表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
推しに告白(嘘)されまして。  作者: 朝比奈未涼


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

5/11

5.反省文監督。





そしてあっという間に放課後がやってきた。

見事推しと一緒に帰る約束を取り付けた私は、沢村くんと帰れる2時間後を思いながらも、風紀委員室で、委員会活動に励んでいた。


…と、言っても、私の委員会活動は、やっても1時間くらいだ。

あと1時間は、沢村くんの部活が終わるまで、どこかで時間を潰さなくてはならない。


いつもより長く仕事をして、少しの時間だけ、こっそり沢村くんの部活を見て、一緒に帰ろうかな…。


この後の計画を立てながらも、書類を軽く確認していると、机を挟んで向こう側にいる金髪が目に入った。


金髪とはもちろん千晴のことだ。

千晴はあまりにもダイナミックに校則違反をするので、この度、私の決定ではなく、風紀委員の顧問の先生によって、千晴の反省文提出が決まったのだ。

そしてその千晴の監督を何故か風紀委員から選ぶことになり、私に白羽の矢が立った。その為、私は今、千晴とマンツーマンでこの風紀委員室にいた。


全く何故こうなったのか。

一生徒の風紀委員が、監督する理由も、突然千晴に反省文を書かせる流れになった理由も、全く意味がわからない。


まあ、風紀委員として仕事を頼まれたのならば、受けるしかないのだが。

それにこれに懲りて、千晴が校則を守るようになれば、万々歳だ。


改めて手に持っている書類に目を通しながらも、監督する為に、千晴を盗み見る。


窓から入る明るい夏の日差しを受けて、キラキラと輝く金髪はやはり、綺麗な顔をした千晴にはよく似合っていて。

プリントに視線を落とす、まつ毛はとても長く、その綺麗な顔に影を落としていた。

スッとした鼻、形の良い口、整った眉。

千晴の全ては、まるで作り物のように、完璧だ。


やっぱり、綺麗な顔だよね。


目の前にいる男に、私はしみじみ思った。


黙ってきちんとしていれば、絶対いろいろと得するはずなのに、どうしてそうしないのだろうか。

うちの高校の進学科に入れたということは、頭だっていいはずだ。

それなのに校則は破りまくるし、悪い噂が付きまとうくらいには素行が悪くて周りから怖がられているし。


何か理由でもあるのだろうか。

自分が不利になることを続ける理由が。


すっかり書類に目を通すことを忘れて、じっと千晴を見ていると、バチっと千晴と目が合った。

少し気怠げな千晴の瞳が、私の瞳の奥底を覗くように、じっと見つめる。




「ねぇ」




それからゆっくりとその形の良い口を動かした。




「バスケ部のあの沢村ってやつと本当に付き合ってんの?」




無表情にだが、どこか気になっている様子で、私を見る千晴に、まだここにも残党が…と重たい気持ちになる。

どうやら千晴も私と沢村くんの関係を疑っているようだ。




「そうだよ。付き合ってるよ」




私は力強く、疑う余地なんてないように、しっかりとそう答えた。

すると千晴は無表情のまま私に質問を続けた。




「先輩って誰かと付き合ったことあった?今まで」


「ない。沢村くんが初めて」


「…ふーん」




私の答えに千晴が面白くなさそうな顔をする。


何だ?何故そんな顔をするんだ?

疑いはまだ晴れていない、とか?


千晴の次の言葉に身構えていると、千晴は面白くなさそうな顔のまま口を開いた。




「俺、先輩が好き。だから先輩の初めては全部俺がいい」




誰もが美しいと思うであろう顔の持ち主が、何だかおかしなことを言っている。

絵に描いたような完璧な美人である千晴は、その代償として、どこか頭がおかしいらしい。




「…誰かの初めてを独占したいなんて普通に考えても無理でしょ?きっと親でも無理だよ?」


「でもそれが俺の望みなんだもん」




呆れたように千晴を見れば、千晴はどこか拗ねたようにこちらから視線を逸らした。

私よりも遥かに大きなこの男に、何故か可愛いと思ってしまう。




「ふふ、私、反省文の監督なんて初めてだよ」




だからなのか、私はつい柔らかく千晴に笑ってしまった。




「こんなに注意して全く改めない奴も初めてだし、こんなにも四六時中悩まされる相手はアンタが初めてだから」




そこまで言い、やはりとんでもないやつだ、コイツ、と改めて思う。

なので、そのまま、千晴に「本当、いい迷惑だわ」と文句を言うと、千晴はまた嬉しそうに私を見た。




「柚子先輩の初めて、俺知らない間にたくさんもらってたんだね」


「…いや、手に負えないっていうクレームなんですけど」




ペチンと呆れたように千晴の頭を軽く叩くと、千晴は嬉しそうに瞳を細めた。

その瞳が何故かとても甘い気がして、私はどこか落ち着かない気持ちになった。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ