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ガラスの靴は、もう履かない。  作者: 蘇 陶華
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君を追いかけない理由

ずっと、その日は、心陽に付き合う事になっていた。両親の差金だと僕は、思っている。帰ってくるか、七海と入籍するか。こんな中途半端な気持ちのまま、心陽と結婚する気にはなれなかった。莉子という女性と出会って、彼女のステージに立つ姿をイメージした時に、僕が、どんなに、彼女に恋焦がれているかを思い知った。これからという時に、終わってしまった僕の思い。彼女は、冷たく僕の前から去った。

「やっぱり、都内で、購入した方が良くない?」

七海は、何か、アクセサリーが欲しいと言った。僕の両親に、見せるという。どれだけ、僕が、心陽を想っているのか、説明するという。

「七海。わかっているだろう?」

僕は、何度も言っている。

「わかっている。妹くらいにしか、思っていないって言うんでしょう」

妹の様に無邪気に笑う。

「でも、きっと、新は、私の事が1番大事なのよね」

僕は、否定できない。1番ではないけど、昔から、天使みたいに、純真な七海を傷付けたくないと思ってきた。何かあると、すぐ泣いて、僕の助けを待っていてくれた妹。僕の遭難騒ぎの時は、僕が発見されたと言うのに、七海の方が体調を崩して大変だった。だけど、妹は、妹でしかないんだよ。

「新は、私から逃げられない。結局、新は、両親から逃げられないの」

時折、カチンとくる事をサラッと言う。

「結婚くらいは、自分で決めるよ」

「だから相手は、私よね」

僕は、答えなかった。病院から、高速で1時間、莉子の帰った筈の街に来ていた。七海の買い物は、口実で、この街のどこかにいる莉子に逢いたかったの知れない。

「買い物の後は、カフェね」

七海は、はしゃいでいた。なかなか逢えない新が、自分を誘い買い物に付き合ってくれた。自分への贈り物を購入し、カフェに行ける。側から見たら、恋人にしか見えない。ショウウインドウに映る自分の姿にも満足している。

「今日は、とても、いい気分」

七海のご機嫌取りができて、取り敢えずは、両親が満足するだろうと少しは、ほっとした。無理やり、自宅に連れ戻されしたら、二度と莉子に会えなくなる。情け無い位、僕は、非力だ。

「新!ここ入ろう!」

七海は、お洒落なカフェを見つけると子犬の様に、走り出し飛び込んでいった。

周りに、待っている人なんか、構やしない。七海は、そういう所がある。

「七海。待っている人がいるんだから。少し・・」

僕は、前に並んでいる人の後ろ姿を見て、ハッとした。見慣れたその姿は、やはり、あの人だった。

「新ってば!」

僕は、すぐにでも隠れたいのに、七海は、何度も、連呼していた。

「新!」

七海の声は、その人にも、ついに、届き、振り向いた。やはり、あの人。莉子だった。

「え?」

僕は、隠れる暇がなかった。

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