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推しに告白(嘘)されまして。  作者: 朝比奈未涼


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14.お化け屋敷。




買い物を済ませ、バケハを被り、サングラスを付けたら、いよいよメルヘンランド攻略スタートだ。

VIPチケットの特典で、どのアトラクションも待ち時間ゼロで遊べるというものがあったので、私たちは早速一番人気の待ち時間200分超えの屋内アトラクションへ行った。


たくさんの人が200分待ちの列へと並ぶ中、すいすいと別ルートに案内され、進む私たち。

そして本当に待ち時間ほぼゼロで屋内アトラクションに乗れた。


とんでもなく楽しい。最高。


それから私たちはさらにメルヘンランドを攻めた。

ジェットコースターに4Dライド。シアタータイプのものや屋内アトラクション、屋外アトラクションなど。

とにかくたくさんのアトラクションを待ち時間ゼロでどんどん体験していった。


いろいろなアトラクションを体験した私たちの目に次に留まったのは、廃れたお屋敷が舞台のお化け屋敷だった。


楽しげな雰囲気の広がるここメルヘンランド内では、どこか異質で、静かな雰囲気の古めかしいお屋敷。

遠い昔に流行り病が原因で亡くなってしまった人たちの幽霊が今もあのお屋敷で彷徨い続け、生者に自分たちと同じような苦しみを望み、死へと誘う、というコンセプトのものらしい。




「迫力あるね」


 


特に何とも思っていなさそうな千晴の横で、私は「…そ、そうだね」と表情をこわばらせた。


実は私はお化け屋敷が苦手だった。

暗がりから急に誰かから脅かされるという行為がどうしても無理なのだ。


先ほどから目につくアトラクション全てを制覇してきた私たちだったが、ここにきて、私から先ほどまでの勢いがなくなった。




「先輩、次ここ?」


「へ?あ、うん」




あー!やってしまった!


つい先ほどまでの流れのまま、千晴の問いかけに頷いてしまったことに、心の中で頭を抱える。

だが、頷いてしまった以上、「やっぱりやめよう」とは言えない。

後輩である千晴に先輩である私の情けない姿は見せたくない。




「い、行こ行こ。行ってやろう…っ!」




なので、私は自身を鼓舞して、お化け屋敷の方へと足を踏み出した。

そんな私の横で千晴が「先輩怖くないの?ここ」と首を傾げる。




「…まあ」


「ふーん」




本当は力強く「全然怖くない」と答えたいところだったが、歯切れの悪い返事となってしまった私を、千晴は何故か黙ってじっと見つめてきた。


な、何?やっぱり、嘘だってわかる?




「俺、実はこういうのちょっと苦手なんだよね。だから先輩にくっついてい?」




まさかの千晴からの言葉に口をあんぐり開けてしまう。

私よりもずっと大きい男なのに、少しだけ眉を下げる千晴に何故か庇護欲を煽られた。

何故か私が守らねばと思ってしまう。


数十人相手に喧嘩をし、病院送りにした、と、学校で噂されるほどの男なのに。絶対私に守られる対象ではないのに。




「わ、わかった。来なさい」




私は何を血迷ったのか、千晴に右腕を差し出し、私にくっつくことを許可してしまった。

守って欲しいのはむしろこっちなのに。


千晴はそんな私を見て嬉しそうに笑うと、私の右腕に抱きついてきた。


内心怖いが気丈に振る舞う私の右腕に、お化け屋敷が苦手らしい千晴。

あまりいい状況ではないが、私は腹を括った。




*****




お化け屋敷に入った後、私はずっと私ではないお化け屋敷など怖くない強い女になりきっていた。

お化け役の人が私を脅かそうと物陰から出てくるたびに、そいつを睨み、凄み、威嚇もした。

たまに逆にお化け役の人が私にビビり、「ひ、ひぃぃ」と言って尻餅をついたり、「ご、ごめんなさいぃぃ!」と叫び、逃げたりもしたが、私は強い女であることをやめなかった。

そうでなければ正気を保っていられないからだ。


ただずっと強い女でい続けると、ちょっとした余裕もでき、ふと、その余裕の中で、私の右腕を抱き続ける千晴の存在に意識がいった。


先ほどからずっと私の右腕を抱きしめ歩く千晴の体の硬さに、千晴が男なのだと感じる。

回されている腕も私のものとは違い、しっかりしており、私よりもずっと力強い。抱きしめられていることによって、近づいた距離からほのかに感じる千晴の香りも花のような香りで、嫌いなものではなかった。


いつもよりも近くに感じる千晴に、急に異性として意識してしまい、どぎまぎしてしまう。


い、いけない。

私は先輩として、怖がる後輩を守る義務があって…。


ーーーここでこんなふうに油断していたことがよくなかった。


目の前に突然、音もなくお化け役の白い服を着た男性が現れる。




「〜っ!!!!!」




その男性に私は声にならない悲鳴をあげた。

そしてそのままバランスを崩し、後ろに転けそうになった。




「先輩、大丈夫?」




だが、それは私の右腕を抱いていた千晴に支えられたことによって、阻止された。

千晴が、青ざめている私の顔を、伺うように覗き込んでくる。




「先輩も怖いならこうしよ?」




それから千晴は私の右手を自身の右手で掴み、左手を私の腰に回して、私を抱き寄せてきた。

気がつけば先ほどよりも密着した状態が完成していた。




「これなら俺も先輩を守れるよ」


「…う、うん」




暗い室内のはずなのに、微笑む千晴がどこか眩しく見える。

私を助けてくれる救世主に見える。


私は救世主である千晴に深く頷いた。

お願いします、私を守ってください。

私もできる限り千晴を守るから。




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