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ガラスの靴は、もう履かない。  作者: 蘇 陶華
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失った未来と憎悪

架が駆けつけた救急処置室の前には、綾葉の祖母が険しい顔で居た。

「やっぱり、あなたに任せようとしたのが、間違いだった」

俯き、目線を上げる顔は、青ざめ、目は充血していた。

「何があったんですか?」

「交差点で、転倒したって聞いたわ。突き飛ばされたって」

「突き飛ばされたって?」

「姿は、よく見えなかったけど、女性だったって。背の高くて、髪の長い。あなたが、関係してないのかい?」

綾葉が突き飛ばされて、転倒した。側にいたのは、背の高い髪の長い女だと。同じ事を、ほんの昨年、聞いた事があった。莉子の事故。立ち去る女性の姿を見ていた住人が居る。決して、背は、高くないし、髪は長くなかったと思う。莉子の事故の時と、同じ女性が犯人とは、思えなかった。

「子供は、大丈夫なんですか?」

「ようやく、子供の事を聞いたな。」

固まった表情が、少しだけ、緩んだ。

「危なかったらしいが、落ち着いたようだ。少し、眠っている」

カーテンの向こうに、綾葉の横顔が見える。

「そうですか。大事なくて、良かった」

「本当に、そう思うのか?おもちゃの様に、捨てるんじゃなかったのか?」

「それは・・・ないです」

「会社が大変な目にあって、ようやく、誰が大事なのか、気が付いたのか?」

架は、頭を振った。

「自分の選択が、間違っていました。全部、周りのせいにしていました」

「ようやく、気がついたのか」

架は、答えなかった。ようやく、気がついた訳ではなく、知っていたが、戻れなかっただけだ。

「これから先、どう考えている?」

会社を含め、綾葉との事を聞いた。

「何も考えていません」

「何も?」

綾葉の祖母は、何もと答えた架を驚いて、見上げた。

「何もありません。莉子とも別れる事にしました」

「もう、別れたのか?」

「彼女とは、逢っていないんですが、別れるつもりです」

「本当なんだな。他の彼女とは?」

架は、首を傾げた。

「綾葉を突き飛ばしたのは、他の女なんだろう。車椅子の奥さんができる訳がない。ピアニストの・・・」

「まさか。彼女がそんな」

「彼女?」

架が彼女と呼んだので、祖母は、顔を顰めた。

「おばあちゃん」

その時、奥のカーテンを開けて、綾葉が叫んだ。

「心陽を攻めないで」

「心陽と言うのかい?」

祖母は、突き飛ばしたのが、心陽だと思い込んでいる。

「綾葉。本当に、心陽だったのか?」

「えぇ・・・多分」

綾葉は、両手で、顔を覆う。身体を庇ったらしく両腕は、細かい傷に覆われていた。

「ずっと、付き纏われていて」

「ほら、他に女がいた」

祖母は、架を責めていた。


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