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推しに告白(嘘)されまして。  作者: 朝比奈未涼


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57.勘違いフィアンセ。




そう、私はこの家のメイドとして、パーティー準備に借り出されるのだと思っていた。

しかし私は今、この大豪邸内にあるサロンのような場所で、ゴールドのマーメイドドレスに身を包んでいた。


…あれ?


急な展開に、本日何度目かわからない疑問が浮かぶ。

何故、たくさんのメイドさんに囲まれて、こんな場違いな格好をしているんだ?




「サイズに問題は?」




着替え終えた私を見て、千夏ちゃんは淡々とそう私に聞いてきた。

淡いくすみピンクの愛らしいドレス姿の千夏ちゃんは、美しく、可憐だ。

元からの美少女さと、内側から放たれる神々しいオーラが千夏ちゃんをそうさせていた。




「えっと、ピッタリだけど…」


「そう。それはよかったわ。そのドレス、アナタの為に作らせた一点ものなの」


「…え」


「ふふん。なかなか似合っているわよ、お義姉様?ますます華守の女として相応しくなったわね」




状況が未だに飲み込めず、戸惑う私に、千夏ちゃんが誇らしげに笑う。

そんな千夏ちゃんに、私はますますわけがわからなくなった。


私の為に作らせた一点もの…と、いうことはオーダーメイド?

え?オーダーメイド?




「…ちょっと状況がよくわからないんだけど、私は何故今こんな感じに?オーダーメイドドレスである理由は?何で採寸してないのにサイズがピッタリなの?」




思わず、疑問に思ったことを全て口にする。

すると、千夏ちゃんは怪訝な顔をした。




「アナタが着るドレスをそこら辺の既製品にするわけがないじゃない。それにアナタのサイズなんて当然知っているわ。スリーサイズも全部ね」


「…はぁ」




おかしなことを言うな、と言いたげな千夏ちゃんの視線に、小さく歯切れの悪い返事をする。

今、一番聞きたかった、何故、このようなことになっているのか、その理由が千夏ちゃんのセリフにはなかった。

私の聞き方が悪かったらしい。




「あのね、千夏ちゃん。その、この格好についてなんだけど…」


「失礼いたします」




今度こそ何とか今の状況について千夏ちゃんに詳しく聞こうとしたのだが、それは周りにいたメイドさんの一言によって、遮られた。




「お化粧の準備が整いました。こちらへどうぞ、千夏様、柚子様」




礼儀正しく、お辞儀をし、にこやかにそう述べたメイドさんが、私と千夏ちゃんをまた別室へと案内する。

案内された部屋の壁には、大きな鏡台がいくつもあり、その鏡の周りは白い電球で光輝いていた。

さらにその鏡台の机の上には、小さな植物が添えられており、ここを洗練されたどこか落ち着きのある場所にしていた。


何故か千夏ちゃんと共に、鏡台の前へと連れられ、座り心地のいい椅子に座らされる。

そしてそのまま複数のメイドさんによるメイクが始まった。

どんどん変わっていく私の顔を見て、思う。


…何だこれ。




「待って待って待って」




流れるように始まった作業に、私は思わず、静止の声をあげた。

いくら何でも意味がわからなすぎる。

私の声に、メイドさんたちが戸惑いながらも、一度手を止める。




「私はどうしてこんな豪華なドレスを着ているの?どうしてこんな至れり尽くせりでメイクされてるの?私もメイドなんだから、千夏ちゃんの支度を手伝う側でしょう?」




流石にわけがわからなくて、隣にいた千夏ちゃんに戸惑いを隠すことなく問いかける。

すると千夏ちゃんはこちらを見ないまま、おかしそうに答えた。




「何をわけのわからないことを言っているの?アナタはお兄様のフィアンセでしょう?フィアンセとして、我が華守のクリスマスパーティーに参加するのは当然じゃない」


「は、はぁ?」




千夏ちゃんのぶっ飛んだ発言に思わず眉間にシワが寄ってしまう。

どこをどう間違えたらそのような認識になるのか。




「…私は人手不足だからメイドとしてここに来たのであって、千晴のフィアンセとしてここに来たわけじゃないよ?しかもこの間まで私が千晴の恋人かどうか疑ってたじゃん。それが一足飛びに婚約者って」




おかしすぎる、と千夏ちゃんを見れば、千夏ちゃんも同じような目で私を見た。




「…?あのお兄様になびかない女性がいるの?現にアナタはお兄様の恋人になったのでしょう?だからフィアンセなのよ?」


「…いや。いやいやいや。ごめんけど、なびいてないし、恋人でもないし。しかも私、千晴以外の恋人がいますし」


「お兄様以外の恋人?」




なかなか噛み合わない会話に、今度は千夏ちゃんが首を傾げる。

それからしばらく黙って、また口を開いた。




「でもアナタ、お兄様のベッドでお兄様と一緒に寝ていたじゃない?それに今日ここにいるわけだし。それってもう恋人でしょ?」


「え、いや、あの、違うの。ベッドで寝ていたのは、結果的にああなっただけで、他意はないし、ここにいるのだって…」


「言い訳は結構。それよりも、お兄様以外の恋人という聞き捨てならない言葉が聞こえたのだけれど?どういうことかしら?」


「うん。そこね、それはね、私には元々悠里くんという彼氏が…」


「悠里?…ああ、あの沢村悠里ね。まだあのお方と浮気をしているの?確かにあのお方は素晴らしいお方だけど、浮気はよくないわ。その浮気癖、やはり、直さないといけないわね」


「ち、ちが…」


「違う?あら、浮気をしておいて、堂々と弁明しようとはいい度胸じゃない?」




ダメだ。全然話を聞いてくれない。


捲し立てるように話し続ける千夏ちゃんの誤解を、何とか解こうとするのだが、全く聞く耳を持ってもらえず。

そのまま、私はキッと目を釣り上がらせた千夏ちゃんに説教されることになった。

そして説教されながらも、私の身支度は再開されたのであった。





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