表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ガラスの靴は、もう履かない。  作者: 蘇 陶華
33/106

猜疑心だけが、育っていって

自宅に通う家政婦が、迷いながら打ち明けたのは、心陽が遊びに来てから、2から3日後だった。

「ベッドの下にあったのは、奥様のですか?」

迷いながら、家政婦が差し出してきたのは、莉子の物とは、程遠い口紅だった。

「私のベッドの下にあったの?」

「いえ・・」

家政婦は、下を向いてしまった。架に恋人がいるのは、知っている。だけど、最低のルールだけは、守ってくれていると思っていた。自分の留守中に、他の女性を招き入れる事は、しないと思い込んでいた。聞くと、架のベッドカバーには、長い髪がついていたと言う。自分は、手術の為、髪を剃ってしまっていて、ようやく、伸びたものの、髪は、短い。決して、長くはないし、架のベッドに行った事は、なかった。

「わかったわ」

莉子は、家政婦に口外しないように伝えると、いつもより、早く帰宅させた。

「何だろう・・・」

哀しくて、涙が出てくる。新に焼き餅を焼いて、無理矢理、帰宅させたのではなかったのか。少しでも、自分を気にかけてくれたのでは、ないのか。全て、一人よがりなのか?悔しくて、涙が出ていった。

「心陽。聞いて」

莉子は、思わず、心陽に電話した。

「信じなきゃ、ダメよ」

心陽は、莉子を励ました。

「夫婦なんだから。架さんを信じてみたら?信じられない何かがあったの?」

「別に、ないけど・・」

「本当?何か、あったら、いつでも言ってね」

気のせいか、心陽の声が弾んでいた。電話を切って、何人か、フラメンコ仲間から、電話があった。

「先生が、会いたがっている」

レッスン仲間が、そう声をかけてくれた。莉子は、藤井とすぐにでも、話をしたいと思っていた。

「ステージに立つ事が一番のリハビリよ」

藤井は、言った。だけど、まさか、個人的に新に、スタジオでのリハビリを頼むなんて。

「先生。どうして?」

カフェの帰り道、運転する藤井に思い切って、声をかけた。

「何が?」

「初対面の彼に、私の事を頼めるんですか?」

「う・・ん。私との付き合いって、どのくらいだった?」

「それは、そこそこ長いかと」

「スタッフ達とは?」

「まぁ・・それなりに」

「あなたが、思うよりあなたの事を知っているつもりよ。皆、あなたの事を心配していた」

藤井は、少し考えながら言う。

「どうして、ステージでは、あんなに、感情表現ができるのに、こうも下手なのかね」

ちらっと、ルームミラー越しに莉子を見やる。

「フラメンカらしく、生きるのよ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ