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自覚の足りない邪神さんは、いつもどこかで迷走しています  作者: デブ(小)
第十六章 邪神さんとデスゲーム
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21 新学期

――ユノ視点――

 夏休みが終わると、また学校生活が始まる。


 クラスメイトの顔ぶれは変わらないけれど、環境や内面が変わっている人もチラホラと見受けられる。

 ひと夏の経験が少年少女を大人に変えたのだろうか。



 例えば、綾小路さんと内藤さんに一条さん。


 さきの講習会で少しだけ成長したのが自信になったのか、それが言動の端々に表れている。


 といっても、多少なりとも「目に見えなくても存在している魔力」についての認識ができたことで、瞑想とか薬に頼らなくても魔力が回復するようになった程度のことで、呼吸の卒業などはまだまだ先の話。


 なお、綾小路さんの適性は、「もしかすると『拡散』かな……? うーん、もう少しヒントになるものがないとよく分からん」と、《鑑定》スキルが限界突破しているアルでも分からなかった。


「拡散するとどうなるんですの?」


 そんなことを訊かれても、私には分からない。

 私としては、綾小路さんの適性――というか資質は「綾小路さん」としか答えられないのだ。


 というか、「拡散」って何だよ。

 ご老公に「懲らしめてやりなさい」って言われて、「はっ」って返事をする人しか思い浮かばないよ。


 とにかく、もう少し自信を持ってもいいような気もするけれど、慢心するよりはマシか。




 対して、若干慢心気味なのが真由とレティシアである。


 湯の川基準での基本もそこそこ身につけて、レベルは低いままだけれどいくつかの魔法やスキルも覚えて、単純なスペックというか可能性では綾小路さんたちよりかなり上だと思う。

 もちろん、「今の段階では」であって、ついでにこっちの世界では魔法や魔術は使えないけれど。


 それに、実戦経験が足りない――本人たちはAWOで経験を積んでいる気になっているけれど、実際に命のやり取りをする場には独特な何かがあるのだと多くの人が言っている。

 私のように特に気にならない方がおかしいのだとか。


 とにかく、大怪我をする前に一度痛い目を見せた方がいいかもしれない。


 機会があれば、最近流行りの「デスゲーム」なるものを開催してみようか。




 それに、団藤くん。


 彼は表向きには「不幸な事故」で家族や親類を喪っていて、普通なら学校に通える状況ではないはずだ。

 そこは公安といろいろな取引があったとは聞いているけれど、私が彼の両親を殺したことなども聞いているはずなのに、復讐心というか負の感情がほとんど窺えない。

 むしろ、精神状態を見るに、非常にポジティブだ。


 どういうことだ……?

 復讐されることも覚悟していたのだけれど……。


 家族との折り合いが悪かったにしても、ここまで割り切れるものなのか。

 そういえば、当日もなぜか踊り始めていたし、どこか壊れているのかも?


 一応、公安の監視もついているようだけれど、私も気をつけて見ていた方がいいのだろうか。




 ほかにも、洗脳の後遺症も特に見られず、以前にもまして輝いている稲葉くんとか、AWOの対人戦大会で好成績を収めた伊藤くんも輝いている。

 姫路さんも何があったのか知らないけれど、キラッキラだ。


 とにかく、人間が成長していく姿は、いつ見てもとても素敵だと思う。

 更なる成長に繋がるなら、多少の面倒事は引受けてもいいかなと思うくらいに。


◇◇◇


 さて、新学期最初のホームルームで、今学期の予定などの説明を受けた。


「引き続き、当校の生徒に相応しい博愛と寛容の精神をもって、御神苗さんの助けになってあげてください」


「「「はい!」」」


 なお、「団藤くんの家の事故」については軽く触れられただけで、その後は日常に戻っている。

 日常すぎて怖い。


 というか、そこは私ではなく団藤くんのフォローをすべきではないだろうか?

 しかし、当の団藤くんも元気よく返事をしていたし……?


 よく分からないけれど、彼に関しては公安の管轄なので、事件が起きるまではスルーしておく。

 ほかのクラスメイトは……よく分からない。

 何か大変なことが起きているのかもしれないけれど、問題を増やすとか大きくしたくはないので、ひとまず知らないふりをしておこう。




 さておき、直近の予定としては、休み明けの試験は無視するとして、球技大会と文化祭がある。

 決まっているのは日程くらいで、まずは試験。

 どうにもならないことなので忘れよう。


 もちろん、頑張って勉強すれば済む話ではあるのだけれど、「日本にいる間しかできないこと」を優先しようとすると、「テストで良い点を取るための勉強」は微妙な感じがする。

 反面、追試代わりに課される屈辱の奉仕活動は、あっちではできない経験だ。

 私を祀る神殿や教会で私が仕事をしていると、そんなに信徒が欲しいのかと誤解されそうだし、絶対にできない。

 私が湯の川で唯一出入りしたくない場所、それが神殿なのだ。



 さておき、学校生活以外にも予定が入ってきている。


 皇や公安から、彼らでは解決が難しい案件に対処してほしいと、かなりの件数の打診があった。

 少し甘やかしすぎたのだろうか……。


 もちろん全て受諾するつもりはなく、本当にどうにもならないものだけをやるつもりだけれど、その選別にも手間が掛かる。

 こういうのは私が思っていた「日本にいる間しかできないこと」とは少し違うのだけれど……。


 過去の迂闊うかつな言動が巡ってきているだけといえばそれまでだし、皇や公安に恩を売っておけば、会社を畳んだ後の諸々で便宜を図ってくれるかもしれない――と思って頑張るしかない。



 ただし、今回はアルの協力は期待できない。


 彼は私を題材にしたゲームの発売予定日が迫る中、あれやこれやで手一杯なのだ。

 ある意味、彼も過去の自身の発言で追い詰められているのだ。



 もっとも、開発やデバッグなどの作業は多くの悪魔たちの協力もあって終わっていて、今は更なるクオリティアップを目指してなんやかんやしている。

 それには「神族や悪魔の過剰な期待にプレッシャーを感じて」という理由もあるようだけれど、一番は「最高の物を作りたい」というクリエイター魂――若しくは沼だろうか。


 私もクリエイターなので気持ちは分かるけれど、創作物に完璧さを求めるといつまで経っても完成しないので、適当なところで見切るか妥協することが重要なのだ。

 とはいえ、その過程は自身の限界に挑むようなものなので、こんな些事で邪魔するようなことは避けたい。




 なので、時間に余裕のあるうちにデスゲームの手配をしておこうと思う。



 ちなみに、「デスゲーム」とは、参加者を特殊な環境において、主催者の指定するゲームをさせるものらしい。

 もちろん、“デス”という単語が入っていることからも分かるように、参加者が命を落とすこともある。


 というか、参加者の死に様や葛藤を観たいがために企画する主催者もいるそうだ。

 あまり良い趣味とはいえないけれど、人の必死に生きようとする姿や、根源的な観点からすると無自覚に「死」に惹かれる気持ちも分からなくもない。



 もちろん、ゲーム感覚で妹たちを殺すつもりは毛頭ない。

 本当に命を落としてしまう前に何かを感じてほしいだけだ。



 ただ、あちこちで、しかも大量に殺している私がそんなことを言っても説得力が無い。

 人間だけに限らなければ百万単位らしいし。


 そんな私が、「命は尊いものだよ」などと語ったところで誰に響くというのか。

 少し視点を変えると「命よりも大切なものがある」ことも分かってもらえると思うのだけれど、それも階梯を上げてからの話であって、現段階では言い訳にしかならない。

 それも、そんなことは関係無くとか「うっかり」で殺していたことがバレると言い訳にもならなくなるけれど。

 難しいものだね。


 でもね、過ちは誰にでもあるもので、私は当然として、神や悪魔を自称する存在だって間違えるのだ。

 だからといって開き直るのは論外で、私に限らず、奪ってしまった可能性を無駄にしないように努力するしかないのだと思う。


 ……何の話だったか?


 そうだ、ゲームの話……だった気がする。

 忙しくなるとできなくなるし、今のうちにログインしておこうか。

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