ここに居る理由
「私は、剣も魔法も使えないが、おばちゃん達は使えるのか?」
「私は野盗から自分の身を守るくらいの事はできるが、押し寄せるモンスターをどうこう出来る術なんか持っちゃいないよ。他の3人は、見たとおり私より期待薄さ」
そう言っておばちゃんが3人を見るが、ただ怯えて抱き合っているだけっだった。
恐怖で思考も停止している感じだな……この3人は戦力にならなさそうだ。
「立ち向かうとしたら、俺とおばちゃんでやるしかないのか……武器なんかは何かあるのか」と最後の期待を込めて聞いてみた。か返ってくる内容は、「その辺の廃墟を探して見つけれたのがこれさ」と言って指を指したところには、錆びついたクワやカマが2本づつおいてあるだけだった。
剣や盾などを期待していたが、素手よりはましかなという武器しかないじゃないか。
「絶望的だな……」思わず出た言葉に、おばちゃんが追い打ちをかけてきた。
「なーに! 普通の剣や魔法が使えたとしても意味なんかありゃしなよ。これから押し寄せてくるモンスターは、自然の摂理に反したアンテッド系なんだよ。聖なる加護をまとった武具や聖魔法しか太刀打ちできないのさ」と、諦めたように両腕を広げて天を見上げた。まるで、天空から加護を得たいと願うかのように。
アニメやゲームなどで、ファンタジーの世界は程度知っているつもりだが、この世界が同じとは限らない。
「アンテッド系って、スケルトンやゾンビのことだよな?」
「間違いないね。リッチなんかの上位種も押し寄せるらしい……」
そんな確認をしているうちに、ある方角から大きな威圧を感じてきた。
無意識に大きな威圧を感じる方角に顔を向けると、
「アンタも感じたのかい? いよいよ押し寄せてくるようだね。アンタだけ逃げても恨みはしないよ。私達は逃げても王国から追われる身。覚悟を決めるほうが楽さ」と寂しそうに笑った。
そうか! 私は逃げてもいいのか!
その選択肢が浮かんだだけで、焦りが消え、頭の中が楽になった。
アンテッド系モンスターの圧を感じてはいるが、まだ視界には入ってこない。
対峙するまで、もう少し時間があるはずだ。
私をたぶらかした綺麗なお姉さんは、「私を助けていただけませんか?」とすがってきた。格闘技経験がある人、霊力のある人、狙撃に優れた人……そういう頼りになりそうな人ではなく、私をスカウトしたには理由があるはず。
アンテッド系に効果があるのは聖なる属性の攻撃……残念ながら、私はクリスチャンでもお坊さんでもない。ふと手首を見ると、ハウライトと水晶を交互に配置したブレスレットがあった。ハウライトの効果は浄化じゃん! 水晶は一緒に組んでいるストーンの効果をブースト! きっとこれに違いない!!
でも、ブレスレットを投げつけるのか? それとも、ブレスレットをしている手で殴るのか? そんな攻撃で押し寄せるモンスターに対抗出来るのか? 無理だろ……他に浄化につながるものは……
ポケットの中に有るアイテムを思い出した。ハンカチで大切にくるんである物を取り出してみた。少し黒い色を帯びたスモーキークオーツのミニタワーと使い慣れた音叉が姿をあらわした。
なるほどね!