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ガラスの靴は、もう履かない。  作者: 蘇 陶華
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自分の生きる道

僕は、とりあえず、莉子の手術を終えるのを待って、再度、七海のいる病院に戻る事にした。

「こちらは、僕が居るから大丈夫」

勝ち誇った架の言葉を背に受けて、整理をする為に、戻る事にした。莉子の人格が崩壊した理由を知りたかったし、その場面を見たいとも思ったが、手術して状態が、どちらに向かうか、わからなかったので、慎重に行動しようと思った。架の言葉に従い思い通りになるのは、嫌だったが、一旦、自分の問題を片付ける意味で、七海のいる病院に戻り、自分の親と話する事にした。帰宅すると案の上、責められた。

「大事には、至らず、入院も経過を見る為の1泊で済んだけど、婚約者を差し置いて、出かける急用っては何だったの?」

母親は、少し、感情的になっていた。父親は、忙しいのか、帰宅した後、出掛けていた。

「七海とは、結婚しないよ。お互いに納得している」

「お互いの気持ちの問題ではないの。家同士の問題もあるのよ。わかっている?」

「それは、僕がここの跡取りというのが、前提だろう?」

「そうよ。あなたに継がせるために、守ってきた」

母親は、いつも、僕の為だと言う。

「あなた以外の選択はない」

「追い詰めないでくれよ。僕は、あなたがたの決めた道を歩くつもりはない」

「そう言いながら、親の力で、ここまで、これたでしょう」

「無理にでも、医者にしたかったくせに」

「だから、逆らって、受験すらしなかった。絶対、大丈夫だと言われていたのに」

「僕には、向かない。今のままでいいと思っている」

「そうよね。人妻のリハビリで、満足していると良いわ」

僕は、一瞬、ドキッとした。

「どうして?何を聞いたの?」

「驚く所を見ると本当のようね。」

母親は、机の引き出しから、束ねられた書類を取り出すと、僕に叩きつけた。

「よりによって、人妻で、下半身麻痺ですって?どうして、そんな女性を」

「待ってくれ!何が、問題なんだ?人妻である事?それとも、下半身麻痺という事なの?」

「その両方よ」

母親は、七海から聞いた情報を元に、興信所を使って僕の身辺や莉子の事、夫の架の事を調べていたのだった。

「調べたの?」

「当たり前よ。大事な一人息子の将来がかかっているんですもの」

母親の興奮は頂点に達していた。口角に泡を交えて、声を荒げている。

「もう、あちらに行かなくていいわ」

僕は、叩きつけられた書類を拾い集める。

「もう、向こうに行く事はない。父さんが話をつけておいたわ」

僕は、かっとなるのが、わかった。

「何でだよ。どうして、僕が、自由にやりたい事をやらせてくれない」

僕が解決したい問題を親は、いつも、先に解決しようとする。

「彼女を治してやりたい。それだけなんだ。それ以上を、望んでいるわけではないんだ」

「それは、あなたが、やらなくてもいい事よ。新。彼女には、夫もいる。あなたの出る幕はないの」

「母さんも、医療職ならわかるよね。僕は、途中で、投げ出す事はしたくない」

「新。お願いだから、父さんの願い通り、七海さんと結婚して、彼女の事は、忘れなさい」

僕は、拾い集めた書類をシュレッターに押し込む。

「帰ってきて良かったよ。決心できた。僕は、あなた達の思い通りには、ならないし、七海とも結婚しない。仕事も邪魔するなら、いいよ。僕の力で生きていくから」

「新!」

「もっと、早く、そうすれば良かった。七海には、もう、逢わない。そう言ってて」

僕は、自分の家を後にした。

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