17 異世界式リン作
――ユノ視点――
特に大きな出来事もなく月日は流れて、暦は12月になった。
魔界の冬は厳しい。
もちろん、私は気温なんかに負けたりしないけれど、視覚的にきつい。
とにかく、ただでさえ日照時間が短いところに、若干とはいえ瘴気が日光を遮るので、余計に気温が上がらない。
なぜ雨風は通さないのに日光は遮るのか。
解せぬ。
元々降雨量が少ない地域なのでそれほど雪が降ったりはしないのだけれど、何もかもが凍りついているようで、とにかく寒い――というか、冷たい。
所々で、冬眠に失敗した人が凍っていたりするくらい。
なお、春になって解凍されると、冬眠明けの人のご飯になるらしい。
魔界流SDGsとでもいうのだろうか。
怖い。
温度計のようなものは無いので正確な気温は分からないけれど、氷が解ける様子が一向にないことから最高気温が氷点下を上回っていることはなさそうで、最低気温はさっぱり分からない。
バナナで釘が打てるか試してみたいところだけれど、下手にバナナを見せたりすると暴動が起きるかもしれないので自重する。
さておき、魔界の諸事情により、冬服のような贅沢な物は王侯貴族くらいしか持っていない。
とりあえず、身に着けられるものは何でも身に着けて寒さを緩和させるくらいしかなく、時として衣服を求めての略奪や、被害者を衣服にするための殺人が起きる。
追い打ちをかけるかのように、風もかなり強いせいで体感温度はさらに低い。
それに対する暖房は、石炭ストーブと、それで温めた温石が主で、後は気合。
魔法的手段による防寒は瘴気対策のため原則禁止で、町を出ればその規制も解除されるけれど、町の外の方が環境が悪いため、そうまでして魔法を使うメリットは特にない。
とまあ、このような環境では、外界に過剰なくらいの希望を抱くのも無理はないように思える。
酷い環境だと思っていた春や夏はまだまだ序の口だった。
冬は始まったばかりなのに、既に何かが終わっている感が漂っている。
悪魔族の能力や耐性は生まれつき高いそうだし、魔界の現状は彼らの精神面の問題かと思っていたけれど、さすがに評価を改める必要がありそうだ。
少しだけ優しくしてあげようかと思う。
魔界の環境や季節がどうあれ、私は暑さ寒さどころか、瘴気や空気の有無にも強いので問題は無い。
アイリスも、私と朔が贈った誕生日プレゼントを手にして、「ユノの愛に包まれているので大丈夫です」と、大丈夫なのかそうでないのか分からないことを言う。
まあ、肉体的には大丈夫そうなので、精神的なケアを欠かさなければ大丈夫だと思う。
しかし、私たちは特例のようなものなので参考にはならず、本来この環境は、ルナさんやジュディスさんといった魔界生まれ魔界育ちの人でも厳しいらしい。
それでも、今年の魔界村周辺については少々事情が異なっている。
今年の冬の流行は蓑である。
最近、魔界村のあちこちで蓑を着ている人を目にするようになった。
ちなみに、蓑とは、稲藁などを材料とした日本古来の雨具のことである。
大戦中、これを見たアメリカ軍が偽装服だと勘違いしたなどという話もあるとか。
相手より強いとか頭が良いからといって、正解が出るとは限らないということだろうか。
さておき、これを流行させているのはアルだったりする。
魔界村を中心に、アルは蓑を貧しい人でも買えるような価格で、結構な量を流通させた。
それを弱い人から奪ったり、買占めて転売で利益を得ようとするような外道には、アルに労働力として貸出している魔法少女隊が出動して、蓑どころか身包み剥がしてゴブリンの餌にしている。
前者はともかく、後者は特に犯罪というわけでもないしやりすぎな気もする。
どうにも、彼は「転売」という行為に思うところがあるらしい。
「これからゴブリン養殖を活性化してもらう予定で、弱者層の救済も兼ねてるのを、単なる金儲けの手段として荒らされるのは困るんだよな。その儲けで人を雇うとかしてくれればまた違うんだけど……、最終的な目標達成のためには邪魔なんだよ。だから、心を鬼にして、弱者の――いや、魔界救済のための糧となってもらう。つまり、転売屋は〇ね」
こう言われてしまうと反論できない。
一部私怨のような気もするけれど。
奪った可能性以上のものを示せばいいといったのは私で、これは褒められた内容ではないけれど、その要件を満たしているように思う。
さておき、蓑の話には続きがある。
というか、蓑の入手手段などについては始まってもいない。
「ところで、ゴブリンの生態について、またひとつ明らかになったことがある」
蓑の話のはずなのにゴブリンの話題になった。
嫌な予感しかしない。
「ゴブリンってさ、幼体はそうでもないけど、成体ってみんな腰蓑とか腰布してるじゃん? 養殖されてるのはそうじゃないのもいるけど。まあ、ゴブリンにだって急所を守るっていう知能くらいはあるってことなんだろうけど、人間界みたいに狩れるような動物がいる環境ならまだしも、あいつら魔界だとどこに行っても狩られる立場じゃん? なのに、成体になるといつの間にか腰蓑をつけてる。大人の事情とか知ったことじゃないだろうし、腰蓑の材料になりそうな物も見当たらないのにな。じゃあ何でだろうってなるじゃん? で、観察してみたり実験してみたりしたわけよ。詳細はあれなんで省くけど――あ、アイリス様から貰った魔除けめっちゃ役に立ってる。落ち着いたらお礼するって言っといて」
嫌な予感が確信に変わった。
ちなみに、アルの話の中に出てきた「アイリスの魔除け」とは、ちょっとしたアクシデントで生まれた物だ。
総戦挙準備期間中、破滅的に不器用なアイリスは、特に手伝えることもなく、暇を持て余していた。
一応、私も手伝いをしているのでイチャイチャもできず、彼女にも世間体というものがあるので、高みの見物を決めこむこともできない。
そうして、手持ち無沙汰になっていたアイリスを見兼ねた学長先生が、彼の趣味である陶芸の手解きをしたことに端を発する。
もっとも、破滅的に不器用なアイリスがいきなりまともな壺や茶碗を作れるはずもない。
何度も何度も失敗を繰り返してよ、うやくそれっぽい形になったのが、お皿――というかコースター? にシンプルなスマイルマークが描かれた物だ。
学長先生は言葉も出なかったようだけれど、アイリスにしてみれば快作だったようだ。
まあ、普通に道具が使えない作れない私からしてみれば、できるという点だけでも賞賛に値する。
それで、更に彼女なりに頑張って、いろいろなマジカル工程を経て、いざ焼成――こればかりは熟練者でも焼いてみるまでは分からないという、陶器だけにドキドキする瞬間である。
そうして完成したのは、見ただけで動悸が激しくなるヤバい物だった。
ただの円形の板だった物が、荒々しく歪んで燃え盛る炎のような輪郭になっていた。
さらに、それなりに可愛らしく描かれていたはずのスマイルマークが、リアルな人面――しかも憤怒の表情を浮かべている。
そして、そこにアイリスらしいドロドロとした情念が加わって、大変なことになっている。
そのあまりの迫力は、陶器というより凶器というべきで、《鑑定》結果は「呪具」だった。
ついでに、特殊効果で所有者の体力が減り続けるらしい。
「これは一体どういうことだ……。気持ち悪いくらいに不器用ではあったが、特におかしなところはなかったはず……。だが、ここまで変形しても割れないとは、まるで呪いにでも掛かっているようだ。もしや、アイリス君の属性が関係しているのか――いや、それでは各属性ごとに特色が出るはずだ。それに、光属性や聖属性でこんなに禍々しいものができるとは思えん。というより、纏っているのはほぼ瘴気ではないか。アイリス君、何か特別なスキルを使うか工程を挟んだりしなかったかね?」
学長先生は技術的な知見から、ただの不器用では説明のつかない怪現象を考察していた。
なお、知的好奇心に支配されているだけで、悪意は無いようだ。
「……いえ、私はただ学長先生に教わったとおりに作業をしただけです。あ、ですが、私にとってはいつものことなので特別といえるかは分かりませんが、一応、ユノへの感謝とか、気持ちを込めましたが……」
アイリスも、自身の不器用さは認識していたようだけれど、さすがにこの怪奇現象にはショックを受けたようで落ち込んでいる。
彼女が私のことを想ってくれているのは分かるけれど、ここで「感謝」と聞くと、何が感謝なのか分からなくなりそうだ。
というか、感謝の形が憤怒の相になるというのはどういうこと?
本当は怒っていたりするの?
それとも、これも不器用の一環なの?
不器用というか、武器使用してきそうなのだけれど?
ただ、それが齎した騒動は、ただの怪奇現象では済まなかった。
《固有空間》に収納するのも躊躇われるレベルの、触れると何かが侵されていくような感じがするそれの処分を私がすることになった。
しかし、これは非常に難しい問題である。
いくら危険物であっても、これはアイリスが手作りした物である。
私がまだ中学生だった頃、とあるクラスの女子から、家庭科の実習で作ったというお菓子を渡されたことがあった。
「かっ、勘違いしないでよね! 別にあんたのために作ったんじゃないんだから! ちょっと失敗したから捨てようかと思ったんだけど、あんたが物欲しそうな顔してたから、捨てるよりはマシかなって思っただけだし! 有り難く思いなさい! ま、まあ、要らないっていうなら捨てればいいんじゃないかしら!」
その際に、そんなことを言われてから渡されたので、言われたとおりにごみ箱に捨てたら大層顰蹙を買ったのだ。
今でこそ、手作りの物を目の前で捨てることが失礼なことは分かるけれど、当時の私は言葉の裏が読めない純粋な子供だったのだ。
というか、そんな天邪鬼な言動から「〇〇ちゃんの気持ちが分からないの!?」と繋げられるのはいまだに納得がいかない。
しかも、赤の他人からである。
貴女が○○ちゃんの何を分かっているというのか。
とにかく、「察しろ」と言われても、敵対的というか攻撃的ともいえる彼女の言動から何が読み取れるというのか。
精々、アトラクションの前に書かされる同意書とか、そういう類のものかと類推するくらいだけれど。
有名な「嫌よ嫌よも好きのうち」というのは、犯罪者が口にすると途端にヤバくなるので信じてはいけないのだ。
むしろ、世の中には鈍い人もいるのだという当然のことから目を逸らして無茶な要求をするのは、相手と誠実に向き合っていないということではないだろうか。
もちろん、私が鈍いということではないけれど。
例えば、普通の犬に「飛べ」と命令したからといって、飛行できるわけがないのだ。
この場合、そんな当然のことも分からない命令者側の落ち度であり、命令者の意に沿おうと頑張る犬を責めるのは可哀そうだろう。
そもそも、言葉とは意思を伝えるための道具であって、相手に伝わらなければ意味が無いのだ。
結果として伝わらないのは仕方がないけれど、理解する努力以上に、伝える努力が必要だと思う。
また、これも私が中学生時代の話になるけれど、ある日下駄箱に手紙が入っていたことがあった。
差出人は当時仲良くしていたクラスメイトで、内容を要約すると「男だって知ってるけど好きなんだ。付き合ってほしい。体育館の裏で待ってる」というもの。
当時の私は、“付き合う”という単語の、もうひとつの意味を理解していなかった。
さきの例でいうと、“交際”と表現してくれれば間違いが無かったはずだ。
なので、彼が「男だ~」と前置きして何が好きなのか、何に付き合うのかがよく分からず、「もしかして、ボランティア活動が好きなのかな? それで、体育館裏で一緒に作業でもしようというお誘いかな」などと勘違いした。
そして、それなら生徒会案件だろうと思って目安箱に転送してしまった。
結果、友人をひとり失った。
だって、体育館裏で付き合うことなんて、ボランティアか喧嘩くらいのものだ。
当時の私には妹たちの世話があったので、そんなことで時間を潰す余裕は無かったし、一般的な恋愛感情すら分からないのに、特殊な嗜好に理解が及ぶはずがないのだ。
今でこそ彼には悪いことをしたと思っているけれど、やはり相手が察してくれるだろうなどという甘えで、意思を伝える努力を怠ってはいけないのだ。
趣味嗜好は個人の自由だけれど、それを他人も理解していて当然だと思うのは傲慢というほかなく、些細なことでも相手に伝える努力を怠るべきではない。
それが大切なことならなおさらである。
……はて、何の話だったか?
さておき、それの処分に困った私は、「人手でも物資でも、あるのは何でも欲しい」と言っていたアルに譲ることにした。
「え、何これ。仏様? こっちの世界に仏教ってあったっけ? とにかく、すごい出来じゃん。日本のお寺とかに寄贈したらめっちゃ喜ばれそう。まあ、ヤバそうな気配さえなかったらだけど。……ええ、これアイリス様が作ったの? 呪いが掛かってるレベルの不器用さじゃなかったっけ? は? 円盤にスマイルマークを焼いたらこうなった? 何言ってんだ? それがマジなら不器用っていうか、もう天変地異の前触れレベルじゃん」
本人を前にしていないからだろうか、歯に衣着せぬとはこういうことだろう。
しかし、そうは言いながらも、「案山子にでも括りつけて、害獣とか害虫除けにするわ」と利用法を見つけるあたりはさすがというほかない。
そしてその翌日、アルからアイリスの作った呪具の量産依頼がきた。
何でも、害獣や害虫除けとしては役に立たなかった――正確には効果が強すぎて、肝心の農作物や子供たちと益虫にまで忌避効果が及んだため、即刻使用停止となったらしい。
しかし、その後の被害状況確認の際に、あることに気づいたそうだ。
作物も生物も、恐らく大地までもがダメージを受けていたけれど、周辺の瘴気の濃度も下がっていたそうだ。
瘴気もダメージを受けていたということなのか、マイナスとマイナスをかけるとプラスになるとかそういうことなのか、とにかく、アイリスの才能が魔界の救済に新たな可能性を齎した。
アイリスにこれを伝えて褒めそやしたところ、非常に複雑な表情ながらも量産に着手してくれて、日々奇怪なオブジェクトを生成するようになった。
ただ、アイリスや学長先生の健康状態が心配だったけれど、アイリスには耐性があったようでダメージは無く、学長先生は量産体制に入る直前にルイスさんに呼び出されて魔王城へ出向している。
さて、蓑の生産にゴブリンの話が出てきて、そこにアイリスの魔除けが活躍しているということは、ゴブリンから瘴気が発生するような何かが行われた可能性が否定できない。
「勘の良いユノも好き。それはともかく、要点だけ言うとさ、ゴブリンに充分な栄養を与えて、日光に当てると、鳥の羽鞘とかハリネズミの針みたいな毛が――いや、ゴブリンは植物だから葉っぱか? とにかく、何か生えるんだ。で、それが抜け落ちたのを集めて腰蓑にしてるみたいなんだけど、今回はそれを利用させてもらった」
思ったより普通の飼育だった。
「でも、蓑って本来は雨具なんだ。それを防寒用にするために、ゴブリンの皮を剥いで鞣して裏地にしてるんだよ。悪魔族にとっちゃゴブリンの皮は可食部なんだけど、ほかに代用品も思いつかないしな。一応、皮だけなら回復魔法で再生できないこともない――コスパ悪いけど、とにかく今は数揃えることが重要だしな。それに、悪魔族にとってはいざってときの非常食にもなる」
思った以上だった。
まさか、そういった非人道的行為――ゴブリンに「人道」を適用していいものかは分からないけれど、それで発生した瘴気を中和しているということか?
「それとさ、子供たちの力を借りて普通の農業にも取り組んでるんだけど、輪作にゴブリンを加えたらいろいろと変化があってさ」
やはり後ろめたさがあったのか、いきなり話題を変えてきたけれど、普通とは一体……?
「甜菜の後にゴブリン植えたら甘くなったんで、すり潰して蒸して冷やしてプリン――ゴプリンにしてみたとか、麦の後にゴブリン植えたらホブゴブリン――いや、ホップゴブリンになってたんでビールの原料にしてみたとか。突き抜ける爽快な喉越し。ゴブリンのどごし(生)。まあ、麦からホップは強引すぎると思うんだけど、できたものは仕方ないよな」
分からない。
それは「仕方ない」で済ませてもいいものなの?
それに、主神たちの世界創造は思った以上にヤバいものだったらしい。
設定がガバガバすぎる。
「もちろん、こっちでも稲作に挑戦したんだけど――悠長にやってられる状況じゃないから、魔法で環境を整えて成長速度も加速して、結果は惨敗。まあ、予想はしてたからショックはなかったんだけど、このまま終わるのも面白くないからその後にゴブリン植えたんだ。そしたら妙に白くて艶々したゴブリンが生まれてさ、それをいろいろあれしたらドブロク――ゴブロクができた。今はまだ構想段階だけど、ペニシリンもできるかもしれん」
分かりたくない!
アルとゴブリンの可能性はどこに向かっているの!?
邪魔になったり、変に影響を与えてはいけないと思って離れていた結果がこれである。
とはいえ、焚きつけたのは私だし、ゴブリンを家畜か動く野菜で、その品種改良だと考えれば禁止するほどのことではない。
……本当に?
それでも、さすがに瘴気が発生するほどになるとやりすぎだけれど、可能性という点では及第点。
瘴気がアイリスの魔除けで相殺されるなら、満点に近い?
……よく分からなくなってきた。
ただ、これは主神たちのゴブリン設定の粗――矛盾点などを種子が独自に埋めたところを突いていることで、主神たちの意図したところではないと思う。
というか、こんなことを意図していたのだとすると、今度は主神たちの正気を疑わなければならない。
なので、一応主神たちに「ゴブリンが野菜になりそうなのだけれど」と報告してみたところ、可哀そうなものを見る目で見られた。
詳しい経緯を省いた私にも問題はあるかもしれないけれど、この反応は心外である。
「なるほど、そういうことか。すまなかったね。しかし、ゴブリンか……。単純な魔物や、女性の敵として登場した小説やゲームなんかの影響を強く受けているが、私たちの世界では元々妖精だったんだよ。もちろん、伝承では、だけどね。だが、この世界のはそういうのが混ざって、奇妙な特性を獲得したのか……? どちらにしても、ゴブリンの生態なんて私たちも知らないし、人型の動物を植物と主張するのは厳しい――ドライアドのような種族もいるしな……。何にしても、今更手を加えて妖精にするとか知性を与えても、君のお気に入りの彼に罪悪感を植えつけるとか、精神状況に悪影響を与えるだけだろう。そういうことなので、君の方で上手く処理しておいてくれないかな?」
すぐに謝罪はしてくれたものの、処置は丸投げされた。
追及するんじゃなかった。
私だってゴブリンの生態なんて知らないし、そういった事柄への対処方法も知らない。
頼む相手を間違えている。
「どうせ私たちにも大したことはできないし、同じレベルの対処をするなら、可愛い子がやった方が受けがいいってだけだよ。とにかく、お気に入りの彼への対処も含めて君の裁量に任せるよ。まあ、君なら何だかんだで最悪にはならないだろうし、何もしなくても現状維持さ。そう難しく考えることはないよ」
そんなこと言っちゃうと、本当に経過観察で止めるよ?
というか、貴方たちの創った世界のことなので、貴方がそれでいいなら私にはどうでもいいことだけれど。
とはいえ、問題が出れば私の仕事が増えるのだろうし、これ以上変なことにならないように、朔にシステムの把握を急いでもらうしかないかな。




