失った光
「呼び出すなんて、珍しいわね」
心陽は、カフェに呼び出されていた。架が呼んだのだ。
「聞きたい事があってね」
架は、バックの中から、いくつかの物をテーブルに並べた。
「警察に行こうかと思ったけど、証拠もないんでね」
莉子の居たマンションに仕掛けられていた盗聴器だ。
「君なんだろう?幾つかの事は、君が起こした。そうなんだろう?」
「どうして、私が?」
否定も肯定もせず、心陽は、笑った。
「マンションに、盗聴器を仕掛けて、私が何を知り得たと言うのかしら?もっと、別の人を疑ったら?」
心陽は、しなやかな指に、細い顎を載せて、言葉を選びながら、言った。
「他の人?誰がいると言うんだ?君だろう?莉子を突き落としたのは」
「そこを、知ってしまうと、傷つかなくといい人が傷つく事になるわよ」
「君じゃないのか?」
「架。私達は、今、物凄く、無駄な時間を過ごしてると思うの。もっと、別な自kんの使い方をしない?」
差し出した手を架は、払った。
「いい加減、本当の事を話してくれ」
「本当の事?」
心陽は、架の差し出した盗聴器を押し返した。
「冷静に考えるのね。私が、知りたいのは、あなた達ではない。私では、ない誰かが、身近にいるのでは?」
一人思い当たる。が、まさか、綾葉がそんな事をする訳がない。大人しく、自分の後について歩くような彼女が、行うとは、思えない。
「よく、目を開けて見る事ね」
時間が気になるのか、心陽葉、何度か、携帯の時間を確認している。
「そろそろ行かないと。」
立ち上がると架が引き留める。
「まだ、話は、終わっていない。あの日、君は、莉子が事故にあった時にそばに居た。本当に君ではないのか?」
「残念ね。私でなくて」
心陽葉、立ち去ろうとして、ふと、思いとどまり、振り返る。
「莉子は、何も言わないの?」
「記憶がないんだ」
「本当に?」
「あぁ・・多分」
「そう。」
振り返りながら、歩き出す。
「架。会社なんて、あなたに似合わない。戻ってきて、まだ、間に合うから」
「心陽」
「知っているでしょう?小さい頃から、あなたのピアノが好きだった事」
架は、黙ってうなづいた。自分が経営に向いていない事は、よく分かっている。右手が、思うように動けば、きっと、今も、心陽の憧れのピアニストdいられただろう。が、少し、時間が遅かった。架の携帯が鳴り、会社からの悪い知らせが届いた。
「今すぐ、行く」
架の顔色が悪かった。