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自覚の足りない邪神さんは、いつもどこかで迷走しています  作者: デブ(小)
第十三章 邪神さんと変わりゆく世界
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10 会議の後

 真由とレティシアの日本への一時帰還が、家族会議で決定された。


 ついでに、私も新学期か新年度から日本の高校に通うことになってしまった。


 とはいえ、こちらの世界からあちらの世界へ移動するにはシステムの設定を弄る必要があって、そのための作業や主神たちの承諾なども必要になるため、すぐにというわけにはいかないらしい。

 それでも、遅くても十日くらいで済む作業らしく、日本との時間差も一、二日程度で済むとのこと。

 ただ、妹たちの強固な反対に遭っているため、恐らくは新年度からになりそう。



 なお、母さんには、「忙しいなら子供を預かるよ」と提案したのだけれど、「大丈夫よ」と断られた。

 私としては、子育ては得意分野だと思うのだけれど、母さんはそう思っていない様子。


 私の実績――真由とレティシアの成長に不満でもあるのだろうか?

 解せぬ。


 とはいえ、不満を漏らしても仕方ないので、待っている間にこちらもやるべきことをやっておこう。




 まずは湯の川で、妹たちの健康状態や能力をチェックするため、クリスの研究所まで付き添った。

 一応、私が案内しなくても、その辺りにいるケンタウロスに頼めば乗せていってくれるけれど、尻込みしてしまったようだ。

 ふたりには少し内弁慶気味なところがあるのかもしれない。



 さて、クリス謹製の高度鑑定装置の性能は、元よりとても高かった。

 スキルレベルが8相当と、開示できる情報量こそ低かったものの、その分は失敗したしないよう、正確性を上げるようにと工夫がなされていたらしい。


 そこに、アルや古竜たちからの協力や、湯の川産最高品質賢者の石を動力にするなど改良を加えた結果、対象者のセンシティブな情報まで暴く若干迷惑な物に成り下がった。


 私も詳細は把握していないけれど、身長体重スリーサイズは当然のように、設定次第では、よりセンシティブな情報まで分かるという。


 前者は健康診断とも取れるけれど、後者のそれは必要なのだろうか。

 そういう経験が無い私には分からないので抗議もできないのだけれど、どうにも騙されているような気がする。


 一応、アルが言うには、不倫関係の調査に使えるから必要なのだとか。

 彼は前世において、男女関係で心に深い傷を負ったそうなので、それで過敏になっているのかもしれない。



 さておき、高度鑑定装置はその迷惑な仕様と引き換えに、対象の傷病の有無や健康状態も分かるらしいので、メリットも大きい。

 なので、特に実害は無いし、デメリットについては伏せておくことにする。



 ともあれ、ふたりとも健康状態については、寝不足気味なくらいで特に問題は無し。

 センシティブなところについては、健全の範囲内。


 ということは、私は不健全なのだろうか――と考えていると、アイリスが「ユノはそのままでいてくださいね」とよく分からないフォローをしてくれた。

 まあ、「不健全」という言葉の響きは悪いけれど、睡眠も呼吸も必要無い私には、特に意味の無い評価なのかもしれない。




 さておき、素質については、ふたりともアルやクリスも驚くほどのもので、真由の適性が物理寄りの万能型、レティシアは魔法特化型だそうだ。


 ユニークスキルについてはまだまだ検証が必要とのこと。


 なお、現状分かっている範囲では、真由の《お姉ちゃん召喚》は言葉どおり私を召喚するスキルで、スキルを使用されると彼女の所に行かなくてはいけない気がしてくる。


 アルやクリスが言うには、「どんな盤面でも引っ繰り返せる最強のチート」らしいけれど、私たちにとっては日本にいた時のに日常である。

 一応、この召還はシステム経由なので、上位存在である私は拒否もできるようだけれど、経験上後が怖いので、拒否しない方向でいくしかない。



 《支配者》スキルの効果は複雑で全容までは分からないものの、どうやら生物・非生物問わず、真由のレベル以下のものを支配できるらしい。


 また、アクティブスキルなので能動的に発動しないと効果を発揮しないことや、レベル以外にも成否要件があるらしいことはすぐに分かった。


 一方で、支配できれば何がどうなるのかもよく分かっていないのだけれど、システムの仕様に則るなら、「支配」から想像の及ぶことは何でもできそうな、極めて危険なスキルである。


 まだ真由のレベルが低いため、支配できる対象も少なくろくに検証もできないけれど、気軽に使っていいスキルではないと思う。

 真由なら使い方を間違えることはないと思うけれど、想像が及ばないところで問題が起きることも考えられるので、とりあえずそれについては意識させないように黙しておこう



 レティシアの方もスキルに恵まれていた。


 《魔道》は一般的にも名の知れたレアスキルで、効果や効率など、魔法に関する全ての能力を向上させるものだ。

 ひと言にレアといってもピンキリなのだけれど、「大魔法使い」といわれるセイラが、取得できそうでできないところにその希少性が窺える。


 《フィクサー》については、自身の影響下にある対象の能力を向上させる支援系のスキルで、身分や地位が高く、悪巧みが好きな人の所持率が高いそうだ。

 特に珍しいスキルではないとのことなのだけれど、同様の効果を持つ《軍師》と比べて不人気なのは、スキル名のイメージの差か。


 ただ、もうひとつの《魔素制御》はレア中のレア――というか、有史以来初確認となるスキルだそうだ。

 そもそも、観測することもできない魔素を制御するようなスキルが存在するなど、想定すらしないことだ。


 当の本人ですら、「魔素が制御できるとどうなるんですか?」という感じでは、外野に答えられることなど皆無である。


 なので、今こそお姉ちゃんの出番だと思って、「できると思ったことは大体できるよ」と答えてあげた。


『ユノのは自前で魔素を供給できるのと、その量が膨大だからできる力押しのものだし、レティシアの参考にはならないと思うよ』


 と、すぐさま朔に否定されたけれど。


 若干思うところはあるものの、細かい制御に関しては朔の方が上手だし、いつも手伝ってもらっているので偉そうなことは言えない。

 実際、レティシアの内包している魔素量は、今まで会った人の中では最大だけれど、私や眷属たちと比べられるようなものではないし、それで何ができるのかは私にも分からない。

 少なくとも世界樹や自動販売機のようなものは創れないだろうし、問題が起きても私が隠滅できるだろうし、そう警戒する必要も無いと思うけれど。




 鑑定が終わって自由時間になると、ふたりは帰還の日まで魔法の練習がしたいとのことで、セイラに預ける流れとなった。

 私に声がかからなかったのは残念だけれど、かけられたとしても、私ではシステム経由の魔法が使えないので教えようがない。

 ルナさんたちのようにボコボコにするわけにもいかないし。


 しかし、セイラも快く引き受けてくれたことは有り難いけれど、「任せて! 一年で禁呪まで使えるようにしてみせるわ!」と、少々気合が入りすぎていたのが気がかりだ。


 恐らく、ふたりを鼓舞するための方便だろうし、ふたりもやる気になっていたので水を差すようなことは言わないけれど、程々にお願いしたい。



 なお、剣術の方の師には、かつてアズマ公爵家で用心棒をしていて、現在は神殿騎士をしているランスさんを手配している。

 強さ的にはもっと上の人がいるのだけれど、まだ基本だけなので、ある程度型が綺麗な彼で充分だろう。

 大役を拝命したと喜んでいる彼に、そんな残酷なことは伝えられなかったけれど。




 その後、訓練所に向かうふたりに、「ついてこないで!」と釘を刺されてしまったため、別行動することになってしまった。


 久々に再会したというのに、少し冷たいような気がする。

 本来はもっと喜ぶものではないのだろうか?


 いや、時間の流れも違うそうだし、ふたりにとってはそれほど長く離れていた感覚はないのかもしれない。

 きっと、それ以上に異世界への興味が勝っているだけ……それはフォローになっているのだろうか?



 とにかく、私がお姉ちゃんとしてすべきことは、ふたりのやる気や集中力を殺ぐことではない。

 ふたりの更なる成長を願って、そのための環境を整えることだ。


 ということで、ふたりの練習相手になりそうな人に声をかけつつ、シャロン経由でふたりに相応しい装備や道具の制作を依頼しておいた。

 本当は私が直接練習相手になって、装備もできる範囲で創ってあげたかったのだけれど、妹たちは難しい年頃なので、必要以上に構われるのを嫌うだろう。


 ……はて?

 ふたりに難しくない年頃があっただろうか?


 まあ、いい。


 私は空気の読める系お姉ちゃんとして、ふたりを支えるだけだ(※後日、大量に届けられた装備や道具を見たふたりに、「(おお)ごとにしないで」と怒られ、更に装備制作のためにスリーサイズを公表していたことがバレて激怒されるのだが、それはまた別の話である)。





 とりあえず、私が今のふたりにしてあげられることはそれくらいだ。


 それはアイリスについても同様で、アイリスもふたりを気に懸けてくれていたけれど、彼女にはまだ魔界でやることが残っている。

 それは私の妹たちを理由に投げ出すものではないし、彼女も同じように考えていた。



 ということで、アイリスを連れて魔界に戻る。

 アルも魔界の様子を知りたがっていたので、今回は彼も一緒である。



 魔界での出来事はきちんと状況報告はしているので、アルが魔界に行ったところで新事実が出てくるようなこともないのだけれど、本人もそれは承知の上でのこと。


 現地にいたとしても、闘大総戦挙に介入できるわけでもない。

 当初の約束があるので、最悪に至る前にはアイリスがどうにかするであろうことも理解しているはずだ。

 それでも、じっと待つよりはよかったのだろう。



 もちろん、アルには領地の運営や王国とのあれこれ、湯の川での商品開発の指揮に、日本行きの準備などやることが多い。

 仕事に理解のある奥さんたちとはいえ、いつまでも放置するのもまずいだろう。


 なので、しばらくはあちこち行ったり来たりの生活になるのだけれど、特に魔界については私の協力が必要不可欠になる。

 若干面倒くさいものの、その原因を作ったのが私なことと、ずっと頑張っているアルへのご褒美だと考えれば仕方ないように思えてくる。



 それに、彼がまた魔界の現状を打破するような一手を打つのではないかという期待もある。


 ゴブリンを野菜だと言い張って養殖するような狂気のアイデアはいかがなものかと思うけれど、それでも、魔界の食糧事情を大きく改善したことは間違いないのだ。

 ゴブリンにとっては災難だけれど、共存できない種族間の生存競争の結果――いや、ゴブリンもシステムの犠牲者なのかもしれない。


 せめて、新たな世界樹が創る数多の世界のひとつに、彼らが幸せに生きられる世界が――やっぱり無くてもいいかな。

 人間基準だと害獣だし。


 重要なのは、ゴブリンが生きて紡ぐであろう可能性と、ゴブリンが食べられることで紡がれる可能性の差なのだ。

 ……ゴブリンの可能性ってなんだろう?

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