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自覚の足りない邪神さんは、いつもどこかで迷走しています  作者: デブ(小)
第十三章 邪神さんと変わりゆく世界
458/725

25 転換点

 5日目。


 例年どおりなら、中弛(なかだる)みして戦闘も落ち着く時期らしい。


 しかし、今年は参加者も多く士気も高いためか、いまだにあちこちで激しい戦闘が起きている。


 さらに、その熱気に中てられた参加登録をしていない学生や、原状回復作業等を請負って現場入りしているはずのハンターさんたちの、作業の水増し目的かと思われる乱入が後を絶たないため、現場は非常に混沌としている。


 その対応に、リディアたち監督官も大忙しである。

 というか、手が足りないので手伝ってほしいと要請が来た。


 それを言いに来たリディアがとても嬉しそうだったので、まだ余裕はありそうだけれど。




 それはひとまず棚上げして、まずは学長先生の許を訪ねる。


 アルから何を聞かされたのかをそれとなく探るためと、クリスマス会場を確保するためである。


 参加者が少数であれば寮の部屋でも充分なのだけれど、ルナさんチームとリディア、エカテリーナで7人。さらに、アイリスとコレットを含めると9人。

 みんなが満足できるだけの料理を並べると――みんな私や湯の川の料理だと限界に挑戦するので、寮の部屋だと手狭になると思う。


 そもそも、男子禁制の女子寮だとキリクは入れない。

 さすがに、そこそこ功労者の彼抜きでというのも可哀そうすぎる。


 なので、学園の講堂なり小さめの訓練場なんかを借りられないかと相談するつもりだ。




 さて、学長先生は学長室にいた。


 何とも妥当な居場所である。



 ひとまず、礼儀として控え目にノックしてみたのだけれど、返事がない。

 中にいるのは分かっているのだけれど、居留守――というより、集中していて気づいていないようだ。



 ちなみに、紙が貴重品である魔界では、報告書は簡単な魔法を使って作成されることが多い。

 報告の内容にもよるけれど、術式が極めて単純で瘴気の発生する余地もなく、日用には適さない粗悪な魔石を使って作成・保存できる上に、保守性が高く暗号化なども容易らしい。

 もっとも、紙など、使ったことどころか見たこともないような魔界の人たちには、後者の実感など無いようだけれど。


 なお、魔石記録の唯一の欠点は、一見しただけではほかの魔石と区別がつきにくいこと。

 それと、内容も外観からでは判別できないこと――あ、それだとふたつか。


 とにかく、何にでもメリットデメリットが存在するということだろう。




 さておき、学長先生の様子から察するに、どうやら報告書の作成に難航しているようだ。


 まあ、あの狂気を言語化するのは、誰だって難しいだろう。

 少なくとも、私にはできそうな気がしない。



 とにかく、下手に邪魔をして心証を悪くするのは避けたいけれど、出直したところで解決している保証が無い。

 というか、論理性とか整合性などが完璧でないと満足できない、デキる人特有のあれなのかもしれないし。

 あれにそんなものが通用するはずがないのに。



 もう一度ノックして、やはり返事は無かったけれど、「失礼します」と控え目に宣言して入室する。


 私の入室から一拍おいて、思考の渦から解放された学長先生が、私を認識すると慌てて書きかけの報告書を破棄した。


 特に見られて困るものは無かったはず――いや、ある意味立派な怪文書だったので、誤解を招くと思ったのかもしれない。



「申し訳ありません。お仕事の邪魔をしてしまったでしょうか」


 ある程度の事情を知っている私は気にしないけれど、それを明かすわけにはいかない。

 なので、客観的な状況としては、「邪魔」以外には見えないため、白々しく謝罪しておく。


 下手な相手だと付け込まれる行為だけれど、学長先生ならその心配は無いだろう。

 それに、この程度の失点なら挽回するのも簡単だし。



「い、いや。どうせ行き詰まっていたところだ。ユノ君が気にする必要は無い。それよりどうしたのかね? 君がひとりで私を訪ねてくるのは珍しいが」


「少し先生にご相談したいことがありまして――と、その前に、随分とお疲れのようですので、お茶でもお淹れしましょうか」


「う、うむ。ちょうど気分転換をしたかったところなのだ。有り難く頂戴しよう」


 学長先生は平静を装っているけれど、私には彼の魂が認識できる――超が付くほど躍動しているので、浮かれているのが一目瞭然だ。

 いや、本当に簡単だったけれど、そこまで喜ぶようなものだろうか。




「お待たせいたしました」


 お茶は学長室にあった(よく分からない葉っぱ)で、お茶請けは特別に料理魔法を使って、気を遣われない程度に簡素な物を出した。



「う、うむ。ありがとう」


 学長先生は平静を装おうとしているけれど、口角が上がるのを抑えられていない。

 そして、魂は踊りだしている。

 ヤバいハーブか何かだったのだろうか?



「――ふぅ。いつもと変わらぬ茶のはずだが、今日は格別な味わいがする。やはり、君が淹れてくれたからだろうか」


 学長先生は淹れたてのお茶の香りをひと頻り楽しむと、ひと口、またひと口とじっくりと味わいながらもほぼひと息で飲み干し、大きく息を吐いた。

 感想については恐らく正解。


 茶葉は控え目にいってゴミだったし、淹れ方も適当だけれど、こっそり気休め程度に「美味しくな~れ」とお呪いをしているので、そうなるのも当然である。

 ヤバいハーブなら、その効果も増幅させていたのかもしれない。

 もちろん、私のお呪いがかかっているので、健康に良いものになっているはずだけれど。


 それか、ただの社交辞令か。



「よほどお疲れだったのでしょう。先生にしかできない仕事があることは理解しているつもりですけれど、お身体を壊されては元も子もありません。くれぐれもご自愛ください」


 素直な称賛か社交辞令かは分からないけれど、どちらにしても上手い返しが思いつかなかったので、お代わりを注ぎながら、体調を気遣う(てい)の社交辞令で返す。



「気遣い感謝する。だが、私以外に適任がおらぬ以上、多少の無理はやむを得んのだよ。まったく、少しは君のように年寄りを労わってほしいものだ」


 もう少し社交辞令を続けようかとも考えたけれど、あまり時間を奪っても悪いので、にっこり笑って誤魔化して切りあげることにする。




 学長先生もそんな空気を察したか、居住まいを正して私と向き合う。


「ママ、いや、ゴホン。ところで、相談があるということだったが、何か問題でも起きたのかね?」


 む、相談を問題と勘違いされたか。

 学長先生の私に対する態度は軟化したものの、私がトラブルメーカーだという認識は変わっていないのかもしれない。



「問題ではないのですけれど、できれば学園内の施設を少しの間お借りできないかと思いまして」


「ふむ。目的を訊いてもいいかね?」


 ノータイムで質問が返ってきた。


 まあ、理由も明かさずに貸してもらえるはずもないか。

 みんなの集中力を殺ぐようなことはしたくないので、できればサプライズでやりたかったのと、必要なこととはいえ学長先生に知られると、何だかんだと理由をつけて学長先生やルイスさんたちまでやってくるかもしれないので避けたいのだけれど。

 いや、学長先生はきっと来るし、彼の保身のためにルイスさんたちにも伝わるのも間違いない。

 下手をするとトライさんとかも来るのではないだろうか。


 そうなると、若者たちだけのお気楽な会ではなくなってしまう。


 できれば何も訊かずに貸してもらえると有り難かったのだけれど、お偉いさんたちの相手は私の方で引受けるしかないか。


 一応、こうなることも予想していたので、学外の施設を借りることも考えたけれど、私がこの時期に頻繁に学外に出るのは問題がある。

 それに、アリバイだ何だと考えると、あまり分体を使うこともできない。

 なので、やはり学内の方が都合が良いという結論に落ち着いた。



「戦挙を戦っている皆さんは元より、リディアやコレットは戦挙管理に、アイリスも魔除――陶芸をと、皆さんが頑張っている中で私だけが何もしておりませんので、せめて皆さんを労う場を作れないかと思いまして」


「ふむ。君が何もしていないなどということはないと思うが……」


 学長先生の雰囲気が変わった。

 何やら意味ありげな視線を私に向けてくるけれど、彼の作りかけの報告書を覗き見た限りでは、アルと私を結びつけるような記述は無かった。

 精々、薄々気づいているけれど、証拠が無いといったところだろうか。


 そうなると、これはやはり「私も参加したい」と訴えかけているのだろうか。

 仕方がないなあ。



「先生もご都合がよろしければ是非」


「ほ、ほう。いいのかね? 若い者だけの場に、私のような年寄りが参加しても?」


「もちろんですよ。先生もご存じのとおり、私にはいろいろと事情がありますから、自発的な行動に制限を設けています。その分、頑張っている人を見守ったり応援するのが好きなのですけれど、先生もそのおひとりですから」


 これに関しては嘘は無い。


 学長先生は、特にルイスさんに叱責されて以降、何だか憑き物が落ちたように精力的に、活き活きと職務をこなしている。

 ルナさんたちの若さに任せた輝きと比べると地味で、アルやアイリスと比べると狂気が足りないけれど、立場相応に頑張っている。

 お互いの立場的に、あまり堂々とはしてあげられないけれど、心の中で応援している。



「ほ、ほほう。では、お言葉に甘えて、顔を出せるよう予定を調整するとしよう」


「ただ、先生のお立場では難しいかと思うのですけれど、皆さんの集中力を殺がないためにも、このことは可能な限り他言無用でお願いします。それと、先生の仰られたような側面もありますし、準備は私ひとりですので、お連れ様は少なめにしていただければと」


 とはいえ、こちらも本音である。


 何といっても、今回の主役はルナさんたちなのだ。

 まあ、アルの方の状況次第では正体を隠す必要も無くなるし、分体を使って労ってあげてもいいのだけれど、どちらにしても先生ならそこは察してくれるだろう。



「うむ。心得た!」


 おっと、本当に心得てくれたのか心配になるくらいに覇気の籠った返事だ。



「もちろん、先生なら大事なことを間違えるようなことはないと思っています。けれど、ご家族に勘違いされて恨まれたりするのは私も御免被りますので、そちらへの配慮も忘れずにお願いいたしますね」


「う、うむ。心得ているとも……」


 こう言っておけば牽制になるだろうか。

 クリスマスは家族や大切な人と過ごす日なので、私にばかり(かま)けてもらっても困る。


 まあ、あまり牽制しすぎてやる気や気分を損ねられても困るし、こんなところでいいだろう――いや、心なしかテンションが下がったようにも見えるし、少しフォローしておくべきか?


 もっとも、精神面はフォローできないので、料理魔法による肉体面か、アル対策の頭脳面かになるけれど。



「それと、適材適所といいますか、人には向き不向きがありますので、先生が全てを背負ってお悩みになる必要は無いかと思います。先生以外に適任がいないというのであれば、新たに人材を育てるしかないのでは――と、出すぎたまねでしたでしょうか」


 結局、後者を選択したのだけれど、アル対策というのは私にも――きっと誰だって難しい。


 もちろん、自力で突破できるならそれに越したことはないのだけれど、時間的猶予との兼ね合いを考えると、分からないところはスルーするのも止むを得ない。

 とはいえ、さすがに「考えるだけ無駄」とは言えないので、深く考えすぎないようにとのアドバイスに止まったけれど。



「だが、そうは言っても――いや、そうだな。私の能力では、理論体系すら明らかになっていないものを、意地だけで解明することはできん。そもそも、君の言うように、私の本来の仕事は人を育てることだったな。なるほど。解析だけではなく、人材育成も同時に行わなければならないということか――まさか、彼もそういうつもりで子供を使っていたのか!? 確かに、経験や知識が役に立たないあそこでは、固定観念に囚われていない子供の方が順応しやすいだろう。それに、あそこでは子供ならではの自由な発想の方が役に立つかもしれん。普通に考えれば、常識も分別ある大人が、養殖までならともかく、あのような悪意と幼稚性に満ちた繁殖法を思いつき、あまつさえ実行するはずがない! つまり、私たちは若者たちが自由にやれる場を用意すればいいと――ただ強さだけを追い求める時代は終わったのだということなのか!? なるほど、老兵は死なず、ただ消えゆくのみということか! ならば、陛下への報告もそれを軸に――いや、先に私たちには理解できないことを理解させて、それから人材育成の重要性を説くべきだろうか……?」


 学長先生が超早口で呟き始めた。

 その中でアルがディスられていたような気もするけれど、どちらかというと、そんな狂気に頼らなければいけない魔界の方が問題だと思う。



「あの、先生……?」


 それはそれとして、まだ許可が貰えていないので、自分の世界に入り込まれるのは困る。



「そうすると……ん? ああ、すまない。施設の使用許可の件だったね。では、第三実験場の使用を許可しよう。寮や校舎からは遠くて少々不便な場所にあるが、独立しているあそこなら戦挙の影響も受けにくいだろうし、防音や防爆性能も充実している。まあ、少々広すぎるかもしれんが、狭いよりはいいだろう」


「はい、ありがとうございます」


 よし、許可ゲット。

 しかし、防音はともかく防爆は必要無いと思うのだけれど、あって困るものでも、贅沢をいえる立場でもないので、気にしないことにする。



「鍵は――これか。保安上の問題もあって本来なら貸出しはできないのだが、ママ――んっ、ゴホン。あー、君ならば問題は無いだろう。終わった後に返しに来てくれればいい。それと、使用料は私の方で負担するので気にしなくていい。なに、労う対象にリディアも入っているのだろう? あの子の祖父としての礼だとでも思っておいてくれればいい」


 鍵もゲット。

 使用料もタダにしてもらったけれど、タダより高い物はないことは理解しているので、無駄に喜んだりはしない。

 とはいえ、現金のほとんどをアルに預けているので、有り難いのも事実。


 まあ、学長先生の分の料理や、ご家族へのお土産を作っておけばいいだろう。



「重ね重ねありがとうございます。では、私は早速準備に掛かりたいと思います。先生も、あまり無理をなさいませんよう」


「うむ。君の方は問題無いとは思うが、何かあれば相談にきたまえ」


「はい。では、失礼いたします」


 必要なものは手に入ったので、慇懃(いんぎん)に礼をして退室する。



 これで後は、戦挙監督の手伝いを引受けてアリバイとするだけだ。

 アリバイさえあれば多少強引なことをしても誤魔化しが利く。

 我ながらナイスなアイデアだと思う。


◇◇◇


――ルシオ視点――

 アルフォンス・B・グレイの活動の裏に、彼女が関与しているのはまず間違いない。


 もっとも、それを証明する物証は無く、強いていえば、彼の研究と彼女の魔法が共に理解不能であるという点のみ。



 両者を知る者であれば、直に体験すれば間違いなく私の抱いている印象を共有できると思うのだが、陛下を始めとしたお歴々に直に体験させるためには、それなりの理由が必要になる。

 とりあえず行ってみろ――でいいなら、私がいる意味が無いのだ。



 だが、どれだけ考えても、あれを論理的に説明できる気がしない。


 固有能力でない以上、私たちでの再現も可能であるはずなのだが、それすらもどう説明したものか。

 原理はおろか、系統すら分からんようでは、完全にお手上げである。


 かといって、孫娘のように、恥を忍んで「オッスオッス」するには、私は背負っているものが重すぎる。

 むしろ、これまでの功績が邪魔をして、善意の措置入院を命じられることもあり得る。

 いっそ、彼自身に出向いてもらえれば助かるのだが、彼にもほかにやるべきことがあるらしく、また、あまり時間も残されていないらしいので無理は言えない。




 そうやって頭を悩ませていた私の側に、いつの間にかママが立っていた。

 不甲斐ない子供わたしを叱咤しに来たのかと思ったが――むしろ、「貴方はやればできる子」と叱咤激励(よしよし)してほしかったのだが、どうやらそうではないらしい。


 ママは、私に頼みごとがあるなどと(うそぶ)きながら、私の身を案じてくれている。


 ふふ、私が困っているときには必ず助けに来てくれる、優しい方だ。




 ママの淹れてくれた太陽より温かいお茶が、私の疲れ果てていた身体にスーッと染み渡り、蜜より甘い労いの言葉が折れかけていた心にグッサリ染み渡る。

 これが甘露というものか。


 疲労と共に、私を縛りつけていた何かが溶けていくような気がする。

 もう何も怖くない。




 ママのおかげで、この難題にも光が見えた。


 私に足りなかったものは、分からないものを「分からない」と認める勇気だった。

 そもそも、どうにか私に理解できたとしても、それが陛下たちにも理解できるかは別問題で、ここで時間を浪費しても大した意味は無いのだ。


 それならば、潔く理解不能だったと陛下たちに伝えて、彼らにも理解できないことを前提にとした視察になることを了承させた方がよいのではないか。

 これからは、若者とゴブリンの時代になるのだと。



 ひとまず、彼の言う事業継承を優先しつつデータの収集を行い、それを基に論理の構築と人材の育成を行おう。


 先ほどまでの私は、「頭脳労働は私の担当だ」という意識が強すぎたのだろう。

 冷静に考えれば、これで充分――とまではいえなくとも、最低限の役割は果たしている。


 さすがママだ。

 私が余計な重圧で潰れてしまわないよう気にかけてくれた。

 その上、ご褒美まで用意してくれるというのだ。


 もっとも、リディアやグレモリー君たちのついでという形だが、私もあの娘たちがこたびの主役であることは理解しているし、異存はない。

 そんな場においても、私たちの努力も労ってあげたいという気持ちが嬉しいのだ!

 うおおおお! ママァ!



 ……正直なところ、いい歳をした大人が、孫ほどの年齢の少女を「ママ」だと思い慕っているのは気持ち悪いにもほどがある――事情を知らない者から見れば、間違いなく病気だと思うだろう。

 私もその自覚があるがゆえに、人前ではそんな素振りは見せないように気をつけてはいるが、彼女を目の前にするとどうにも気が緩んでしまうのか、素が出てしまいそうになる。

 全てを優しく包み込むような、彼女の母性がそうさせているのだろうか。



 そうだな。


 この仕事が終われば、学長の座も、ご意見番の立場も、全て後進に任せて隠居するのもいいかもしれない。

 少し寂しい気もするが、ずっと魔界のためにと走り続けてきただけの私の手は、振り返ってみれば、驚くほど何も掴めていない。


 無論、私のような男が、妻や孫娘のような掛け替えのない宝を授かれただけでも幸運だということは理解している。

 しかし、能力が足りないというだけで切捨ててしまった息子や教え子たちに、もっと相応しい道を示せなかったのかと、今更ながらに後悔の念に襲われる。


 何のことはない。

 能力が足りなかったのは、私も同じだったのだ。


 だが、今の私なら――いや、今からでも遅くはない。



 失ったものを取り戻すのは簡単ではないが、一からやり直すのも悪くはない。


 差し当たっては、ママの息子になるところから始めようか。


 ママ、見ててね。

 ぼく頑張るから!

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