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ガラスの靴は、もう履かない。  作者: 蘇 陶華
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対決

僕ができる事は何なのか?自分に問い続けていた。藤井先生は、やむを得ず、莉子の夫に連絡をとってくれたそうだが、その後、どうなったのか?ステージに入ってしまった今、莉子の状態を知る人はいない。こんな時に、不謹慎だが、僕は、黒壁に連絡をした。カルテには、莉子の緊急連絡先。つまり、莉子の夫の携帯が記録されている。

「お前、一体、何をやって・・・」

あの日から、莉子の話をした事はない。すっかり、黒壁との間では、莉子は、過去の話になっていた。突然、莉子の夫の携帯番号を聞いたから、黒壁は、何かを感じたのだろう。少し、嗜める口調になっていた。

「お人形さんみたいに可愛い人」

誰もが、莉子をそう思っていた。従順なのかと思ったら、意外と、芯のある人だった。

「危ない橋を渡るのは、やめとけ」

舌打ちをしたが、すぐ、夫の番号を教えてくれた。僕は、躊躇した。このまま、電話を掛けるべきか?藤井先生から、連絡を受けて、今頃、様子を見に行ってくれているかも知れない。そうなると、僕の行った事は、無駄になる。・・が

「すみません・・」

僕は、思い切って、番号を押していた。

「はい・・・」

あの病院で逢った時と同じ、冷たい声が響いてきた。

「先程も、連絡をもらって、今、自宅の玄関前にいます」

夫は、莉子の安否を確認する為に、動いてくれていた様だ。

「後の事は、こちらに任せて頂いて、大丈夫です」

「あ・・でも、様子だけ、教えて頂いてもいいですか?」

架は、少し、笑った。

「まだ、無駄なリハビリを続けていたんですね」

「無駄な?」

僕は、否定されカチンと来た。

「良くなる保証もないのに、どうして、夢を見させるんです?余計に辛くなると考えた事が?」

「夢じゃない・・・莉子は、歩ける」

思わず、僕は、感情的になっていた。

「あなたが、可能性を潰している。彼女を押し込めようとしている」

「僕が?」

架は、次第に苛立っていた。

「妻の事は、僕が考えている。口を挟まないでくれ」

妻と言われ、僕は、それ以上、何も言う事ができなくなった。だが。一目、安心できる状況なのか、確かめたくて、新幹線に飛び乗った。駅に着くまでの、1時間半、長く感じる。莉子は、どうして、ステージに出れなくなったのか?再発したのか?事故にあったのか?それとも、何かが起きたのか?僕は、落ち着かなかった。マンションの下に、ようやく辿り着いた時に、見覚えのある女性が、立っていた。

「あら?」

その女性は、藤井先生達ではなく、あの日に七海を陥れた莉子の友人と言う心陽と言う女性だった。持っていたバックを、ゆらゆらさせながら、マンションの上の様子を伺っていた。


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