表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ガラスの靴は、もう履かない。  作者: 蘇 陶華
31/106

一枚の紙に縛られない関係

七海の発言にテーブルに居た人達の表情が一瞬、凍りついた。それは、僕と莉子の表情が、曇ったのが、わかった訳で、自慢げに話す七海に、周りの空気を読む事は出来なかった。

「あら、そう。おめでたいのね」

藤井先生が、お祝いの言葉を告げたと思った。が

「紙に縛られる関係なんて、私は、ごめんだわ。私はよ」

やんわりと話す。

「色々、事情がおありなんですね」

莉子が、僕に向かって言う。嫌味にも、聞こえる。

「おめでとうございます。新先生」

莉子に言われて、七海は、鼻の穴を膨らませて、僕の腕にしがみつく。

「七海。人前で、やめないか?初対面の人達に、関係ないし」

「今の所は、関係なくてもね」

藤井先生は、僕の側にくると、そっと手元のパンフレットを渡してきた。

「一人の人生を代える事になるわ。うちのスタジオで雇ってあげる。生徒達のボディメンテナンスと月崎 莉子をステージに立てるように、リハビリする事」

「ちょっと、先生。それは・・」

莉子が慌てて止める。

「彼には、今、勤務している病院もありますし・・それに」

「そう?休みくらいあるんでしょう。通えばいいわ」

「先生。彼には、彼女が」

藤井先生の、右眉が跳ね上がった。

「リハビリが、目的よ。このままでいいの?彼が、側にいる事で、復帰できるなら、投資はいとわないわ」

藤井先生は、真っ直ぐに僕と七海に向けて言い放つ。

「理学療法士なら、プロとして、最後まで、やり遂げるべきね。できる限り、時間を作って、うちで、リハビリを開始して。このまま、この子を置いて置けない」

七海も藤井先生の剣幕に、口を挟む暇がないようだ。

「いいかしら?」

莉子も、どうしたらいいか、言葉を失っている。他のスタッフも、あまり、勝手に口を開く事は、許されていないようだ。

「莉子。このまま、ダメになるつもり?全て、受け入れなさい」

藤井先生は、莉子の事が可愛いようだ。何としても、ステージに立たせたい気迫を感じる。

「わかりました。僕で、良かったら」

つい、僕の口から言葉が出てしまった。

「新!」

七海が、腕を引っ張る。

「仕事だよ。僕だって、治る可能性が、少しでもある人を放り出す事はできない。何処まで、できるか、やってみたいんだ」

彼女に会う方法で、リハビリを行う。あの病院で、僕が考えた方法で、試したい。「ありがとう。期待している」

藤井先生が、ようやく、口元を緩めてくれた。莉子は、複雑な顔で、僕らを見ている。

「さぁ、それでは、打ち合わせを始めるわね。渡した、パンフレットを見てちょうだい」

こうして、僕は、時間の合間を見て、フラメンコスタジオに通う様になった。勿論、そこには、七海が、現れる様になるのだが。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ