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3 菊池菊池菊池菊池菊池……

 ドガァァァァァァァァァン!


 魔王が吹き飛ぶ。奴の右拳は砕け散った。俺は無傷だ。


「なぜだ?菊池の数だけならこちらが上だ!」


 菊池の数だと?


「【菊池鑑定】はしたのか?」


 拳と拳がぶつかり合った瞬間に確信した。コイツは俺より弱い。やろうと思えばいつでもできたほど力の差がある。


「【菊池鑑定】を使ってみろよ」


 だが、この魔王は有機農業を舐めた。一等の宝くじを踏みにじり、けして後退などしていない俺の頭部を蔑んだ。


 許せん。


「【菊池鑑定】を使え」


 わかっている。コイツの菊池総数は俺を大きく()()()。ジョブが【魔王】でも、カットインをどれほど乗っ取ろうとも、その差は埋まらない。


「すまない魔王。弱い貴様にむごいことを言ってしまった。【菊池強化】で強化した【菊池鑑定】でも見えないんだろう?」


 魔王の鼻から鼻水が垂れた。


「見せてやるよ」


 俺は自らのステータスをさらけ出した。
























 ☆きくち☆きくち☆きくち☆きくち☆きくち☆



 菊池 菊池郎


 種族  菊池菊池菊池菊池菊池……


 性別  菊池菊池菊池菊池菊池……


 年齢  菊池菊池菊池菊池菊池……


 身長  菊池菊池菊池菊池菊池……


 体重  菊池菊池菊池菊池菊池……


 血液型 菊池菊池菊池菊池菊池……


 血糖値 菊池菊池菊池菊池菊池……


 尿酸値 菊池菊池菊池菊池菊池……


 視覚  菊池菊池菊池菊池菊池……


 聴覚  菊池菊池菊池菊池菊池……


 嗅覚  菊池菊池菊池菊池菊池……


 味覚  菊池菊池菊池菊池菊池……


 触覚  菊池菊池菊池菊池菊池……


 第六感 菊池菊池菊池菊池菊池……


 菊池感 菊池菊池菊池菊池菊池……


 LV  菊池菊池菊池菊池菊池……


 ジョブ 菊池菊池菊池菊池菊池……


 HP  菊池菊池菊池菊池菊池……/菊池菊池菊池菊池菊池……


 MP  菊池菊池菊池菊池菊池……/菊池菊池菊池菊池菊池……


 SP  菊池菊池菊池菊池菊池……/菊池菊池菊池菊池菊池……


 物攻  菊池菊池菊池菊池菊池……


 物防  菊池菊池菊池菊池菊池……


 魔攻  菊池菊池菊池菊池菊池……


 魔防  菊池菊池菊池菊池菊池……


 速度  菊池菊池菊池菊池菊池……


 幸運  菊池菊池菊池菊池菊池……


 菊池  菊池菊池菊池菊池菊池……



 スキル


 【菊池強化】


 【菊池心眼】


 【菊池結界】


 【菊池威圧】


 【菊池総合戦闘術】


 【菊池ビーム】


 【菊池ロボ召喚】


 【菊池錬金術】


 【菊池有機農業】


 【菊池料理】


 【菊池洗濯】


 【菊池清掃】


 【菊池原付免許】


 【菊池英検4級】


 【菊池野球】


 【菊池カバディ】


 【菊池書道】


 【菊池占い】


 【山田剣術】


 【美川攻撃魔法】


 【青葉体術】


 【お優しい中条……『さん』を付けろデコスケ野郎回復魔法】


 称号


 【菊池の中の菊池】


 【菊池を越えた菊池】


 【菊池の向こう側の菊池】


 【特攻の菊池】


 【セクシー菊池】


 【デンジャラス菊池】


 【菊池高校菊池学年菊池組出席番号菊池】


 【菊池世代の中心】


 【菊池王】



 以下割愛



 ☆きくち☆きくち☆きくち☆きくち☆きくち☆






「なぜ……数字の入るべき項目に【菊池】が……」


「俺もわからん」


 バグ的なアレだと思うが、特に問題は無いし実は珍しくも無かったりする。100人に1人くらいはいるんだ。


 山田だってオール【山田】だ。


 美川は性別に【さそり座】、美川に【いつものチーズ牛丼】と。


 青葉ちゃんは【青葉】と【青葉ちゃん】が交互に。


 お優しい中条さんはオール【お優しい中条……『さん』を付けろデコスケ野郎】となっている。


「それで、魔王よ。どうする?」


「どうする、とは?」


「大人しく【パチンコ】の世界に帰れ。働け。そうすりゃ殺さない」


 答えはわかっている。煽るつもりでわざわざ聞いた。


「ふざけるな。お前に何がわかるッッッッッ!あの世界でパチンカスの両親の元に生まれた者がどれほどの苦しみを……」


「人は死んだぞ」


「ぐっ……しかしパチンカスの子供はパチプロになるかパチンカスになって借金するしか無いのだ!」


「それが何かの免罪符になる、とでも?」





 魔王は言葉を呑み込んだ。


 俺は静かに待った。最期の攻撃を。


 話し声が聞こえる。山田がスマホで電話してやがる。


「もしもし、弁護士ですか?訴えたい相手が……」


 ここまでの話の流れで、それは無いだろうッッッッッ!


「相手はこの世界の人間じゃ無いんですよ。魔王です」


 それはそれで無茶だろッッッッッ!


「えっ、対魔王専門弁護士ですか……言ってみるもんだな」


 なにそれ。超気になるッッッッッ!





「【菊池強化】」


 魔王は裁きを受けるつもりは無いようだ。【菊池強化】は重ねがけはできるが、名前の3つへの強化が倍になったところでたかが知れている。


「食らえええええええええッッッッッ!【魔王パンチ】ッッッッッ!」


 最期の攻撃スキルにしてはショボい名前だが、威力が高いのは理解できた。


 硬く握られた拳が俺の顔に当たる。俺の物理防御は【菊池】でカンストしている。3x2では無限に届かない。


「うおおおおおおおおおッッッッッ!」


 魔王が左手を引く。いつの間にか再生した右拳が顔に当たる。努力は買う。俺の父親は『努力したかどうかは結果への評価で決まる』と自分を棚に上げてよく言っていた。魔王を生かしておくつもりは無いが、そこまで言うのは違うと思う。あくまでもこれから行うのは私怨を背景にした討伐だ。拷問まではしたくない。


「うおおおおおおおおおッッッッッ!うおおおおおおおおおッッッッッ!うおおおおおおおおおッッッッッ!」


 客観では目で追えない速度で行われる拳の連打。俺の主観ではスローモーション。魔王は俺に攻撃を当てる度に無力感を味わっている。もう十分だ。オラオラくらいはしようと思ったが一撃で決める。


 片側の鼻の穴をふさいで息を吹く。俺は血液型のみしか【菊池強化】していない。この状態でも、あらゆるささやかな干渉がオーバーキルとなる。


「ぷぎゅ……」


 魔王の下半身が赤い霧になった。楽にしてやろうと思ったのに、無意識に手加減してしまった。もう少し力が入ると、このダンジョンが壊れる。加減が難しい。


「もう殺せ……」


 そうだな。


 下半身を失い、うつ伏せで床に口づけしている哀れな男の後頭部に足を添える。


 そこで。


 空間が破れ、いくつもの影が飛び出し、俺を背後に吹き飛ばす。


「【菊池完全回復】」


 異形によって魔王が回復した。


「ふふ、この【菊池】は我らの中で最弱。だが我らにスローライフの啓蒙を行った預言者なのでな」


 群れる異形が俺を見据えて構える。


「死なせるわけにいかぬ」

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