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推しに告白(嘘)されまして。  作者: 朝比奈未涼


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78.幸せな余韻。




side柚子




私の推し、沢村悠里くんと私、鉄崎柚子は、晴れて正式にお付き合いすることになった。


ーーーなんと夢のような話なのでしょう。




「推しが本気で私のことを好きだったなんて…。あれも、これも、夢のような出来事、ぜーんぶ、形だけ彼女である私への気遣いからじゃなくて、本気だったんだよ?やばすぎるって、きゃーっ」




私の隣を歩く雪乃に、興奮気味につい昨日実際に起きた出来事を伝える。

すると、雪乃はあまりにも興味なさげに小さく笑った。




「よかったねぇ」




いつも通りの雪乃に特に何かを思うことはない。

だが、この興奮を伝えずにはいられず、私は次の授業の教室へと移動中、ずっと雪乃に惚気話をしていた。

ちなみに朝から暇さえあれば、常にこの話をしている。




「王子と本当の意味でアツアツになれてよかったじゃん。私は最近、いい男が3人しかいないんだよねぇ」


「3人?え、多くない?」


「えー。そう?でもちょっと前までは、10人くらいはいたし。3人は少ないと思うけど」




気だるげな雪乃に驚嘆の視線を向けると、雪乃はそんな私に軽く笑った。

清楚系小悪魔美少女の価値観、恐るべし。

私なんかでは、到底理解できない領域だ。




「そんな顔して見てるけどさぁ、そっちの方がよっぽどだと思うけど?」




何とも言えない気持ちで雪乃のことを見ていると、雪乃はからかうように口角を上げた。




「みんなの注目が集まる文化祭のカップルシートで?周りに聴かせるようにキスして?さらにはその先もヤっちゃったんでしょ?さすがに私、そんなことしないし」


「な……!?えぇ!?」




雪乃の指摘に、私は驚きと恥ずかしさで、思わず言葉を詰まらせる。

雪乃の言う、「ヤっちゃったんでしょ?」とは、男女の営み、キスのその先、性行為のことなのだろう。

そんなことまだ未体験だし、そもそもあんなところでできるわけがない。


何からツッコミを入れるべきかと、顔を真っ赤にして口をぱくぱく開け閉めしていると、雪乃は「いや、大胆すぎるし、特殊すぎる初体験〜」とおかしそうにしていた。


ち、ちがーう!




「な、なんで、そ、そうなるの!ち、違うから!」


「えぇ?でもあそこでいろいろ聴いてた人、たくさんいるんだよ?喘ぎ声がした…とか、あとは…」


「あれはちゅー!濃厚なちゅー!」


「濃厚なちゅー、て」




必死に否定する私に、雪乃は変わらぬ笑みを浮かべたままだ。

そんな半笑いの雪乃に、私は必死にあの時の状況を説明した。

性行為ではなく、私たちはあの場であくまで濃厚な接吻をしていただけなのだ、と。


しかし、そんな私に雪乃は「はは、照れ隠し?今さら清楚ぶってもねぇ」と、おかしそうに笑い、全く私の話を信じようとしなかった。

だが、それでも懸命に弁明の言葉を吐き続けた結果、とうとう最後には私の話を信じるスタンスを見せてくれた。




「でもさ、状況を整理すると、アンタたち、今まで付き合ってはいたけど、両片思いだったわけじゃん?でも今はもう両思いだし、いよいよヤる時でしょ?」


「え?」




先ほどとはまた違った意味深な笑みを浮かべて、雪乃が楽しそうに、だが、どこか怪しくその可愛らしい瞳を細める。

見た目だけ清楚は小悪魔美少女、雪乃に私は首を捻った。



 

「なんで正式に付き合うことがそういうことに繋がるの?私、まだ高校生だし、そもそも婚前交渉なんてしないよ?やっぱりそういうことは結婚してからじゃないとね」


「え?」




淡々と答えた私に今度は雪乃が「え?」と呟く。

しかし、私のように首を捻ることなく、驚いたように目をぱちぱちさせた。




「このご時世にすごい女だね、アンタ」


「え?う、うん?ありがとう?」




当然のことを言った私を、何故、突然雪乃が呆れ半分で、褒めたのかよくわからない。

だが、私はとりあえず隣を歩く雪乃に、首を傾げながらも、お礼を言った。

するとそんな私に雪乃は無表情に続けた。




「…じゃあ、ピュアピュアカップルにとって、再来週の月曜日は大事な日だね」


「再来週の月曜日?」




雪乃の言葉に私は先ほどとは反対方向へ首を傾げ、雪乃の言葉を復唱する。


今は1月の終わりだ。

来週には2月になり、再来週は…。




「節分は来週だもんね。その後の大事な日って一体…?」




顎に手を当て思案を続けるが、まるで何も思い浮かばない。

何度も何度も首を捻る私に、雪乃はまた呆れたように笑った。




「バレンタインじゃん。再来週の月曜日。きちんと両思いになれたんだし、気合いの入ったチョコあげないと。…で、甘いひと時を過ごす、みたいな」


「あ、あー。バレンタインか」




すっかり私の中では封印されていたイベントなので、完全に忘れていた。

料理下手な私にとって、あれは恋の甘いイベントではなく、私のとんでも料理の生贄が選ばれる日なのだ。

バレンタインで、何度お父さんに走馬灯を見せてきたことか。


流石に推しに三途の川を見させるわけにはいかない。

ネットでどこかのホテルのシェフが作った超高級チョコレートを購入しよう。

大丈夫、お金ならまだ千晴の家でいただいたバイト代がある。




「私は適当に何か作ってあげる予定だけど、柚子はやっぱり買う感じ?チョコ」


「うん。そう。それが一番安全だし」


「確かに。それはそう」




雪乃の質問に、至極当然のように答えた私に、雪乃は深く頷いた。

それから私たちはいつも通り他愛のない会話を続け、かなり余裕を持って、移動教室へと着いたのだった。





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