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第一話.旅する小説家
「あァ……なるほど、私の噂が……」
事情を説明すると、黒沼は静かに頷いた。
少し考えて、黒沼は私に向き直る。
「お嬢さん、少し、私の旅に同行していただけませんか。」
「は?」
間の抜けた声が出た。旅に、私が同行する?
この男と?
「え、」
「まぁ、今すぐに決めろとはいいませんよ。すぐに決断できることでもないですし。」
言いつつ、黒沼はスっと名刺を差し出した。連絡先と名前が書いてある、とてもシンプルなものだ。
「平日の昼間から古本屋にいるということは、それなりに暇ではあるんでしょうし」
「失礼な……」
「いつでも連絡していただいて結構です。ただ、私がこの街に留まっているのは、三日後までですので、悪しからず。」
それまでに決めろということだ。三日でこの街を出るかどうかを決めろとは、なかなか鬼畜。
けれど、楽しそうだと思ったのも事実で。
この街の次には、どこに行くのだろう。




