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ガラスの靴は、もう履かない。  作者: 蘇 陶華
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君とは、リハビリ会議の後で。

七海を何とか、宥めて、新幹線に乗せた僕は、帰宅した後も、莉子の事が気になっていた。その場で、莉子の口から聞きたかった事は、黒壁が、長いLINEを送ってきて、嫌でも、知る事になった。奴は、得意げだった。何でも、莉子の事は、知っているとばかり、僕に報告してくる。僕の知りたくもない情報を黒壁は、どうやって、知り得たのかを交えながら、報告してくる。結局、莉子は、自分で、リハビリをしたかったらしい。人の目を避けたかったと。立ちあがろうとしたが、立てる訳がなく、ブレーキの掛けていない車椅子は、あらぬ方向に行ってしまい、床に倒れ込んでしまった。運悪く、背中から、落ちてしまい、気を失ったとの事だった。

「また、頭でも、打ったら、俺の今までの苦労が無駄になる。でも、その分、一緒にいる時間が長くなるかな」

なんて、平気で言うから、腹が立つ。僕は、変わらず高齢者の廃用症候群のお兄様やお姉様のリハビリに、携わり、高齢のお姉様には、下を向いた瞬間に、頬にキスされたり、散々な日々を送っていた。そんなある日のカンファレンスだった。莉子のリハビリの成果が、なかなか上がらないとの話が出た。黒壁を非難する訳では無いが、看護師の嫉妬心もあって、担当を変えてみたらどうかとの話になった。

「ここまで、積み上げたのが、無駄になります」

黒壁は、反対した。が、早く成果を出したい莉子の両親の声もあり、担当を変える事になった。

「誰が、合うかな?」

主治医は、リハ担当者全員の顔をぐるっと眺めた。

「そうだな・・・最近、成果を上げてきた・・・」

「俺?」

一瞬、主治医と目が合ったので、慌てて逸らした。隣のリハ師が、僕の肩を叩いた。

「爺さん、婆さんのアイドルの出番だよ」

「は?」

僕は、変な声をあげてしまった。爺さん、婆さんのアイドルというより、黒壁から担当を取り上げる事で、嫌な風当たりが強くなるのを避けたかった。

「新!やってみろ」

「は・・・・い」

「どこかの垂らしより、平和ボケしている新を試してみるのも、いい結果を出せるかもしれない」

「先生?」

主治医の後に、看護師が続けて言う。

「新も、なかなかだと思います。彼女さんらしき人が差し入れに来てました」

「え?」

一斉に、全員の目が僕に注がれる。

「東京駅で買ったケーキ、頂いたんです。あんなケーキ。若い娘しか買いません」

余計な事を言う。看護師安達。僕は、処分に困り、ナースSTに置いたのが、間違いだった。

「彼女もちか・・・。羨ましいな。まぁ、そういう事だから、早速、今日から頼むよ」

主治医は、むくれる黒壁に引き継ぎを済ませるように、告げると、会議は、お開きとなった。

「全く・・・彼女持ちとはね」

「彼女ではなく、幼馴染です」

「ふ・・・ん。あちらも、旦那持ちだよ」

黒壁は、不満そうにカルテを取りに出ていった。

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