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05 パンクチュアリ

 鋼鉄の町パンクチュアリ。


 ドワーフの町アナグラと似ているようで、違うところも結構多い。


 まず、金属の種類が豊富。

 といっても、ファンタジー的な純金属ではなくて、鋼とかステンレスとかの合金のようだ。

 もちろん、私に目視で判断できる物ではないので、朔先生による分析である。

 というか、今まで「磁石が付くのが鉄で、付かないのがステンレスとかチタンとか」だと思っていたのだけれど、磁石が付くステンレスもあるそうなので分類不可能になった。


 とにかく、ここでは先史文明の知識と遺産があったことと、一時的に魔物が減っている間に資源採取が効率よく行えたことが文明の下地になっているのだろうか。




 町並みは基本的に鉄。


 露出部はほぼステンレスのようだけれど、錆が目立つ――ステンレスは錆びにくいだけで、錆びないわけではないらしい。

 これまた勉強になったけれど、ダルマのようになっている襲撃者さんに教えられたのが納得いかない感じ。



 さて、鉄ではないのは道路くらいだけれど、人も物も重量がありすぎるからか耐久性が高いコンクリート舗装で、それでもあちこちが破損している。

 ちなみに、主な破損原因は、通行者の重量過多もあるけれど、滑りやすくなる雨の日に転倒したり、アクセルとブレーキを踏み間違えたりだそうだ。

 交通標語は、「赤信号? ホバーは急に止まれない」「道路を横断する時は、左右をよく確認して、クイックブースト起動」「ヘルメットがなければ即死だった」などなど。


 あまり真面目に相手をしない方がいい人たちだというのは分かった。



 住居はトレーラーハウスっぽいのが主流。

 ただ、町中はともかく、外は酷い荒れ地なせいか牽引車は少なく、移動させる際には巨大ロボットを使う。

 むしろ、住居がロボットに変形して自力で移動する構想もあったとか。

 しかし、変形機構の強度等が魔法を使っても解決できず、何らかのブレイクスルーが起きるまでは凍結することになったそうだ。



 私たちは、その試作品をお肉と交換で入手した。


 というか、最初は余所者に警戒していた住民たちだけれど、私たちが夕食の準備を始めると、その匂いに釣られてやって来て、お肉欲しさにいろいろ差し出してくるようになった。


 使用用途が分からない物を貰っても困るのだけれど、「新鮮な肉だー!」「fresh(新鮮)! fresh(新鮮)! flesh()!」「夏の扉が……開く!」などと喜んでいる人を追い払うこともできない。

 小さい子供もいると余計にね。

 下手をすると、その子供まで差し出しそうな雰囲気だったしね。



 しかし、私には用途不明でも、襲撃者さんたちを分解していた中で構造や機能を理解していた古竜たちには思いのほか好評で、いい玩具になっているようだ。

 というか、人間たちにはできなかった「ブレイクスルー」を自分たちの手で起こしたいみたい。

 竜の感性というかツボはよく分からない。




 さておき、竜たちが私のお酒と機械に夢中になっている間に、主神に頼まれていた遺跡調査に向かうことにする。


 もう「明日にしてもいいかな?」という時間だけれど、お酒が入った古竜たちの相手はいつも以上に面倒なので、ていのいい離脱理由である。



 もっとも、調査といっても、私や朔には機械のことはよく分からない。


『え、一緒にしないでくれる?』


 ……分からないのは私だけか?

 いや、それなら、私が機械の操作に苦戦している時にアドバイスをくれてもいいのでは?



『困ってるユノを見るのも好きなんだ』


 ……。

 そうか、だったら仕方がない。




 とにかく、そういうことなので、解説役として「パンクチュアリの長老」とかいうロボットに案内してもらう。


 ちなみに、この長老ロボの名称は【イーロン】というそうだ。

 もちろん、現実の地名や人名とは関係無い。


 なお、兄弟機である【アーロン】と【ウーロン】には先立たれたそうで、今は姉妹機の【エローン】とともに人間たちの管理をしているらしい。


 ちょっとツッコミどころが多くて追いつかなかった。



 気を取り直して施設内の見学をさせてもらったけれど、ロボットの製造施設はまだ稼働しているものの、その規模はかなり小さく、また対神兵器の製造ラインは存在しない。

 それは先史文明大戦でも初期に陥落した地域と考えれば当然か。



 なので、一応主神にも判断をしてもらった上でスルーすることに。

 ロボットのラインを止めると、ロボットで作っている食料とかも駄目になるし、そうすると人間も死んでしまうし、無難な判断なのだろう。


◇◇◇


「何を言うとる。機体色は銀が基本じゃろう。腐食や錆にも強く、魔力伝導率も良い。何より、ユノとお揃いで美しいじゃろうが」


「莫迦か、貴様は。機体色は青が基本。何なら星だって青い。それに、よく言うだろう? 『青き清浄なる世界のために』とな」


「いや、ユノと一緒というなら黒だろう。というか、黒はいいぞ。何がいいかというとだな、やはり格好いい。ユノの黒は特に格好いい」


「やっぱり黒は莫迦だな。僕は幼馴染だから知ってるけど、ユノの色は厳密には黒じゃないんだ。いろんな色が混じってる――だから黄色でもいいんだ!」


「貴様は人を莫迦にする前に、貴様が加工したパーツが重すぎるのをどうにかしろ。摺動部しゅうどうぶは強度的に仕方ないが、重すぎて高度も速度も出せんではないか! それと、ユノ様に似合う色は情熱の赤! つまり、機体色は赤が相応しい!」


「莫迦は貴方よ、赤。ユノに似合うのは無垢なる白。レオンも言っていたわ。『主役機は白が基本だ』って。それと、赤は火力だけで押し通そうとするのは止めなさい。こうが莫迦なのは仕方ないけれど、それを火力だけで解決しようとされると、せっかくの私の冷却も駄目にされるのよ」


 一時間くらいしか席を外していないのに、戻ってきたら喧嘩が始まっていた。



「「「ユノはどう思う!?」」」


 知らん。



『別に単色じゃなくてもいいんじゃない? むしろ、単色だと全体的にボケちゃうから、メリハリ付けるとか――こんな感じで』


 なぜか朔まで参戦した。



「さすが朔じゃな。このような資料まで持っておるとは。つまり、銀なら5枚ということでいいのじゃな?」


「なるほど。赤はリーダーの証。そして3倍なのか。何が3倍なのかは分からんが――まさか、貢献ポイントか!?」


「ふうん。やっぱりレオンが言ったとおり、主人公機は白がベースじゃない。それで、白には何の特典がつくのかしら?」


「よく見ろ。その歳で白内障なのか? ほら、青も多いだろう。だが、私は年長者なのでな、我儘を通そうとは思わん。それで、ポイントが高いのはどれだ?」


「黒も多いし、格好いいと思うが、そうだな。ポイントが懸かっているなら争っている場合ではないな」


「黄色はカレー? つまり、黄色は彼――理解ある彼ってこと!? 僕のことじゃないか!」


 なんだか変な方向へ話がズレて行っている。

 古竜の考えていることはよく分からない……。



「お困りのようですね。これをどうぞ」


 話の流れが分からず困惑していた私に、イーロンが電子レンジくらいのサイズの箱を手渡してきた。



「これは?」


「変形機構等の制御補助用コアユニットです。良きロボットをお造りください」


 ……そういう話の流れだったのだろうか?



「その代わりにというわけではありませんが、同じ物を、ここより南西にある【特別区】に届けてください」


 あれえ? そんな話だったかな?



「うむ、よいじゃろう。それと、話は変わるのじゃが、ロボット用のパーツはこれだけか?」


「パンクチュアリでは実用性や機能性を追求した物がメインになっておりまして、装飾性の高いパーツは南西の【ニューヨー区】が有名です。パンクチュアリと特別区のちょうど中間くらいにありますので、立ち寄られてみてはいかがでしょう」


「ふっ、次の行き先は決まったみたいだな」


「ええ、これで私たちのロボット造りが一歩前進するのね」


 喧嘩をしていたのではなかったの?

 さっきまでの、割と本気でギスギスしていた雰囲気はどこに行ったの?



「ええと、一体どういう流れになっているの?」


 本当にわけが分からないので、思いきって尋ねてみた。



「流れも何も、ロボットを造るのだろう? それを湯の川に持ち帰れば、また一段と発展するのは間違いない」


「町が豊かになれば、それだけ組織との戦いも楽になる。やらない理由は無いだろう」


「それに、いつか大吟城も変形してロボットになるかもしれない――なんとも夢がある話じゃないか!」


 分からない……。



『休暇にプラモデルでも作っているとでも考えればいいんじゃない?』


 そんなものなのか……?


 まあ、いいか。


 確かに、町のドワーフたちの刺激になるかもしれないしね。

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