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自覚の足りない邪神さんは、いつもどこかで迷走しています  作者: デブ(小)
第十八章 邪神さんと聖なるもの
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07 成長

 世界の軍事バランスが崩れていると言われても、実感できる要素がまるで無い。


 町中での行動中やシュトルツの散歩中などで監視されているのは知っているけれど、学校や家にまで付きまとってはこないので害は無いし。

 きっと大袈裟に言っていただけ――そう油断していたら、真由とレティシアが襲われた。


 といっても、きっちり返り討ちにしたそうだ。

 というか、実家近くには三上さんや亜門さんたちもいるし、悪魔たちも見守ってくれている。

 なので、古竜――とまではいかなくても、アルくらいの実力がなければ被害が出ることはない。


 しかし、応援が出るまでもなくあっさりやられたくせに、「貴様らごときが聖地を侵そうなど百年早いわ、罰当たりめ!」とか「禁域を侵す者に災いあれ!」とか「貧乳とブスのくせに調子に乗るんじゃねえ!」とか好き放題言った挙句に自害して、妹たちを「お姉ちゃん(姉さん)がちゃんとしてないから!」と激怒させていた。

 そして、当然のように八つ当たりされた。

 全くもって理不尽である。



 そこで、死体を土産に公安に確認をとってみたところ、詳細は伏せられたけれど、現在(すめらぎ)が交渉中の組織の構成員だと教えてくれた。

 やはり私は関係無かった。


 それがなぜ妹たちを襲ったのかは分からないけれど、そんな分別のない組織は潰してしまった方がいいのではないだろうか?


 といっても、「皇が交渉中」という条件だけでは組織の特定はできない。

 公安や皇から聞き出すのが手っ取り早いけれど――悪魔に頼んでもよさそうだけれど、その直後に当該組織が消えたとしたら私が疑われるのは間違いない。

 まあ、疑われたからどうということもないけれど、彼らを防波堤にする計画は潰れるかも?

 それは避けたい――というか、彼らが防波堤として機能していない結果がこれなのでは?


 ということは、スケジュール的には彼らを防波堤として機能させることを優先させた方がいいのか?

 それなら、しばらくの間、妹たちに護衛をつけておけばいいか?


◇◇◇


「皇や公安の人を鍛えて、二度とこういうことが起きないように配慮してもらおうと思う」


「お姉ちゃんにしては良い――っていうか常識的な案だと思う」


「姉さんも少しは成長してるんですね……。不覚にも感動してしまいました」


「できればこの手で根絶やしにしてやりたいのだけれど。それはそうと、落ち着くまでの間、ふたりに護衛をつけようかと思うのだけれど」


「……前半は聞かなかったことにするね。それで、護衛って? また湯の川から誰か連れてくるの?」


「……私の感動を返してください。それと、護衛はさすがに大袈裟だと思います」


 私としては、ふたりが安心して日常生活が送れるよう配慮したつもりだったのだけれど、護衛はあまりお気に召さないようだ。

 既に悪魔たちがついているのにね。

 もっとも、今回は「驚異ではない」と判断したのか役に立たなかったけれど、服毒自殺ではなく自爆だったらどうするつもりだったのか。

 まあ、そんなもので被害を受けるようなふたりではないと思うけれど、何事にも例外はあるものだし、対策はしておくべきだと思う。



「ちょっと油断した隙に死なれちゃったのはショックだったけど、実力的には綾小路さんの人たちより少しマシ程度だったと思うし」


「三人で同時に結界を展開して、それが私たちに効かなくて『莫迦な!』とか言ってただけで、実質無害だったんですよ」


「綾小路さんたちが言っていたのだけれど、一番怖いのは『未知』らしいから、全知ではない私たちは可能な限り備えておくべきだと思うよ」


「……お姉ちゃんにそんなこと言われるのは釈然としないけど。だったら、護衛ってどんな人をつけるつもりなの?」


「アドンとサムソンはどうかな? 能力的には問題無いと思うし、影に潜めるから何かあった時に即応可能だよ」


「それって死神ですよね? 何を考えてるんですか、駄目に決まってるでしょう? どこの世界に死神を護衛として連れて歩く人がいるんですか?」


「抑止力にしても、“死”しかないよね」


「“抑”と“力”はどこ行ったんですか」


 む、上手いことを言うではないか。

 とはいえ、私の可愛い妹たちに手を出すような輩にはそれで充分だと思う。



「……お姉ちゃん、そんなことより訊きたいことがあるんだけど」


 直前の緩い感じから一転して、真由が真剣な顔で訊ねてきた。

 なんだかんだで私の忠告が響いたか、別の懸念でもあるのか。

 いずれにしても、妹に頼られたら応えるのがお姉ちゃんである。



「何でも訊いて」


「……お姉ちゃんの領域ってさ、自由自在じゃない? 子供になったり大人になったりもできるんだよね?」


「……! 髪を伸ばしたり、色を変えたりもできると聞きました。実際、どれだけ変えられるんですか?」


 ……?

 話の流れと理由がよく分からないけれど、それは妹たちの期待に応えない理由にはならない。

 それと、領域の展開は禁止されているけれど、再構築までは言及されていない。

 つまり、何も問題は無い。



 ということで、まずは十歳くらいの私に再構築してみる。


「う、ぐう……! か、可愛い……! 可愛すぎて胸が苦しい……! み、水を……!」


「これくらいの年齢の兄さんをほとんど見ていないので、免疫が……! カ、カメラ……!」


 妹たちの精神状態がヤバい。

 なんだか分からないけれど、すごいダメージを受けている。


 仕方ないので、今度は二十歳くらいの私に再構築してみる。



「うごご……! お姉ちゃんがお姉さまに! いや、もう説得力高すぎてマジ女神さま!」


「どのバージョンも違う良さがあって選べないんですけど!? むしろ、これはお得!?」


 こっちもヤバかった。


 結局、何が知りたかったのかは分からないけれど、妹たちの精神状態が不安なので基本形態に戻す。


◇◇◇


「思ってた以上に破壊力高くて取り乱しちゃったけど、あれが領域操作の神髄なのね。希望が湧いてきたわー!」


「更に翼とか尻尾とかを個別に出し入れできるんだよね? 全身は無理でも、一部だけならいけるかも!」


 見慣れた姿に戻ると、妹たちの混乱もすぐに収まった。


 アイリスたちの前でやった時はお持ち帰り――というか、争奪戦になったりと波乱もあった。

 古竜たちも本気ではなかったとはいえ、彼らをおののかせる領域を展開するアイリスの成長は嬉しくもあった――けれど、やはり領域の構築から練習した方がいいかなと思う。



 それはそうと、ふたりは自身の構築に興味があるのだろうか?


 確かに、魔力の認識や運用は良くなっているし、次のステップに移ってもいい頃合いではある。

 しかし、再構築というのはある種の決算のようなもの。

 やり直しも利くとはいえ、今は更なる可能性を求めるべきではないか?


 現状では、リリーのように戦闘能力を主軸にした――あれ? もしかすると、私がやっているのは魔王養成メソッドなのか?

 よくよく考えてみると、みんなには基本とはいえ戦闘技術しか教えていない。

 もちろん、生きるためには力が必要だし、攻撃は最大の防御でもあるから間違ってはいないはずなのだけれど……。

 これからは文化的なものも教えるべきか?



『間違ってたら悪いんだけど、キミたちもしかして、これを変身能力か何かと勘違いしてない?』


「「ギクッ」」


 言葉で「ギクッ」って言う人初めて見た。


 それはそうと、朔には妹たちの考えが分かるの?

 お姉ちゃんを差し置いて?

 ちょっと悔しい。



『夢を壊すつもりはないんだけど――訓練の結果、理想の自分に近づくことはあるかもしれない。でも、領域の再構築で自分自身を盛ったり削ったりっていうのはすごく難しい――ユノでも翼を引っ込めただけでほとんど力が使えなくなるんだ』


「よく分からないけれど、変身したいならそれ専門の魔法とかの方がいいんじゃない?」


 やはり何の話か分からないけれど、妹たちのことで朔に負けてはいけないので口を挟んでみる。



『領域の再構築って、飽くまで自分自身の可能性を最大限活かすためのものなんだ。だから、もしキミたちがユノの肉体を構築できたとして、それを自身の可能性として認識できるかってことになる。恐らくだけど、そこで生まれたズレは魂や精神に深刻なダメージを与えると思う』


 ふたりは私になりたいの?

 目標にされているとかなら嬉しいのだけれど、それでこの結論にはならないはずだ。



「それじゃ、私の――(ゴニョゴニョ)はずっとこのままってこと? 希望は無いの!?」


「理想の自分に近づけるって、方便や慰めではなくて?」


『……立ち居振る舞いが良くなれば印象も変わるし、肌艶とかは間違いなく良くなるから……』


 妹たちの圧がすごい。


 朔がたじろぐって相当なものだよ?



「……お姉ちゃんの力で人体改造とかできない?」


「それか、魔法的に姉さんの因子を取り込むとか」


 えっ、なぜそんな恐ろしいことを?


 もしかして、目の前で人死にが出たストレスで――いや、襲撃者に変な呪いでも掛けられたのか?

 許すまじ、どこの誰だか知らない人!

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― 新着の感想 ―
子供になれば背も小さくなるから上目遣いになってさらに威力倍増!お姉ちゃんと呼んでみてって裏話もありそうで2度も3度も美味しいモグモグ
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