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ガラスの靴は、もう履かない。  作者: 蘇 陶華
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君を女性としてみる事

莉子との花火大会は、スタジオのスタッフや藤井先生の協力もあって、無事に迎えられるかと僕は、思っていた。が、僕の前に現れたのは、一緒に出かける事を偶然、知ってしまった七海だった。

「カフェであったあの人のリハビリは、まだ、行っているの?」

マンションに、強引に押しかけた七海は、莉子の事を聞いてきた。

「仕事がね、まだ、途中で終わったケースだから。どこまで、自立できるか、見届けたい」

「それは、わかるけど、二人で、出かけるなんて、おかしい」

「二人って、聞いたのか?」

「そうなの?」

七海は、怒っていた。

「二人で、外出するのね」

「彼女をステージに戻すように頼まれたんだ。体だけじゃない。心にも、リハビリが必要なんだ」

「それは、新がやらなくてはいけないの?」

「僕のケースだから。彼女を治すって決めた」

「ケースだから。それだけなの?」

七海は、怒っていた。幼い頃から一緒に育った僕達は、互いの感情がよくわかる。だから、僕が、嘘をついたら、すぐ、バレてしまう。

「魅かれている。僕は、彼女をよく知りたい」

「待って、彼女は結婚しているんでしょう?新。目を覚まして」

「結婚?知っているよ。僕が興味があるだけ。それは、七海に知っていてほしい。彼女を車椅子の生活から、卒業させたい」

「酷い・・・私に、そんな事を」

七海の両目から、涙が溢れていた。

「どうして、私以外の人に興味があるって、私に言うの?」

「七海。」

僕は、七海の頬に触れた。酷い事を言っているのは、わかっている。だけど、嘘はつきたくなかった。

「七海は、僕にとって、大切な存在だよ。だけど、それは、妹として出会って、女性としては、見れない」

「いやよ」

「七海!」

七海は、僕の手を振り払った。

「私には、新以外、考えられない。」

「七海。まだ、何もわかっていない」

「絶対。新の側にいる」

七海は、興奮していた。今まで、僕の側で、僕だけを見てきたから、兄を失うような感じだったんだと思う。だけど、いつまでも、ありもしない愛情を充てにして、側に置いておく事はできない。

「七海は、僕の全てを見ている訳ではないだろう?」

僕は、七海の細い肩を掴んだ。

「七海が、見ているのは、幻想だ。僕は、七海の優しいお兄さんではない」

黙って、七海は、僕を睨んだ。何か、言葉を出そうと、口を開きかけたが、首を振り、僕の手をすり抜けていった。

「新。私は、認めない。絶対、新と結婚する。彼女との事は、何もないと信じる。だから、」

七海は、言った。

「彼女とは、リハビリだけの関係。そう言い通して」

莉子と何があっても、リハビリだけの関係と言う事にする。だから、自分との結婚の約束は、破らないでほしいという事だった。

「七海。ごめん。それは、守れないよ」

僕は、先にマンションの部屋を出ていった。

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