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ガラスの靴は、もう履かない。  作者: 蘇 陶華
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君を守る資格

車の急ブレーキを掛ける音と衝突音に僕は、振り向いた。そこには、青信号で、左折した車が、急に駆け出した七海を避け、沿道の街頭に衝突していた。

「七海?」

七海は、驚いて転倒し、強く打ったらしい左腕を庇っていた。

「痛むのか?」

周りの人々が、集まる中、僕は、七海に駆け寄った。

「新!行かないで!」

顔を苦痛に歪めながら、僕に訴える。

「七海。病院に行かないと!他は、怪我をしなかったのか?」

「どこにも、行かないって約束して」

「病院に行くのが先だろう?」

僕は、辺りを見回した。衝突した車から、降りてきた運転手も、救護が必要な様子で、すぐ、救急車が駆けつけていた。

「こちらにも、怪我人がいます」

七海は、すぐ、ストレッチャーに乗せられ、経緯を細かく聞き取られた。時間だけが流れて行って、僕が、すぐ、莉子の所へ駆け付けるのは、困難となりつつあった。今、この時間にも、莉子に何かが起きていて、取り返しのつかない事が起きそうで、僕は、怖かった。

「一人にしないで!」

救急車から、姿を消そうとする僕に気付き、七海は、叫んだ。あまりにも、不安定になるから、救急隊員の人は、僕に付き添うように言い、搬送先を探し始めた。

「それなら・・・」

僕は、両親のいる病院を告げた。自分の身分を告げ、事故の目撃者だと説明をした。このまま、七海を何そうして貰えれば、少し、時間ができる。

「僕の両親の所に行くから・・・安心して」

「新もいるのね」

「一緒にいるから」

僕は、七海の隣で、藤井先生からのメールに目を通していた。どうしても、連絡が取れない莉子を案じて、1番、連絡をとりたくない相手に連絡をとる事にしたと言う内容だった。藤井先生が連絡を取りたくない相手とは、莉子の夫、架の事で、莉子がフラメンコに復帰する事を一番、反対している。なるべくなら、彼との連絡は、避けたいらしいが、莉子の身を案じて、電話したとの内容だた。

「新、携帯ばかり見ていないで」

七海は、僕が、誰と連絡を取り合っているのか、気にしていた。

「七海。病院に着いたら、僕に少し、時間をくれないか?病院には、僕の両親も、迎えに出ると言っている。だから、いいね」

七海は、僕が逃げないと思ったのか、少し、安心したようだった。

「新が約束を守らなかったら、本当の事を話すかあ、一日だけよ。一日だけ、待つから」

僕は、頷き、病院の救急外来に到着すると、看護師に軽く挨拶し、そのまま、通りに出ていった。藤井先生が夫の架に連絡したのなら、急ぐことはないのかも知れない。だが、何か、胸騒ぎが止まらない。救急車を迎えに出た僕の両親は、怪訝な顔をしていたが、僕は、振り返りもせず、走り出していた

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