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オタクだった私と、厨二病だった俺の話。

作者: おがくず

書き溜めしてた作品です!

楽しんでいってください!

プロローグ(誠視点)


「地獄の劫火に抱かれて死ね・・・《ヘル・フレア》!!!」

 一般市民の者に聞かれてしまえば引かれること間違い無しのセリフを大声で叫ぶ(しかも小説の大事なツカミで)。

 よくある公園のジャングルジムに登り、その頂でまぁ恥ずかしい(俺はそうは思わない)詠唱と振り付けを披露するのは、俺、『万物の統治者テオドロス・テオドリクス』の異名を持つもの・・・そう、藤堂 誠とうどうまことである。

 ぜひ、テオドリクスと呼んでくれ。

 と、そうこうしている内にもう8行使ったか。そろそろ第一話に移さねば。


―――そう。これは厨二病(俺はそうは思わない!)を拗らせた俺が過ごす日々の話である。



第一話(誠視点)


 学校、そこは地獄・・・いや、魔界と言い表しても過言ではない。

 高校生第1学年はじめのLHRを、俺は感情も無く過ごしていた。

 そうではないな。一学年第四区画(1年4組のことだ)にいる者らを試していたのであった。

 クックックッ・・・俺のオーラに恐れをなし、誰一人として俺と目を合わせることができぬようだ・・・。


「では、自己紹介から始めますか〜。藍島あいじまさんから〜、横に行きますか〜。なんとなく〜」


 自己紹介・・・。クッ! やめろ思い出すな! 俺は変わったのだ。中学生の頃のような幼稚な俺などではない・・・。「アッ(裏声)、はい、藤堂誠です・・・。趣味とかは無いです。よろしくお願いします(小声)」などと話したあの頃の俺はもう無いのだ!

 シュミレーションだ・・・。「よく聞け。諸君、俺こそが『万物の統治者テオドロス・テオドリクス』藤堂誠だ。望むものは俺の眷属としてやろう。恐れぬこと。それが貴様らを変えるであろう・・・」・・・よし。これだ。


「は〜い。よろしくね〜。じゃぁ次の人〜どうぞ〜」


 おや、俺の右隣にいる者の紹介が始まるか。この者の次は俺、しかもトリか。シュミレーション通りに自己紹介なる遊戯を完遂してみせよう。


九十九沢彩葉つくもさわいろは。人と語るなどという低俗な趣味は生憎持ち合わせていないわ。でも、この者とは分かり合えそうね。よろしく」


 と、俺を指差す九十九沢。

 スラリとした高めの背に珍しい濡れ羽色の長髪、大人びた顔立ちに、制服の袖から覗くのは

・・・包帯か?

 なるほど。確かにこいつとは話ができそうだ。

 周りの者たちの視線を意にも介さず、当たり前のことをしたような表情をする九十九沢を苦笑で流した担任が俺に自己紹介を視線で促す。

 わかっているとも。シュミレーションは完璧なのだ。

 すぅぅ・・・ふぅぅ・・・(深呼吸)

 ・・・よし。


「よく聞け。ちょ君(噛んだ)、俺こそが『テオドロしゅ・ちぇオドリクス』(噛んだ)・・・藤堂誠だ。望むものは俺の眷属としてやろう。恐れにゅ(噛んだ)こと。それが貴しゃまら(噛んだ)を変えるじゃろう(噛んだ)・・・」


 ・・・・・・。

 ・・・・・・・・・・・・。

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。


 赤面し棒立ちになる俺。

 嘲笑うような、幻滅したような雰囲気が伝わる。

 ・・・・・・座るか。



幕間(彩葉視点)


 「地獄の劫火に抱かれて死ね・・・《ヘル・フレア》!!!」

 見つけてしまった。

 これまで孤独だった私と同じモノを持つ人。

 絶対の自信を持っているかのような、自分を貫き通す人。

 夕暮れの公園の、ジャングルジムの頂で、高らかに叫ぶその人を見て私は――――


――――恋に落ちた気がした(あと普通に超イケメンだった)。



第二話(誠視点)


 孤独。それは自分の時間だ。他の者と語らうことのない俺にとってしてみれば「普通」に過ぎない時間。

 だがその時間は、環境によって捉え方が変わる。

 多くの人が集まるこの教室という環境では、何もしてない以上より厳しい環境となる。

 さらに今は教室のそこら中で囁かれる、俺についての会話。


「顔はいいのに・・・」

「静かにしてればってやつだよね」


 まぁ、気にしないモン勝ちってやつだ。中学の頃から盟友以外から浴びせられたそれらの言葉は、今更気にする必要もないというものだろう。

 だが―――


「(無言の圧)」


―――これは、今までにないパターンだ。

 自己紹介が終わってから、九十九沢が俺へずっと視線を送ってくる。

 何か話しかけてくるわけでもなく、ただただ視線を送ってくる。

 

 だからといって、


「どうした? 何か用か」

「!?」


 声をかければそっぽを向かれる。

 どうしたものか・・・。

 ずっとこれを続けるのも退屈だな。

 あいつのとこ行くか。


ざわっ・・・


 立ち上がっただけでこれか。・・・気にしない。気にしない。


「藍島、高校生活はどうだ? 高校では馴染めそうか?」

「ああ。順調だよ。君が話しかけてこなければね!」


 などと抜かすこのメガネは藍島 傑あいじますぐる

 中学以来の盟友である。


「なぜだ? 別に俺が話しかけたくらいでお前の印象が変わることは無かろうに」

「はぁ・・・ わからないのかい? テオドロしゅ・ちぇオドリクスくん?」

「カハッ!?」


 崩れ落ちる俺。

 ・・・俺に膝をつかせるとは。やはり俺の盟友として相応しい。「誰目線だよ」

 な!? 心を読むだと!? 貴様、超能力者オーヴァーか!?


「いや、声に出てる」

「・・・そうか」



第三話(彩葉視点)


 孤独。それは・・・え? だめ? もう使ったって?

 どゆことだろ?

 ・・・さて、オタクの性とはよく言うものだが、私は生来のコミュ障だ。

 胸を張って宣言できる。

 だから、


「(話しかけたいけど話しかけれない)」


 掛ける言葉が見つからず、藤堂くんに話しかけられずにいるのだ。

 まぁ、イケメンだし、話しかけられなくてもとても目の保養になるからいいけど。


 だからといって、


「どうした? なにか用か」

「!?」


 藤堂くんから話しかけられると栄養過多で無理だけどね。

 

「あっ・・・」


ざわっ・・・


 行っちゃった。どこ行くんだろ。

 ついていきたいけど流石にキモいよなー。


「藍島、高校生活はどうだ? 二年になっても馴染めそうか?」

「ああ。順調だよ。君が話しかけてこなければね!」


 藍島くん? ああ、あの真面目そうな人か。

 あんまりかっこいい感じじゃないし、藤堂くんと接点なさそうだったけど、知り合いなのかな?

 てことは、藍島くんと仲良くなれば藤堂くんとも・・・

 「人と語るなどという低俗な趣味は生憎持ち合わせていない」←私


 あ、無理だぁ。



第四話(誠視点)


 地獄の自己紹介の翌日。

 今日は部活動紹介があるそうだ。

 部活動・・・。他の者と共に高みを目指す。孤高たる俺には関係のないことだな。


移動中・・・


 「・・・では最後に、現在部員のいない部活を紹介します。華道部、家政部、漫画研究部です。部員はいないですが、ぜひ入部を検討くださいますよう、お願いします」


 ほう、漫研、か・・・。なぜだかそそられるな。

 入るか。暇だし楽しそうだし誰もいないし。


移動中・・・


「先生、入部届を貰えぬか?」

「うぇ!? あ、ごめん。はい、これね」

「感謝する」


 『ファーストミッション:入部届の入手』はクリア。

 『セカンドミッション:親からの許可』もすぐにクリアできるであろう。


幕間(彩葉視点)


 漫研・・・!

 入るしか無いじゃん!

 我がオタクの魂が入れと言っている!


「先生、入部届ください」

「うぉう! あ、ごめん。驚いちゃって。はい、これね」

「ありがとうございます」


 よし。入部届はゲット。

 あとは親にハンコ貰えば入れるね。

 明日が楽しみだな〜。



第五話(誠視点)


 更に翌日。の放課後。

 漫研の顧問に入部届を渡し、伝えられた教室へと歩く。

 鍵を開け、中に入ると、そこは図書館であった。

 いや、マジの図書館じゃないけど。

 漫画しか無いな。

 ・・・おっと! これはこれは。俺のバイブル「獄炎と机上の空論」ではないか!


ガチャッ


「ん? あぁ、九十九沢か。お前も漫研に入ったのだな」

「あら、藤堂くんじゃない。あなたも漫研に入ったのね」


 同時に話す九十九沢。

 だがそれからは、お互い特に何も会話することはなく、活動終了となった。

 ちなみに俺はずっと漫画を読み、九十九沢は部室内を物色したあと何らかの漫画を手にとって読んでいた。



幕間(彩葉視点)


 帰りのSHRも終わり、足早に職員室へと向かう。

 入部届を顧問の先生に提出したところ、すでに一人部員がいると伝えられた。

 ・・・誰かは教えてくれなかったが(思い出せないらしい)。

 誰がいるのかを考えながら部室のドアを開ける。

 ドアの向かい、窓のすぐ下にあるソファにいたのは、足を組んで座り、優雅に漫画を読む藤堂くんであった。

 


・・・。

・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・。


「あら、藤堂くんじゃない。あなたも漫研に入ったのね」

「ん? あぁ、九十九沢か。お前も漫研に入ったのだな」


 同時に話す藤堂くん。

 だがそれからは、お互い特に何も会話することはなく、活動終了となった。

 ちなみに藤堂くんが読んでいたのは「獄炎と机上の空論」という厨二病全開の漫画だった(私もけっこう好きな漫画だ)。



第六話(彩葉視点)


 漫研に入ってから二週間が経った。あれから漫研には部員が入ってきておらず、私と藤堂くんは普通に会話する(漫画についてとか)程度には仲良くなっていた。嬉しい。

 そして今日が勝負の日。藤堂くんに勇気を出して告白しようと決めた日である。

 いつも通り自分の机で突っ伏す藤堂くんに話しかける。


「あっ(裏声)・・・あの、藤堂くん、ちょっと話があるの。今日の昼休みに部室に来てくれない?」

「うん? 九十九沢か。わかった。昼休みだな」


 よっし。噛まずに誘えた。「九十九沢さんが藤堂に? ついに決闘か?」「かもな。恐ろしいぜ。全く」・・・うるさいな。

 私が周囲を睨むと、話し声は聞こえなくなった。

 あとは昼休みだ。頑張ろう。


キーンコーンカーンコーン(四時間目終了のチャイム)


 ダッシュして部室へたどり着く私。ドアを開けると、すでにソファに腰掛ける藤堂くんがいた。


「早すぎない?」

「授業はちゃんと受けたぞ。まぁ、そんなことはいい。話とはなんだ?」


 驚きすぎて身だしなみを整えることすら忘れて疑問を投げかける私。

 とりあえず髪を整えて、藤堂くんへ向き直る。

 全身の勇気を振り絞って、私は一息に言い切った。


「えっと、あの、藤堂くん、・・・好きです! 付き合ってください!」

「ふぇ? え? あ、あぁ。はい。よろしくお願いします」


 付き合うことになりました(藤堂くんの反応可愛かった)。




幕間(彩葉視点)


 告白決行日放課後、自宅、自室。


「ーーーーーーーーーッ!!!(声にならない喜び)」ガッツポーズ


 付き合うんだ。私、あの藤堂くんと・・・!

 テンション上がりすぎて今ならなんでもできちゃいそうな気分!


「ぃぃぃぃいよっっしゃぁぁぁ!!!(声出た)」

「彩葉うるさい!!! 近所迷惑でしょ!!!」

「ごめんなさい」


 声大きすぎてお母さんに怒られちゃった。

 おかげでちょっと落ち着いたわ。

 明日からどうしよ。なんか顔合わせんの恥ずかしくなってきた。



第七話(誠視点)


 告白された翌日、朝、教室。

 朝早い教室でいつも通り机に突っ伏していると、いつもより早く、九十九沢が教室に入ってきた。


「九十九沢、おはよう」

「え? あ、うん。お、おはよう」


 なんだ? 挙動不審だな。

 だが、それからは九十九沢はいつも通り授業をこなしていた。


キーンコーンカーンコーン(今日の授業の終わりのチャイム)


 帰りのSHRも終わり、さっそくと部室に行こうとすると、隣に九十九沢が歩いてきた。


「珍しいな。掃除、当たってなかったのか」

「藤堂くんはあっても行かないでしょう」

「クハハッ そうだな。たしかにそうだ。」


 清掃など、眷属にやらせるもので君主たる俺がやるわけなかろうに。

 特に何も話さず部室へと到着する。

 いつも通り漫画を読んでいると、九十九沢が話しかけてくる。


「藤堂くん、今読んでいる漫画、読み終わってしまったのだけど、何かオススメは無い?」

「ん・・・いいぞ。別に」

「? 何が?」


 取り繕うようだな。素直に言ってやるか。

 そう思い、俺は立ち上がって言う。


「その声だ。作っているのであろう? なぜかは分からぬが。俺にはすべて見えているのだ! ・・・その、無理はするな。・・・ぃ、彩葉」

「あ、ちょ、ごめ、死ぬ」

「は!? おい! 彩葉!」

「カハッ」


 そう言って倒れそうになる彩葉。

 唐突な行動に驚いたが、反射的に彩葉を支える。

 その後、保健室に連れて行こうとしたが、そこまでのことじゃないと断られ、ソファの上で安静にさせていた。

 

 しばらく漫画を読んでいると、部活終了間際に彩葉が立ち上がる。


「もう大丈夫なのか?」

「うん。ありがとね。誠くん」

「ゴホッ! ガハッ! ン゛ン゛ッ! すまん。気にするな。当たり前のことだ」


 ついむせてしまう。なるほど。彩葉もこのような気分であったのか。

 名前呼びとは・・・なかなかに攻撃力の高い魔法だな。


「あぁ、あとさ、今度本屋さんに行かない? 漫画買いにさ」

「いいな。俺もそろそろ読み終えてしまうところだったのでな」



幕間(彩葉視点)


 「急に呼び出しちゃってごめんね。あの、誠くん、・・・好きです! 付き合ってください!」


 私じゃないよ?

 怒ってるわけでも無いけど。

 居合わせてしまった。イケメンだしありえることだなとは思っていたけど。

 誠くんが告白されている。

 休み時間に、暇だしと学校をウロウロしていたら誠くんを見つけ(しかも校舎裏)、もしやと思って覗き見ると、告白されていたのだ。

 ま、まぁ? 私という彼女がいる以上? 断るのは当たり前だけど?

 こ、断り方が気になるだけで?

 べ、べべ別に誠くんがあの子と付き合っちゃうんじゃないかなーとか思ってないし?

 でも告白してる子可愛いしなー。ほんわかするタイプの可愛さなんだよなー。

 すごい一生懸命だし。


「そうか。気持ちは受け取ろう。だが、俺にはすでに契りを結んだ人がいるのでな。答えることはできぬ。すまん。まぁ、俺の盟友としていることは歓迎しよう。それでもよいか?」

「え? ・・・///うん。ありがと。お、お願いします・・・」


 かっこいい! けどなんか違う!

 天然であれやってんの!? 女たらしめ!

 

「名前は・・・」

瀬治山 小春せじやまこはるだったか。同じクラスだからな。覚えているぞ」

「(キューーン)」


 キューーンじゃないのよ!

 あぁっでもかっこいい!

 ちゃんと覚えられてるの偉い!

 と、私は油断していた。


「と、言うわけなんだが、怒るか? 彩葉」

「ひゃいっ! ・・・あら。気づいていたのね。まぁ、いいわよ。友達が増える分にはね」

「藤堂くんの彼女って九十九沢さんだったんだ・・・お似合いだぁ」


 あぁ恥ずかしい。バレてたんだ。いつからだろう恥ずかしい。

 ま、というわけで誠くんに友達が増えたそうです。



第八話(誠視点)


 よって今、俺はとあるショッピングモールにいる。

 彩葉を待っているわけだが、なんでか予定の時間の30分前についてしまった。

 暇を持て余していると、周りから視線を感じる。

 何なのだろうと思案していると、彩葉がこちらに歩いてくるのが見えた。

 心持ち上機嫌(自慢しているかのようにも見える)な様子で歩く九十九沢に手を振る。

 小さく手を振り返してくる彩葉に、不覚にも可愛いと思ってしまった。


「ごめん、待った?」

「いや。今着いたところだ」

「・・・じゃ、行こっか」


 急いでいるのか?

 早歩きで本屋に向かう彩葉を、俺は追いかけてゆく。

 到着した本屋は、チェーン店ということもあり、品揃えはかなりのものであった。


「なんかほしい本とかある? 部費結構余ってるっぽくてかなり買えると思うけど」

「なんでもいいぞ。 彩葉の好きな本を買うといい。俺は基本的に何でも読むからな。それにきっと、彩葉の好きな本は、俺の好きな本ばかりであるだろうしな」

「・・・選んでくる」

「承知した。俺はここで待っているぞ。よく冷やせ。その烈火の如く赤くなった顔をな」

「言わなくていいの! もー・・・」


 からかいすぎたか。

 愛い奴だな。


 そうして買い出しは幕を閉じた。

 ちなみに帰り際に手を繋いだ。まだ俺に恥ずかしいという感情があったのかと驚いたのは言うまでもない。



第九話(彩葉視点)


 「そういえば今週末から宿泊研修か。彩葉は準備はできているのか?」


 いつものように部室で漫画を読んでいると、誠くんが唐突に聞いてきた。


「準備は完璧だよ。班員も安心だし」


 そう答える私。班員が安心できるというのも、今回の宿泊研修で一緒に行動する班員が、


・藤堂誠

・私(九十九沢彩葉)

・藍島傑

・瀬治山小春


 の四人だからだ。全員藤堂くんに関わりがあるからまず安心だろう。


数日後・・・


「みんな集まってる〜? 班長点呼してね〜」


 宿泊研修当日。班でまとまって行動するのはこの時点からだから、周りの人の視線が痛い。


「今更だけどあの班だけバランスw」

「男子二人はわかるが女子のメンツw」


 とか聞こえてくるけど無視無視。

 ちなみに藍島くんは私と藤堂くんが付き合っているのをつい先日知ったらしく、とても驚いていたらしい。

 今朝藍島くんとあったときに唐突に「おお九十九沢! ちょうどいいところにいた。九十九沢、誠を頼んだ。あんな感じだがいいやつなんだ。なんだかんだ初恋だろうし。頼んだぞ」と祝っているような念を押しているようなことを言われた。初恋だと思うってのは嘘でも嬉しかった。


「出発するよ〜! バスに乗って〜!」


 先生の声が聞こえたので、バスに乗り、自分の座席へと向かう。

 数日前に話し合った結果、行きも帰りも私と藤堂くんが隣同士、その後ろの座席に藍島くんと瀬治山さんが座る形になったのだ。ウキウキとした気分で窓側の席に座っていると、隣にいつもと変わらぬ表情の藤堂くんが腰を下ろした。

 先生の指示でシートベルトをし、バスが動き始める。

 目的地までは1時間半と長いので、バスレクも用意されているそうだ。

 そうしている内にレク係が前に出て、マイクを使って司会を始める。


「皆さん元気ですかー? 宿泊研修楽しんでいますかー? と、いうわけで、バスレクを始めていきまーす!」


イェーーーイ!!


 テンション高っ! ちらっと隣に目を向けると、ちょっと上機嫌な(口角だけちょっと上がってた)藤堂くんが見える。可愛い。

 

「はい。まぁ、バスレクについて、クイズとかも楽しいかなって思ったんですけど、やんない人っているわけじゃぁないですか。なので、まずは最初に、自分の好きな人が自分のことをどう思っているのかわかる心理テストをやっていきます! お前ら好きだろ!? こーゆー恋バナとかよ!」


イェーーーーーーイ!!!!


「はい。質問。声に出して答えなくていいからな。・・・まずあなたに好きな人はいますか? いない場合は、自分の好きな女優、俳優を思い浮かべてください」


 います。隣にいます。


「次。『会話の途中でその人が目の前のオレンジジュースを飲みました。どのくらい飲みましたか?』」


 一気に飲んじゃいそうだなー。


「はい。まず、この質問では、相手の自分への気持ちがわかるそうだ。飲んだ量がそのまま、気持ちの大きさだそうだぞ。片思いのやつは飲んだ量が自分への気持ちの傾きがわかるそうだぞ」


 ひゃうぅ。

 恥ずかしいけど嬉しい。

 バスの中に女子の声が響く。良い結果だったのだろう。

 なんかモヤッとしたけど。


「おけ次。選択問題だ。『朝、急いで仕事に出かけようと家を出たあなた。しかしすぐに、ある「忘れ物」をしたことに気づいて引き返しました。その忘れ物とはなんでしょうか? 下から一番近いものを選んでください。 A:読みかけの本B:いつも使っているマイボトルC:大切なお守り(神社のお守りやパワーストーンなど)D:メイク道具が入ったコスメポーチ』はい」


 本かな。よく読むし。


「答えだ。これは相手にどう思われているかがわかるらしい。『Aの人は、「 充実した時間が過ごせる人」と思われている。Bの人は「気配りがすごいしっかり者」と思われている。Cの人は「ピュアな気持ちの持ち主」と思われているDの人は「コミュニケーション能力が高い人」と思われている』だと」


 え、嬉しい(語彙力)

 藤堂くんはどうだったんだろうな。気になる。

 とか考えてると、心理テストは終わったらしく、司会の人は原稿っぽい紙を投げてテンション高く言う。


「よっしゃ。次のレクだ! 歌うぞーーー! カラオケ大会だーーー!」


ぅおおおおおおーーーー!!!!


 うぉう! びっくりしたー。

 とまぁ、バスの中はここから目的地までずっとこんなテンションだった。



幕間(誠視点)


 心理テストか・・・。

 経験は無いが、どこかそそられるな。


「次。『会話の途中で・・・』」


 彩葉が、か。半分くらいか?


 ほう、程々に好いていてくれているのだな。


「おけ次。選択問題だ。『朝、急いで仕事に出かけようと・・・』」


 Aだ。漫研のものを持って帰ることが多いからな。


 なるほど。休息の場所としていてくれているのか。嬉しいな。

 などと考えていると、心理テストが終わり、カラオケ大会へと変わっていた。



第十話(誠視点)


 到着。長かった様ですぐだったな。

 バスを降りたあとは、ホテルに移動し、今日はホテル内で自由時間となった。ホテルから出ることは禁止されているが、国構え型のホテルのため、中心にある中庭の探索は自由だそうだ。


「誠くん、一緒に中庭に行かない?」

「ああ。そうだな」


 集会が終わり、解散となると、真っ先に彩葉が声をかけてくる。

 歩いてすぐの中庭に出ると、まるで本物の森の一角を切り取ってきたかのような幻想的な景色が広がる。

 その上、人工、人がきれいだと思う情景を計算して作られた景色であるため、木漏れ日も相まってまるで別の世界に来たかのように感じた。

 更にしばらく進むと、中庭の中心あたりで開けた場所に出る。

 そこだけに強く光が差しており、光のフェアリーサークルのようで別世界感をより際立たせる。


「この景色で現実リアルだと・・・? 異世界パラレルで無いのか・・・」


 俺の言葉にクスクスと笑う彩葉。

 そうだ。ここでなら、ちゃんと伝えられそうだな。

 他にここに人影も無いようだし。


「彩葉、その、なんだ。今思えばな、俺自身の気持ちを伝えれていないと思ってな」

「うん?」

「改めて、好きだ。俺と付き合ってくれ」

「ふぇ? え? あ、はい。よろしくお願いします」


 言えた。勇気を出して言って良かったな。見えていないとでも思っているのか、木の陰にいる傑と小春が小さくハイタッチをしている。おそらくだが、他のクラスメイトの奴らもここにいるのだろう。


「それにしても既視感があるな」

「確かにw でも嬉しい。ありがとうね誠くん」

「ああ。こちらこそだ。」


 と、その瞬間、俺は油断していた。

 彩葉は周りに一切の人がいないと考えているのか、俺に飛びかかってくる。

 唇同士が触れるだけの軽いキス。

 だが、精一杯の勇気を振り絞ったような、決心したような顔でキスをしてくる彩葉に、とてつもないまでの愛おしさが生まれる。

 一瞬だったか、数分だったか、長いようで短い時間が過ぎ、互いの体を離す。

 

ガサッ・・・

「あっ! 先生!」(小声)


「(ビクンッ!)」←彩葉


 ちらりと見ると、急にキスなどした俺たちに驚いたのか、先生が草むらから身を乗り出していてしまっていた。

 あまりの恥ずかしさからか、彩葉が走って逃げ出してしまう。


「あっ! おい! 彩葉!」

「待て藤堂、貴様とは話をせねばならんようだ」


 顔も知らぬ他クラスの生徒が俺を止めようとするが、それを無視して彩葉を追いかけた。

 後ろで幾人かの声が聞こえてくるが、それらも全て無視する。


 その後、・・・その、彩葉に人目につかないところで色々されました。はい。




エピローグ(誠視点)


 これは後日譚である。

 

 ちなみにあのあと、俺はクラスの男子に、彩葉はクラスの女子に囲まれ、自由時間の間、延々と尋問をくらっていた。

 結果、馴れ初めから何やら、終いには俺の過去についてまで話させられた。

 彩葉の方は、普段、恥ずかしくて(人と話すことが苦手だったらしい)あのような話し方になってしまっていたということを話したらしい。

 自己紹介のときの内容については、女子には話したが、俺に対しては秘密らしい。

 女子のニヤついた表情が頭から離れないのは致し方ないだろう。


 ちなみに俺は、今回の出来事から、格好つけることをやめた。自分の世界を優先して見ていれば、いつか彩葉は、俺の元を離れてしまうだろうと思ってのことだ。

 それに対して彩葉は、


「誠くんであることには変わりないよ。それに、元の優しい性格とかも含めて、私は『誠くん』が好きだからね」


 とのことだ。つい抱きしめてしまったのは致し方なし。

 

 まぁ、兎にも角にも、彩葉も俺も、これまで以上に充実した生活を送ることができるようになった。

 ・・・まぁ、その、何だ。



これから先、如何なることが起きようとも、俺は彩葉を一生幸せにすることを絶対として誓おう。


 おはこんばんにちは、もしくははじめまして。おがくずです。

 今回は与えられた設定で作品を書いてみようと言うことでお送りさせて頂きました。

 設定は、 


・恋愛要素は必ず。

・インテリキャラを一人

・一人称視点で

・厨二病要素を入れてくれ


 との事でした。

 むずかしいね。

 インテリキャラについて分かりにくかったかもしれませんが、藍島くんが一応そのつもりで書いています。

 当初はヒロイン、九十九沢さんも厨二病設定として書こうと思っていましたが、ヒロインが厨二病となると色々と引っかかるのでやめました。あと書けなかったです。ヒロインはデレてなんぼだと思っているので。

 なので代替案としてオタクっぽくしましたが、最後の方はただの純情少女でしたね。それとなーく伝わっていれば、幸いです。

 ちなみにですが誠くんはかなりのイケメンです。そういう風に想像してください。

 ね? 萌えるでしょ? 

「・・・その、無理はするな。・・・ぃ、彩葉」

 ほらこれ。イケメン君が顔赤くして目背けて言ってるんだよ!?

 ほら、それが萌えってやつだよ。伝われ(圧)。


 ・・・(落ち着いた)なんかすんませんした。

 ・・・では、最後に謝辞を。

 最後まで読んでくださった読者の皆様、本当にありがとうございます。

 あとがきまで丁寧に読んでくださる方には更に感謝を。

 今回の設定を考えてくださった方にも最高の感謝を。

 改善点などあればぜひ!

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