表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ガラスの靴は、もう履かない。  作者: 蘇 陶華
36/106

莉子のリハビリ計画書

結局、僕は、藤井先生のペースに乗せられ週末は、リハビリ師として、スタジオに通うようになった。日々の仕事を忙しくこなし、カンファレンスにも参加し、莉子の様なケースを調べていった。

「あの時、確かに足先が動いた」

転倒した時に、外れ飛んだスリッパが、莉子の足先を露わにし、微かに動いているのを知らせてくれた。生理的な反応ではない。元々、莉子の体は、体幹が鍛えられていた。治療の為に、幾分かの筋力の低下は、見られていたが、必要な筋肉量を増やす為、管理栄養士に、相談し、1日のメニューも考えてもらった。血流を良くする為のマッサージ。これは、スタジオの女性達にお願いし、僕は、週に2日。拘縮しないように、動きを確認し、服薬の確認まで、行ってった。

「一緒に住めばいいのに」

藤井先生は、事ある事に、僕を冷やかした。莉子のリハビリに僕の気持ちを利用しようとしているのは、明らかだ。車椅子の莉子は、確かに立って、踊る事は、できないが、パルマとして参加している姿は、流石だった。ただの患者さんではない。生き生きと、踊り手のリズムに乗りながら、拍をって行く姿は、見事だった。主役は、踊り手と、目がいってしまいがちだが、僕は、リハーサルの間、莉子の姿に釘付けになる。

「莉子の送迎は、私達がやるから、先に帰っていいのよ」

スタッフが莉子の送迎を担ってくれていた。僕が、送迎をすると、旦那さんと逢うのは、不味いと言うのだ。

「やましい事なんか、ないんでしょう?送らせたら?」

CDの確認をしながら、藤井先生が言う。

「一度、戦ってしまえばいいのよ。莉子には、その位価値がある」

「いえいえ。僕は、大丈夫です」

「何が、大丈夫なのよ。叶わぬ恋愛も、芸のうちなのよ。莉子に平凡は合わない」

「そんなメチャクチャな」

「そうね。可愛い婚約者がいるんですものね」

「また・・・先生!」

「結婚の約束は、誰がしたの?そんなの、簡単に破れる約束よ」

藤井先生は、一蹴した。

「今の子達は、楽な恋愛しかしないのね」

あまりにも、毒気ついて、No.2の蘭先生に、止められていた。心陽は、確かに婚約者と言っているかもしれないけど、僕にとっては、妹でしかない。五日、きちんと話さなきゃならない。スタッフさん達のストレッチは、いつしか、僕の仕事になり、何回か、リハビリの回数も増えていった。僕の感覚では、掴まりながらだけど、立ち上がりから、立位保持する時間が、伸びていっていた。本当に少しずつ、何だけど、もしかしたら、歩けるかもしれない。僕には、希望が見え始めていた。そんな時だった。スタッフさんが、僕にあるチケットを持ってきた。

「彼氏が、行けなくなったので、新君。誰かと行ってきたら?」

花火大会の観覧席だった。

「彼女さんとどうぞ」

「ちょっと、何言ってんのよ。あんな乳くさい子と言ってもつまらないでしょ」

藤井先生だった。

「莉子!行ってきなさい」

「は?」

「ダメですよ」

僕らは、同時に答えてしまった。

「何言っているの?いろんな所に行くのも、リハビリでしょ?あなたが、ついているなら、安心だし、莉子にも気分転換させなさい」

「でも・・」

莉子が何かを言おうとすると、藤井先生の右眉が跳ね上がった。

「いつも、下ばかり見ているから、空いっぱいの花火を見てきなさい」

「それなら、先生も!」

「ZZZZ」

藤井先生に睨まれた僕は、莉子と花火大会に行く事になった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ