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推しに告白(嘘)されまして。  作者: 朝比奈未涼


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21.推しと後輩。





沢村くんも合流して本格的に始まった勉強会。

最初は話を全く聞いていない千晴にどうなることやら、と思っていた。

しかし、そんな私の不安とは裏腹に、案外千晴は真面目に勉強に取り組み、わからないところがあれば、何度も何度も私に質問してきた。


……ただ「わからない」と言う割には、説明を聞けばすぐに理解し、問題を解いていたので、本当にわからなかったのかは少々疑わしいところもある。

わざとわからないフリをしていた可能性もあるが、そこには目をつむることにした。


真面目に勉強に取り組む姿勢、それが大事なのだ。


そして一緒に勉強していた沢村くんも千晴と同じく数学のテスト勉強をしていた。


真剣な表情で机に向かう初めて見る推しの横顔。

クラスが違うので普段なら絶対見られない貴重な一面に、何度も表情が緩みそうになったことは言うまでもない。


沢村くんにときめく胸を抑えつつも、千晴に勉強を教えながら、その合間を縫って、私も自分の勉強を進めた。


そんな中、沢村くんはしばしば手を止めて、私にわからない箇所を尋ねてきた。

それに答えるたびに「ありがとう、鉄崎さん」と照れくさそうに笑う沢村くんに、何度心臓が爆発しかけたことか。

推しの照れ笑いでこの命を散らせるなんて本望すぎる。


千晴と沢村くんの勉強を見ながら私も勉強をする。

この流れで勉強すること約2時間。

あっという間に下校時刻となったので、私たちは一旦勉強を中断し、帰路につくこととなった。


校庭の奥、街の向こう側に太陽がゆっくりと沈んでいく。

ほんの数時間前までは青かった空も、いつの間にかオレンジ色に染められており、確かに時が流れたことを告げていた。


そんな中、私たち3人は、私を挟んで、沢村くん、千晴で横に並び、共に校門を目指して歩いていた。




「鉄崎さん、今日はありがとう。すごく捗ったよ」




先ほどまでしていた勉強会を思い返していると、私の右隣にいた沢村くんが笑顔で私に話しかけてきた。


夕日のオレンジ色を浴びる推しはなんて眩しいのだろう。物理的な意味でも、存在的な意味でも、どちらでも眩しい。




「いや、こちらこそありがとう。教えることって自分の復習にもなるし、沢村くんのおかげでいい復習ができたよ」




推しが二つの意味で眩しすぎて、私は思わず目を細めながらも、にっこりと笑った。




「俺も先輩のおかげで勉強捗ったよ?明日もお願いね、先輩」




気怠げに、だが、どこか満足げにこちらに声をかけてきたのは千晴だ。

千晴も外見だけは非常に整っており、美人なので、夕日を浴びる千晴はとてもキラキラと輝いていた。


何も言わず、何もせず、ただ黙って立っていれば、その美貌に人が嫌というほど集まるだろうに。

そうならないのは普段の素行のおかげなのだろう。

結果、友達がゼロで、千晴には私しかいない。

素行は悪いが、根は悪い奴ではないので、友達の1人くらいできて欲しいものだが。




「はいはい。明日も頑張るよ」


「うん」




残念美人な千晴に呆れながらも返事をすると、千晴はそんな私に嬉しそうに笑った。



他愛のない会話をしながらも、校門まであっという間に着いた私たちはここで千晴と別れることになった。

沢村くんと私は電車通学で、千晴は違うからだ。

いつもここで私は千晴と別れていた。




「…千晴、それじゃあ」




校門から出て、千晴にいつものように別れの挨拶をし、軽く手を挙げる。

だが、千晴はそんな私を不思議そうに見て、私の隣に居続けた。

何故か私の傍から離れず、共に街の中を歩き出す。




「え、千晴?」




千晴の予想外の行動に戸惑っていると、千晴は私に柔らかく笑った。




「俺、今日は電車なの」


「…へ、あ、そう」




どこか嬉しそうな千晴に面食らって、適当な返事をしてしまう。


まさか千晴まで電車で帰るとは夢にも思っていなかったのだ。

普段の千晴は徒歩だったので、てっきり徒歩圏内に千晴の家があるのだと思っていた。

それが実は電車を使わなければならないなんて…。


いや、単純にこの後用事でどこかに行くから電車を使うとか?

いやいや、でも、今日〝は〟電車、て言っているから、やっぱり家に帰ろうとしているよね?


千晴の言動にうんうん頭を悩まされていると、千晴はふと、思い出したかのように口を開いた。




「そういえばこの前のメルヘンランド楽しかったよね。俺、初めて家族以外と行った、あそこ」


「そうなの?まぁ、楽しかったね。いろいろ特別な体験もできたし」


「うん。また、行こ。先輩」


「…私とばかりじゃ、飽きちゃうでしょ?千晴が本気を出せば友達なんてすぐにできるし、今度はその子たちと行きなよ」


「嫌。俺は先輩としか行きたくない」




最初は上機嫌だった千晴だが、私の答えを聞いてその表情を曇らせる。


一体何が気に食わないのか。別に私以外とも行けばいいではないか。


千晴の態度に呆れながらも「はいはい」と適当に頷いていると、千晴は徐に制服からスマホを取り出し、触り始めた。

それからスマホの画面を私に見せると、伺うように私に言った。




「これ先輩と行きたいんだけど」


「ん?アフタヌーンティー?」




千晴に見せられたスマホの画面にはアフタヌーンティーと書かれた文字と写真があった。


落ち着いているが、どこか高級そうな内装のカフェのテーブル。

そこには3段のスタンドがあり、そのスタンドの上にはスイーツや軽食が並べられている。


小さなサンドイッチ、スコーン、シャインマスカットのタルト。

マカロン、小さなパフェのようなものに、コーンスープまで。

この小さなスマホの画面の中には、見ているだけでよだれが出そうになるものがたくさん並べられていた。


…正直、とても行きたい。魅力的すぎる場所だ。




「…これ、すごいね。どこのやつ?」


「華守ホテル」


「華守って…。あの超高級ホテルの!?」


「うん」


「予算オーバーだわ!」




うずうずしながら千晴に質問したのはいいが、まさかの千晴から返ってきた答えに私は頭を抱える。


華守ホテルといえば、この辺どころか日本で知らない人がいないほどの超高級ホテルだ。

国内外の要人、セレブ、皇族まで、ありとあらゆる金持ちが集まるホテルのアフタヌーンティーなど、きっと目ん玉が飛び出る値段に決まっている。

ただの女子高生の私が気軽に行ける場所ではない。


ん?てか、華守?

千晴と同じ苗字だけど何か関係が?


…いや、華守の関係者がこんな普通の高校にいるわけがないか。




「お金くらい俺が払うよ?」


「いやいやそういう問題じゃないから」


「…じゃあ、ここじゃなければ、一緒にアフタヌーンティー行ってくれる?それかここが無料とか」


「…えー。んー。うん。行きたいです」




無表情のはずなのに、どこか物欲しそうに訴えかけてくる千晴につい頷いてしまう。

食べ物の誘惑には勝てない。


私の返事に嬉しそうにしている千晴から何となく視線を逸らして、沢村くんを見る。

すると沢村くんはどこか面白くなさそうな顔でこちらの方を見ていた。


し、しまった!

私と千晴だけで盛り上がってしまった!

沢村くんを除け者してしまうなんて!




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