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ガラスの靴は、もう履かない。  作者: 蘇 陶華
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血は濃く、嘘は、体に流れる

架は、綾葉の祖母が何を言いたいのか、わかっていた。自分の親が、莉子を利用し、綾葉を犠牲にした。自分の息子夫婦の宝物を架に汚された。架自身、綾葉に想いは、あったが、それが、愛なのか、架には、わからない。

「よければですけど」

架は、口を開いた。

「落ち着いたら、僕と一緒に過ごそうと思っています。」

「本当?」

綾葉の顔が、明るくなった。

「綾葉。この男の言う事を信じて、何度、裏切られたか、わかっているの?それでも、信じるの?」

祖母は、渋った。

「それでも、信じたい」

架は、慎重に言った。

「贅沢はできないよ」

「買わないわ。ただ・・・」

「ただ?」

綾はは、口篭った。

「私だけを見て欲しいの。莉子でも、心陽でもなく」

「心陽?彼女は、ピアノの先輩と後輩の間柄で・・」

「知っているわ。二人とも、ライバルだった事を。だけど、心陽と架には、莉子も私も入れない何かがある」

「そんな事ないよ」

架は、否定した。心陽の技術は、他の誰にもない物がある。それを見届けたいだけだ。だが、今の綾葉には、理解できないし、心陽を加害者だと思っている。

「一緒にいるよ。綾葉。待たせてしまった」

そっと、綾葉の肩に手を置く、架を祖母は、冷ややかな目で、見つめていた。その架が、駆けつける少し前の事だった。

「どういう事?」

祖母は、医師からの説明を受けて、綾葉を責めていた。

「子供ができたんじゃなかったの?嘘だったの?」

「そ・・それは・・・本当だったの。だけど、すぐ、流れてしまって」

ほんの喜びも束の間、1週間程度で、お腹の中で、亡くなっていたとの事だった。綾葉h、ショックだった。架との子供が欲しくて、計画した事だったが、喜びも束の間、空に帰ってしまった。体も心も傷ついた事を涙ながらに祖母に打ち明けた。

「どうしても、彼がいいの」

「ピアノも弾けない。会社もどうなるか、わからない。それでもかい?」

「私の家があるわ。おばあちゃん、家に入ってもらいたいって、昔から言っていたじゃない?架を家に連れてくればいいわ。私と一緒に、ピアノ教室をやればいい」

「人の器はそれぞれなんだよ。彼は、お前では、ダメだよ。合わない」

「そんなおばあちゃん。彼の子供が死んでしまったの。それなら、私も死んでしまいたい」

「綾葉・・・」

「お願い。彼を手に入れたいの」

「わかった。おばあちゃんに任せなさい」

可愛い孫を傷つけた者から、守りたい。祖母は、綾葉の嘘を受け入れたのだった。

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