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自覚の足りない邪神さんは、いつもどこかで迷走しています  作者: デブ(小)
第十一章 邪神さん、魔界でも大躍進
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00 回顧

 創世神話というものは数多くあるけれど、その中で、世界を創ったとされる彼らは、何を想ってそれをなしたのだろうか。


 世界という概念も無いところから、世界を創造する。

 そういう発想に至ること自体が理解し難い。


 そもそも、なぜ自分の外側にそれを求めたのか。

 全知全能なら、自分の内側にある世界で満足というか、自己完結していればいいことである。


 全知でも全能でもないけれど、面白そうだから創ってみたというなら分かる。

 必要以上に干渉するのは分からないけれど。



 さて、世界とは、国とか星とか宇宙といった物理的――いや、表面的なものなのだろうか?

 私としては、根源なども含めた総合的なものではないかと思うのだけれど。


 もちろん、物理的な世界も、それはそれで重要な要素だとは思うのだけれど、根源的には、むしろ個々人の内側に広がる世界の方が重要だと思う。

 それに、階梯の上げ方によっては、物理的なものは不要になる可能性もある。


 まあ、彼らが望んでいたのは世界を紡ぐための器であって、本当の意味での世界は、そこで暮らす人たちが作り上げていけばいいと思う。

 とはいえ、「世界」の定義や概念も曖昧なので、「これだ」と主張するつもりはないけれど。




 さておき、私が世界を創った理由は、利害関係とか損得勘定である。


 創ったといっても、雛型のようなものもあったし、かかったものはちょっとした手間だけ。

 元手はタダみたいなものだし、何より、創ったからといって問題にされることもない。

 それで私に利益があるなら、創るのが当然の流れだ。


 誰かのためではなく、飽くまでも私の利益のためである。


 いや、やはりあれを世界というのは――そうなる可能性もあるし、顧客もそれで満足らしいし、それは気にしないことにしよう。


 むしろ、後から要求水準を上げられたり、クレームをつけられたり、保守管理までさせられるのは嫌なので、彼らに理解できないものを創ってはいけない。



 そして、彼らを「管理者」であり続けさせることも重要だ。


 だから、彼らの種子を材料に、湯の川の世界樹や自動販売機、そして十六夜の関係を模したものを創ったのだ。


 世界樹は本体であると同時に動力でもあって、従前のシステムでもある。

 その世界樹の能力で、自動販売機に該当する個々の世界を創って、十六夜に該当する主神たちに管理してもらう。


 もっとも、主神のヤガミさんたちの存在に手を入れるのはさすがにまずいかと思って、そこは彼らに利用可能な状態にしただけだけれど。


 むしろ、世界樹そのものにも学習機能があるはずなので、いずれ細かい設定を行わなくても、所有者の意を酌んで管理運営をしてくれるだろう。



 もちろん、それらは世界樹を通じて、系統の全ての世界にもフィードバックされるだろう。

 先の先まで考えてものが創れる私は、実は優秀なのかもしれない。



 とにかく、彼らがそうしたように、ひとつひとつ世界を創って、設定を与えて、不具合を解消したり、バランスを調整したり――などという面倒くさいことはやっていられない。


 創れる世界の数に上限はあるけれど、彼らの世界の人を救うには充分だろうし、増やしすぎても管理できないだろう。


 まあ、親はなくとも子は育つともいうので、創ったきり放置でも、さほど問題は――いや、私には関係の無いことだ。




 さておき、なんちゃって世界創造の傍で、私の出生や生い立ちについて、ショッキングな事実が判明した。


 一応、この世界で主神と呼ばれている人たちや、実の父から得た情報なので、信憑性はかなり高いと思われる。



 まず、私は人間ではなかった。


 それ自体はずっとそんな気はしていたこともあって、それほどショックは受けなかった。

 そもそも、生物学的に人間であることが重要ではなく、人間であろうとすることが重要だしね。


 なお、その事実をミーティアたちに伝えると、「お主、自分が人間だと本気で思っておったのか?」「そんなユノ様が超可愛い!」「そういう莫迦なところ、好きよ」などと、呆れられたり囃し立てらた。


 リリーは、「ユノさんが何であってもユノさんです」と答えてくれた。

 真理である。

 そして、良い子である。


 ただし、シャロンたちの耳に入ると、また変なことを言い出しそうなので、彼女たちには黙っていようと思う。

 悪い人たちではないのだけれど、やはり信仰は人を狂わせるのだろうか。



 とはいえ、それはまだ序の口。

 ボクシングでいうところのジャブである。

 随分きついジャブだけれど。



 生まれた時――といっていいものなのかも既に分からないけれど、私が最初に出現した時は、黒っぽい球体だったらしい。


 玉のようなというのも、比喩とか慣用句ではなく、事実として球体――恐らく、デフォルト状態の種子だったのだろう。


 それが、両親たちが目を見合わせて視線を外した一瞬の隙に、普通の――普通って何だろう?

 とにかく、赤ん坊になっていたらしい。

 あ、これ、大事(おおごと)にならない程度に喰ったな――と思ったけれど、気づいていなさそうなので黙っておいた。



 とにかく、人の姿になった私は、当初は女の子だったらしい。


 しかし、種子としての特性は失っていなかったらしく、興味を持ったものを手当たり次第に呑み込んだり、濃密な魔素を放出し続けていたそうだ。


 これが「幼い時のおねしょを暴露される」感覚だろうか?

 そんな記憶に無い時のことを言われても反応に困る。



 とにかく、そのことに不安を覚えた両親が、私の能力だけを封印することを試みた。


 そうして、詳しい状況は分からないけれど、みんなの力を合わせて、どうにか封印は成功した。


 結果、めでたく物質の吸収は鳴りを潜めた。

 たまに小物が無くなったりするのは、失くしたのかどうかの判断ができないのでどうしようもない。


 無駄な魔素の放出についても封印できた。

 しかし、直接触れると魔力が回復するし、気持ちいいので、ちょっとした争奪戦になったらしい。


 それまで呑まれなかったのが幸運だったとしても、よく触る気になったものだ。

 というか、よく育てる気になったな。

 魔王とか勇者になるような人は、感性がほかの人とは少し違うのかもしれない。



 しかし、その反動なのか、私は男の子になっていた――論理とか因果が成立していないけれど、種子とはそういうものであると、結果のみを受け止めるしかない。



 もちろん、性別が変わったことで、新たな問題も発生した。


 既に名付けられていた「ユノ」という名前は、どう考えても女の子のもの。

 そして、それはしっかりとネームタグなどに書き込まれていた。


 そこで、「ユノ」に棒線を2本足して「ユーリ」に変えたそうなのだけれど、封印直後の疲労と達成感などで、妙なテンションになっていた様子が目に浮かぶようだ。

 すぐにネームタグを新品に交換すれば済む話だと気づいたらしいけれど。



 とにかく、私の本当の名前も「ユノ」の方なのだそうだ。


 ツッコミどころが多すぎて、何をどこからツッコめばいいのか分からないけれど、私が人の形をした種子で、封印されていた私の半身――というか、大部分が朔だったことは間違いない。



 つまり、私の存在は、水面から顔を出している氷山のようなもので、水面下にいた朔の方が本体だったのだろう。



 しかし、私が人間として生活してきた16年で事情が変わったらしい。


 いや、今年で25歳になるのだと思っていたのに、本当は真由たちと同い年だとか、ショックとかそういうレベルの話ではなかった。

 それに、成長スピードが不規則すぎて、小中学校生活の何割かはすっ飛ばしていたとか――道理で勉強についていくのが難しかったわけだけれど、それに気づかない私もかなりヤバい。


 とにかく、その年月やこの世界に来てからの生活の中で、私の階梯が上がる要素があったのだろう――というのが、父さんや主神たちの見解である。



 なお、心当たりは特に無い。


 勉強は不得意だったし、運動は得意だったけれど、物理法則には勝てない。

 そもそも、階梯とは物理的な力で上るものではない。


 強いて挙げるとすれば、トラックや重機による特攻――避けられないアクシデントの形をとった、異世界で行われた召喚魔法の干渉を、生身で撃退できるようになったことだろうか。


 まあ、生身というか、今思うと、魔法の本来の使い方を無自覚にマスターしたというか。

 それで、ある種の概念攻撃ともいえる召喚魔法を無効化していたようだ。



 一応、ヤガミさんたちの名誉のために弁解しておくと、勇者召喚は、彼らの世界の人類救済目的のものから派生したものだそうだ。

 なので、概念攻撃といっても、被召喚者を直接的に傷付けるような効果は無いらしい。


 なお、轢かれた私が、「結構痛かったよ?」と言っても、「むしろ、異世界に対する適応能力が高い――ある意味では、現世では脱落寸前とか行き詰まっている人の救済になっているくらいだ」と無視された。


 また、ごく低確率ではあるけれど、なぜか種子が召喚できるからという理由で、人間たちがそれを行うことを黙認していたらしい。


 ……ガン無視だった。




 その結果が帝国の現状である。


 しかし、彼らの予測では、帝国は、そう遠くない未来に、現皇帝の死と共に自壊を始める。

 そして、それを機に神聖国や王国が、「民衆の保護」という名目で介入することとなる。

 その流れで、亜人奴隷の命を使った非人道的な召喚乱発も発覚するだろうし、表向きは終息に向かうと踏んでいたようだ。



 もっとも、その予測は、私や湯の川の影響による王国や神聖国の情勢の変化によって、確度が揺らいでいるそうだ。


 そういった予知めいた可能性世界の観測は、種子の能力で行っているそうだけれど、上位者が介入すると、その内容がガラリと変わったり、観測自体ができなくなるのだとか。


 つまり、私のせいで未来が分からなくなったと言いたいのだろう。


 もっとも、アザゼルさんのようなイレギュラーに気づいていなかったとか、世界の全てを把握しているわけではないし、把握している範囲でしか観測できないらしい。

 なので、私の介入で良い方に転んだものもあるし、悪いことばかりではない。



「ということだから、現状では何が正解か分からないし、君が何かに干渉するつもりなら、それを尊重するよ。というか、止めたくても止められないだろうし、そうする前に相談してくれると助かるけどね」


 そんなことを言われても困る。

 事情が事情だから、全く干渉しないわけにもいかないのだけれど、できれば自分たちの手でやってほしい。




 さておき、本来なら、私は父さんの施した封印が壊れた時に、朔に吸収されてしまうはずだったのだろう。


 ただ、その時に朔が手加減したことと、私自身も知らないうちに、生身のままで概念への対抗能力を身につけていたこともあって、私という存在はかろうじて残ることになった。



 ここがひとつの分水嶺(ぶんすいれい)だったのだろう。



 その時点での私は、種子の力を一部を取り戻して、システムの恩恵にあずからずとも、生身で竜や魔王に対抗できるくらいに強化された状態だった。

 裏を返せば、その程度でしかなかった。


 朔も、種子としては平均的な規模のもので、それを複数所持している主神たちにとってはいかようにも対処可能な範囲である。

 多少出遅れたとはいえ、この時点ではまだどうにかできると思っていたようだ。



 ただ、彼らの予想とは裏腹に、私の能力は、目に見えづらい形で急速に変化というか進化というか――朔に言わせれば「種子としてあるべき姿」に覚醒していった。

 その結果、あっという間に主神たちの観測――《鑑定》能力を振り切って、朔との立場も逆転した。


 種子とは、数とか量ではなく、質が重要なのだ。

 どうやって質が変わったのかはよく分からないけれど。




 話は変わるけれど、《鑑定》スキルとは、主神たちが救いたいと願う彼らの世界の人々のために、この過酷な世界で生き抜く手段のひとつとして用意したものだそうだ。


 戦闘では、戦闘前から敵の能力が分かっていれば有利なのはいうまでもない。


 それ以外でも、毒のある食べ物を、それと知らずに口にするといった事故も回避できる。


 パソコンとかスマホで調べれば、どんなことでも答えが返ってくると思っている現代人には、必須ともいえるスキルである。



 しかし、《鑑定》スキルの本質は「知りたいことを知る」ことであって、決して「万物を解析できる」ものではない。


 結局は種子の力で成立しているものなので、使用者や提供者の知識や想像も及ばないものに対しての動作は保証の範囲外になる。

 種子にも個性があるので、複数の種子で構成されているシステムの《鑑定》はかなり高性能なはずだけれど、私の《鑑定》結果が安定しないのは、そういうところも原因なのだと思われる。



 なお、朔は種子のくせに論理的で、手持ちの情報や材料の中で、できることしかできない。

 裏を返せば、可能性が少しでもあれば何でもできるということで、それはそれですごいことである。


 そして、思いつきと感覚で突っ走る私は、種子の中でもかなり特異な存在のようだ。




 さて、次の転換点は、ミーティアとの戦いの最中に、父さんたちの施した封印が大きく壊れたことだろうか。


 例えるなら、それまではブレーキがかけられているのを知らずにアクセルを踏んでいたというか、アクセルがあるのを知らなかったとでもいうか。

 とにかく、その負荷が一気に無くなった反動で、私という種子は言葉どおり芽吹いた――種子としての階梯が上がったのだろうか。


 これが戦闘中ではなかったりとか、対抗しているのがミーティアのブレスでなければ、もう少し大人しくて使い勝手のいい能力に目覚めていたかもしれない。

 とにかく、底が抜けるくらいにアクセルを踏み込んで、ただ侵食することを意識していたせいで、かなりピーキーな性質になったっぽい。



 まあ、元々の性質も影響していると思うけれど、なってしまったものは仕方ない。

 それでも、この時はまだ人間であろうという意識が強かったせいか、能力的には以前の延長線上にあって、見かけ上の変化も起こらなかった。



 そして、神前試合の後で天使に絡まれた時、何だかいろいろと吹っ切れた結果、何かを悟った。

 そうして、私の本質が開花した。

 ある種の根源になったといい換えてもいい。


 恐らく、それが種子としての到達点のひとつで、根源としての開始地点であることは、本質的なところで理解できる。

 一方で、開花した種子が、いまだに人の姿や自我を保っていることが異常なのだということも何となく理解できる。


 確信を持ってそう思えるようになったのは、月で父さんや主神たちの話を聞いてからだけれど、父さんが「何があろうとユノは私たちの娘だ!」と言ってくれたので、細かいことはどうでもいい。


 一刻も早く、家族みんなで暮らせるよう頑張ろう!

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