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ガラスの靴は、もう履かない。  作者: 蘇 陶華
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私の伴侶

玄関で、誰かがロックを解除する音が聞こえた。咲夜、あんなに激しく口喧嘩をした夫が心配して来る筈がない。自分で、何とか起きあがろうとするが、上手く行かない。その内、寝室のドアが開いて、見慣れた顔が覗いていた。

「何か、あったのか?」

「別に」

何かあったのか?ではなく、見たらわかるでしょう?と言いたかったが、莉子も強情なので、何もないと言ってしまう。

「今日は、何かあったのか?藤井先生が電話してきた」

やっぱり。藤井先生が夫に電話する事自体、珍しい。その位、ステージをキャンセルした事は、大きなアクシデントだった。架の告白は、莉子にとって衝撃だった。自分の恋人の子供を認知すると莉子の気持ちを確認せずに言う顔が憎らしかった。

「そうね。藤井先生と約束があったから」

起き上がるにも、起き上がれない莉子を見て、架が手を貸そうとするが、手で払い退けてしまう。

「まだ。フラメンコ続けているんだ。歩けもしないのに」

架の手がないと起き上がれない。架の問いかけを無視し、身を任せる。

「辞めたんじゃなかったのか?」

「私は、諦めていない」

車椅子に座ると、莉子は体勢をとりなした。

「自分で、踊りたい。あなたといる事で、夢を諦めるなら、別の道を歩きたい」

架は、莉子の申し出にハッとした。

「君から言う事?」

「えぇ・・・それが良いと思う。私達、お互いに未熟だった」

莉子が続けようとした時、架は、後ろを気にしていたようだった。

「誰か?いるの?」

莉子が目を向けると申し訳なさそうに心陽が立っていた。

「何か、私がいたら、まずい話だった見たいね」

心陽だった。

「どうして、架と心陽が?」

「うん・・・そこで、逢ったんだ」

架は、莉子と間をとって、離れる。

「せっかくのステージだから、見送ろうと思ってきたの。そうしたら、架さんが、血相、変えて、車を走らせて来るから」

ごめーんと心陽は手を合わせる。

「一緒に様子の確認をさせてもらいたかったけど、お邪魔みたいね」

「いや・・」

架は、首を振る。

「丁度良いよ。後は、お願いする。僕は、これで」

架は、何か、気になる事があるらしく、そわそわしている。

「待って!まだ、話は終わっていないわ」

「それはさ・・」

架は、心陽の顔を伺いながら言う。

「後で、ゆっくり話そう」

「後で?」

「悪い」

架は、後を心陽に任せると、部屋を出ていった。

「本当に、ごめん」

心陽は、ちらっと小さく舌を出す。

「心配だったから」

「良いの。ありがとう」

「みんな・・・心配してくれるのね」

「こんな体だからね」

莉子は、寂しく笑う。

「もしかしたら、あの人も来るんじゃない?」

心陽にも、新に連絡がいっている事は予測がつく。

「まさか・・・今日は、実家に帰るって言ってたはずよ」

「そうかしら?」

心陽は、笑った。

「来ると思うわよ。だって、心配していると思うから。私が彼でなくて、良かったわね。また、鉢合わせしちゃうもの」

莉子の肩にそっと触れる。

「大丈夫。外で、様子を見て来てあげる。待っているんでしょう?」

「待って!心陽」

莉子の静止を振り切り、心陽は、玄関から出ていった。

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