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推しに告白(嘘)されまして。  作者: 朝比奈未涼


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22/108

22.もう少しだけ。





「そ、そういえば!お出かけといえば、沢村くんとのお出かけもとても楽しかったよね!」




パンッと空気を変えるために手を叩き、私は努めて明るい声を出す。

変な話の振り方になってしまったが、そこを気にしていては話は進まない。




「わ、私、初めて家族以外の男の人と2人で遊んだんだけど、本当にあの日は楽しかったし、素敵な1日すぎて忘れられないんだよね。沢村くんがその相手だからすごく緊張したし」


「え?緊張してたの?」


「うん」




なんとか沢村くんにも話に入ってもらおうと、沢村くんとの初デート話を沢村くんに振ってみると、沢村くんは何故かとても意外そうにこちらを見た。


え、何故?




「…え、あ、そっか。緊張してくれてたのか…」




それから何故か噛み締めるようにそう言うと、口元を手で覆い、視線を下へと向けた。その大きな手からわずかに見える沢村くんの頬が少し赤い気がするのは気のせいなのか。




「映画のチケットもらえたし、また行かない?」


「っ!もちろん!」




沢村くんからのまさかの2度目のデートの打診に嬉しさのあまり食い気味に返事をする。

次の約束があることほど嬉しいことなんてない。

私と沢村くんには未来があるのだ。




「次は何観る?」


「え、そうだね…。あ、千晴はどんな映画が…」




沢村くんの質問に答える前に話の輪を広げようと、千晴の方を見れば、今度は何故か千晴がどこか面白くなさそうにこちらを見ていた。


一瞬沢村くんと話していただけなのに。

何故千晴は除け者されました、みたいな顔しているんだ。


まるで被害者のようなその視線はなんだ!




「ねぇ、千晴?千晴はどんな映画を普段見るの?好きな映画とかない?」


「…アクションとか。ミステリーも好きかも」


「うんうん。なるほどね。沢村くんはどんな映画が好き?」


「俺もアクションかな。コメディとか恋愛ものとか、結構なんでも見るかも」


「へぇ!じゃあ、私たちみんなアクション映画好きなんだねぇ。私もアクション映画が好きで…」




何とかこの3人で話せないかと、2人の間で一生懸命話す私だが、千晴は無表情に、沢村くんはいつもの笑顔で私と話すだけで、千晴と沢村くんが直接話すことはない。

結果、私が黙ってしまえば、なんとも気まずい無言の時間が発生してしまうという事態に陥り、私はただただ懸命に2人の間で話し続けるしかなかった。


お願いだ、2人でも話を広げてくれ。



*****



 なんとも言えない空気の中、ただただ私1人が沢村くんと千晴と交互に喋る状況が続き、ついに駅まで辿り着いた。

ここでやっと私たちは解散だ。


とても…とても長い道のりだった。


やっとの思いで、改札を通り、あとはそれぞれの線の元へ向かう…そう思っていた。




「じゃあね、先輩」


「うん、またね、千晴。沢村くんもまた明日」




笑顔でこちらに手を振る千晴に私も手を振り、沢村くんにも別れの挨拶をして、2人に背を向ける。

それからいつもの道を歩き出したのはいいのだが、隣には何故か沢村くんがいた。


あれ?

いつもならここで別れるのに。




「ど、どうしたの?沢村くん?こっちは反対方向だったよね?」




いつもとは違う行動をする沢村くんを不思議に思い、そう沢村くんに問いかける。

するとそんな私に沢村くんは言いづらそうに口を開いた。




「うん。でももう少しだけ鉄崎さんと一緒にいたくて…」




恥ずかしそうにそう言って、私から視線を逸らす沢村くん。

俯く沢村くんの耳がほんのり赤いことに気づき、胸がきゅーんと締め付けられた。


か、可愛い。私の推しが可愛すぎる。

心臓が推しの可愛さに悲鳴をあげている。


相変わらずの推しの破壊力にメロりながらも、私は確かな足取りで、沢村くんの隣を歩き始めた。


そこにピコンッと私のスマホが鳴る。


何だろうと思い、スマホを鞄から取り出すと、スマホの画面には千晴からの連絡通知が表示されていた。


今、別れたばかりなのにもう連絡をしてくるとは。

一体何事だ。


通知には、『次一緒に行くところの候補。お金は気にしないで』とあり、画像が数枚送られているようだった。


話の文脈的に、先ほど話していたアフタヌーンティーのことではないだろうか。


千晴からの連絡の内容が気になり、スマホのロックを解除し、千晴と私の写真が設定されているホーム画面を開く。

それから連絡アプリを開こうとしたその時、その声は聞こえてきた。




「華守くんと仲良いよね」




どこか暗い気がする沢村くんの声音に一瞬聞き間違いか、と思う。




「いや、まぁ、仲良いのかな?わかんないけど、手のかかる後輩なのは確かかな」




だが、あまり深くは考えず、私は困ったようにそう言って、苦笑いを浮かべた。




「そっか…」




暗い表情のままそう言った沢村くんに私は気づかなかった。





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