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第二話.旅の始まり

「お嬢さん、行き先は決めたかい?」

ちょうど3日後。私はまたあの古本屋を訪れた。

「まあ」

黒沼との接点は、その古本屋以外なかった。

実際、どうやって、どこに向かって旅をしているのか見当すらつかなかった。

それくらい、名前と容姿以外は謎に包まれた小説家なのだ。

「どうする?俺と一緒に来るか?」

私を静かに見つめる黒沼の瞳は生気を感じない。

まるで木の洞のような、そこにはただ光のない赤い双眸があるだけだった。

けれど、どこか人を見抜くような、射抜くような鋭さがあり、さながら天然のマジックミラーのようだ。

「私は、何をするでもなく自分の人生を浪費しているだけの人間でした」

黒沼は、興味深そうに片眉を上げた。続けて、と目で言う。

「私はなんのために生きているのかがわかりません。でも、私は文学が好きで、」

だから、探したいんです。

「探す?」

「私の生き方を」

バカバカしいと笑われるだろうか。

けれど、誰がなんと言おうと私が据えた目標だ。

「なんとも滑稽な目標だが、悪くない」

黒沼が口元に微笑を浮かべる。

私は、この奇妙な小説家と旅をすることになったのだ。

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