わず、感嘆の声を漏らす。

生チョコの上に添えられたベリー系のフルーツと苺は、私よりも少量ながらも、バランスよく配置されている。

私と同じものとは思えない出来で、プロが作ったかのような見た目だ。


私の声に気づいた千夏ちゃんは、こちらに視線を向けた。




「…お義姉様」




そして、私の生チョコタルトを見て、言葉を失った。


ああ、言われなくてもわかる。

これはかなり落胆されている。




「お義姉様、いい?トッピングはやればやるほどいいものではないのよ?大事なのはバランスですわ。お義姉様のタルトは欲張りすぎだわ」




呆れたようにそう言い、千夏ちゃんは「これも、これも、これも、不必要ですわ!」と苺やブルーベリーを指差していく。

私はそんな千夏ちゃんに「うん」と真剣に返事をし、次のタルトに活かすことにした。

失敗は成功のもと。やればきっとできるのだ。


欲張り生チョコタルトはお父さんへのチョコにするとして、私は残り二つのタルトのトッピングを始めた。

もちろん、千夏ちゃんのアドバイスを忘れずに。





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