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推しに告白(嘘)されまして。  作者: 朝比奈未涼


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64.最強の姉妹。




…お姫様。


聞こえてきた可愛らしい声に、思わず笑みが溢れる。

どうやらこの会場に、女の子から〝お姫様〟と呼ばれている可愛らしい人がいるらしい。


何だかその存在と女の子が微笑ましくて、ほわほわした気持ちになっていると、私の横に5歳くらいの可愛らしい女の子が現れた。




「こんにちは!お兄ちゃんのお姫様!」


「…え」




綺麗で柔らかそうな黒色の髪を後ろで一つに結び、大きなピンクのリボンを付けている女の子が、私の顔を笑顔で覗く。

大きなくりくりの瞳が印象的な整った顔立ちの女の子は、間違いなく私に挨拶をしていた。


全く見覚えのない女の子に思わず首を傾げる。


私の知り合いにこんなにも愛らしい女の子はいない。

それに私はこの女の子のお兄ちゃんのお姫様でもない。

きっと人違いだろう。


だが、だからといって無視するのも違う。


私は真横にいる女の子が誰なのかわからなかったが、意識して口角を上げた。




「こ、こんにちは」




上手く笑えていない気もするが、きちんと応えたことに意味がある。




「ちょ、里緒!」




ぎこちない笑みを浮かべ続けていると、もう1人、誰かがこの場に現れた。

女の子の横に現れた女性は、この状況にとても焦っていた。


綺麗に巻かれた黒髪に、かきあげられた前髪。

大人っぽいこの女性は20代前半くらいだろうか。


女の子とどこか雰囲気が似ており、パッと見で、姉妹なのだろう、と察せた。

それと同時に、お姉さんから何故か、私の推しである悠里くんの面影も感じた。




「ごめんね、急に。アナタ、柚子ちゃんよね?うちの悠里の彼女の」


「…え、あ、はい」




お姉さんに確認されて、戸惑いながらもこくりと頷く。


うちの、悠里…?


お姉さんの言葉に、私の頭はフル回転し始めた。


悠里くんの面影を感じる、こちらのお姉様。

悠里くんのことを〝うちの悠里〟呼び。


…これは間違いなく、紛れもなく、目の前にいらっしゃる美人さんは、悠里くんのお姉様なのでは?

つまり、この小さな愛らしい女の子は…。




「私、悠里の姉の里奈。大学生。で、こっちの小さいのが…」


「里緒!5歳!年長さん!」




笑顔のお姉さんの横で、悠里くんの妹さん、里緒ちゃんが勢いよく、5本の指を私に見せる。




「…」




突然の推しのご姉妹ご登場に、私は頭が真っ白になった。


本物の推しのご姉妹にお会いする日が来るとは。

悠里くんには、お姉さんと妹さんがいたとは。

姉妹に囲まれていたとは。


固まって黙ってしまった私に、悠里くんのお姉さん、里奈さんが「おーい。大丈夫?」と目の前で軽く手を振ってくれる。

私はその美しい姿に、ハッと我に返り、頭を下げた。




「ゆ、悠里くんとお付き合いをさせていただいております!鉄崎柚子と申します!」




推しの家族に失礼があってはならない!と、慌てる私に里奈さんが優しく笑う。

その顔があまりにも悠里くんに似ていて、思わず感嘆の息が漏れそうになった。

遺伝子がお強すぎる。




「知ってる知ってる。うちの悠里がいつもお世話になってます」


「ます!」




クスクスと笑う里奈さんの隣で、笑顔で同じ言葉を繰り返す里緒ちゃんに、胸がきゅーんっと締め付けられる。

何て愛らしくて最強の姉妹なんだ。




「なんか本当、急にごめんね?里緒が柚子ちゃんの姿見つけて、大興奮でさ」


「わたし、お姫様にずっと会いたかったの!会えて嬉しい!」




少しだけ申し訳さなそうに眉を下げる里奈さんとは、対照的に、里緒ちゃんは本当に嬉しそうに目を輝かせていた。


私は里緒ちゃんの言葉に、改めて首を傾げた。

里緒ちゃんは何故、私をお姫様と呼ぶのか…?




「あの、えっと、私、お姫様ではないというか…。何故、お姫様になっているのでしょうか」




里緒ちゃんに聞いても、詳しくはわからないと思い、里奈さんに理由を聞く。すると里奈さんよりも早く、里緒ちゃんが口を開いた。




「お姉ちゃんはお姫様だよ!お兄ちゃんのお姫様なの!」


「お、お兄ちゃん…。え、あ、悠里くんの?」


「そう!」




可愛いー!!!!!


戸惑う私に、にっこりと花のように笑い、頷いた里緒ちゃんに、胸がズキューンと撃ち抜かれる。


つまり里緒ちゃんの中では、悠里くんの彼女=お兄ちゃんのお姫様、てことになっているのね!




「悠里がよく家で柚子ちゃんの話をするのよ。写真とかも見せてね。だから私たち、柚子ちゃんのこと、前から知ってたの。里緒なんか、お兄ちゃんのお姫様に会いたい!、ていつも言ってて。もちろん、私も会いたかったよ」




里緒ちゃんに優しい視線を向けた後、こちらにも優しく微笑む里奈さんにも胸がズキューンと撃ち抜かれる。


悠里くんといい、里緒ちゃんといい、里奈さんといい。

この家族はラブ狙撃手一家だ。危ない一族だぞ。




「ここには悠里の試合の観戦に?」


「はい」




里奈さんに問いかけられて、頷く。

そんな私を見て里緒ちゃんは、声高らかに、笑顔で言った。




「じゃあ、お姫様もわたしたちと一緒に観よう!」




とんでもなく有り難く、素晴らしすぎる提案だ。

1人よりも、2人。2人よりも、3人の方が断然いい。

しかもその2人が悠里くんの最強のご姉妹となれば、ご褒美でしかない。


今すぐにでも、「ぜひ!」と言いたかったが、私はそれをグッと堪えて、おずおずと2人を見た。




「とても有り難い提案だけど、迷惑じゃあ…」




この眩しすぎる家族団らんに果たして私が混ざってもいいのか。




「迷惑なわけないじゃん?むしろ一緒に観たいし、ね」


「…は、はぅ」




悠里くんによく似た里奈さんの眩しい笑顔に見つめられて、思わず変な息が漏れる。

神様が創りし一族だ。




「ぜひ、お供させてくだしゃい」




私は気がつけばだらしない口調で、里奈さんに頷いていた。





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