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幕間 アルフォンス・B・グレイの決意

――アルフォンス視点――

 ヤマト帝と、オルデア共和国のシェンメイ総督による共同声明が発表されるという情報は、多少の工作もあったせいか、瞬く間に帝都中に広まった。


 それで、当日――いや、前日のうちから、帝城正門前広場には多くの人々が押しかけていた。




 そこで、俺がプロデュースしてユノが実行したシナリオを、ユノの使徒と化したシェンメイ総督が再現して、ヤマト帝がそれを肯定する。



 オルデアがヤマトを侵攻した理由から始まって、即ブーイング。

 それが神託によるものだと聞くと、トーンダウン。

 神の力は偉大だな。


 ヤマト帝が、その災厄に対処するだけの力がなかったことを謝罪した時には大ブーイング。

 犠牲者の家族とかが納得できないのは分かるけど、便乗してるだけのもいっぱいいるんだろうな。

 まあ、民衆ってそういうとこあるしな。


 それに、「九頭竜を斃したから許してね」って、莫迦にされてんのかと思われても仕方ないわ。



 考えるまでもなく当然だよな。


 俺だって、実際にその目で見てない九頭竜とか、どんな脅威だったか分からんし。

 神様方が慌ててたから、「ヤベーこと起こってんだな」くらいの感覚だっただけ。


 結局、全員無事で、ユノを褒め称えながら楽しそうに帰ってきた様子を見てると、「実は大したことじゃなかったんじゃ?」と思ったし。


 事情を全く知らない民衆だと、夢物語――というか、寝言を聞かされているに等しいんだろうな。


 正当な統治権の証明である世界樹も、大勢の人に見せるには小さすぎる。

 その所持によって受けられる恩恵には、人心掌握や洗脳などといった効果まではないらしいし、今のところ、説得力は皆無だ。


 暴動が起こってないのは、シェンメイが《巫女》スキルを発現させたおかげだろうか。

 《巫女》スキル、スゲーな。

 っていっても、暴動に発展しない程度の洗脳ってか、精神汚染してるだけっぽいけど。


 まあ、それくらいシナリオに無理があったということだ。




 そんな流れが、ユノの登場で一変した。


 ヤマト神話に登場する女神のような、和風の衣装に身を包んで、楚々としていながらも強い芯を感じさせる立ち居振る舞いに、何より人間の想像力を超えた美しさで、一瞬にして会場中の人たちの心を掌握した。


 いつ見てもすげえな、おい。

 あいつだけ世界が違う。

 マジ神々しい。


 というか、やっぱりいきなり素顔は刺激が強すぎたらしい。

 トゥンクって擬音がいっぱい聞こえた気がしたよ。



 それはともかく、ユノには下手にまともな演説をされても困るから、「歌っとけば?」と提案してみたんだけど、あっさり受け容れられるとは思わなかった。


 ユノの演説には当たり外れがあるんだけど、当たりを引くと非常にヤバい。

 それと比べると、《巫女》スキルとか可愛いもんだよ。

 素顔だけでもヤバいのに。

 割と女狐っぽかったシェンメイが立派な狂信者になるとか、さすがに想定外だった。


 彼女とは、損得勘定だけで上手く付き合えたはずなのに……。



 想定外といえば、ユノがノリノリでアイドルをするようになるとは思わなかった。


「ヤマトのみんなのために歌うよっ☆」


「「「うおおおぉ!」」」


 しかも、俺は何の用意もしてないのに、何も無い所からステージが出現するし、光源も無いのにライトアップされてるし、どこからともなく出現した花びらが舞ってる。

 知らないうちに演出がパワーアップしてやがった。


 言い出しっぺの俺が言うことじゃないけど、これはユノの目的とは何の関係も無い。

 問題解決の手段だなんて、嘘から出た(まこと)でしかない。



 それでも最近分かってきたのは、本来のユノは「遊び」が大好きなんだろう――ってことだ。


 だからこそ、遊びの範囲では潔く負けを認めるし、そのままでは勝負になりようのない戦闘は、制限を設けたり避けたりしてるんじゃないかな。



 つまり、そういった勝負の延長線だったら、ユノと男女のお付き合いもできるのかもしれない。

 自分でも何を言ってんだと思うし、もう嫁は増やさないと誓ったはずなんだけど、ユノが可愛すぎるんだから仕方ないだろ!


 とにかく、当時のユノの目的やその周辺事情があったとはいえ、現在のアイリス様のポジションは恐らくこれが理由だ。

 あいつにとって、必要なこと以外は全て遊び――いや、必要なことも遊びの範疇なのかもしれない。


 もちろん、遊び相手になるにはユノに認められている必要があるとか、口で言うほど簡単じゃないはずだけど。

 だがしかし、軽くだけどキスしても怒られなかったことを考えれば、充分に脈はあるような気がする!


 もっとも、本格的な攻略は、嫁たちへの根回しを終えてからだ。


 嫁さんたちを裏切れないし、裏切ればユノからの評価も地に落ちるだろうし。

 最悪、来世に期待だけど――次も転生できる保証なんてないし、行けそうなら行くけどな!



 とにかく、今回の戦争はいろいろと苦労もしたし、危ない場面もあったけど――近親ホモとか、オッサンとヌルヌル絡み合ったりとか、神器持ちの勇者とか……。

 つらい思い出もいろいろあるけど、ユノとの混浴イベントもちょくちょくあったし、トータルでいえば――

「失礼、アルフォンス・B・グレイ様ですネ?」


 突然、何の気配も感じさせずに真横に現れた男に声をかけられた。


 いきなりすぎて、不謹慎なことを考えていたこともあって、心臓が大きく跳ねた。



「驚かせてしまったようデ、申し訳ありまセーン。私こういう者でしテ、どうぞよろしくお願いいたしマース」


 名刺?

 この世界で名刺?

 アクマゾンって何!?


 ってか、こいつ、マジモンの悪魔じゃねーか!

 俺以外、誰も気づいていない――いや、ミーティアさんたち古竜陣は気づいているようだけど、ユノの目の前で悪さができるとは考えてないのか、特に警戒している様子はない。



「実はですネ――」


 悪魔は混乱する俺には構わず話を続ける。


◇◇◇


「なるほど。ユノのグッズを扱いたいから、関係者の承諾を取って回ってる、と。それで、後は俺の承諾だけだと」


「はイ。ユノ様には当然のこト。湯の川では、代表としてシャロン様にも承諾をいただいておりマース。基本的な流れとしましてハ、グレイ様が企画開発シ、アイリス様とシャロン様の審議を経テ、湯の川の職人が製造して、教会に納めまス。教会での現地販売はこれまでどおり続けていただいて結構ですガ、一部を弊社に卸していただキ、弊社はそれに10〜15%の利益を上乗せして外部へ販売いたしまス。なオ、弊社仕入れ時の対価ですガ、弊社で利用可能なポイントデ、仕入れ総額のうち、ユノ様に25%、教会45%、グレイ様20%、湯の川の町へ10%。職人への支払いは教会かラ、という案になっておりまス。それとは別ニ、グレイ様にハ契約時に契約金としテ百億ポイントト、異世界ネットショッピングが利用可能になるスキル結晶を差し上げまス。もちロン、永久無料特別会員権付きデース。いかがでしょうカ」


 悪魔はここが勝負処と見たのか、一気に攻め立ててきた。


 というか、え、何、この悪魔の誘惑?

 ユノは既に承諾済み?


 そんなこと聞いてない――きっと報告を忘れてやがったな。

 朔は――害が無いなら話す必要が無いと思ったのかな?


 ってか、百億って――そんなに貰っていいの?



「あアット、弊社の1ポイントハ、日本円での1円に相当しまス。世界や時代によってレートは変動しますガ、そこはグレイ様の認識ト、システムのサポートで適正に処理されているとご理解くださイ」


 うおお、マジか!?

 百億ジンバブエドルとかってオチでもないのか!


 いや、待て。

 そんなに旨い話があっていいのか?

 相手は悪魔だぞ!?



「なるほド。さすがにユノ様の認めた人間、手強いですネー。でハ、商品開発費としテ、共通金貨で一千枚を提供いたしまショウ!」


 え、確かに商品開発には金がかかるけど……。え、何考えてんの?

 ここまでくると、逆に怖い。


「え、ちょっと待ってください」


「分かりましタ。でハ、契約金を二百億ポイント! 持ってケ、ドロボー!」


 全然分かってねえ!

 ってか、悪魔に泥棒って言われても微妙だな。

 笑うところなのか?



「だから、ちょっと待ってくださいって言ってるでしょう! 何でそんなに焦ってるんですか!?」


「焦ってなどいませんネー。でハ、三百億! ト、特別に来世に悪魔へ転生できる権利もつけてあげマース!」


「要らない! 分かりました、前向きに考えますから! でも、魂取るとか、奴隷みたいに働かせるとかは勘弁してくださいよ?」


「もちろんデース。良きビジネスパートナーとなるにハ、信頼関係が重要デース。詳しくは契約書をご確認いただけれバ、ご理解いただけると思いまス。グレイ様にお願いしたいのハ、素晴らしい商品の開発――もちロン、できる範囲で結構でス。それト、弊社との専属契約デース」


 ああ、ここまで言われれば馬鹿でも分かる。


 彼らは、俺が企画開発だけじゃなく、独自路線での製造販売にまで手を出さないように、囲い込んでおきたいんだろう。



 確かに、湯の川以外の地上でグッズを販売した場合、人間に化けた神様とかが買いにくる可能性は否定できない。

 湯の川だと、一般的な貨幣が使えないしな。

 それに、クライヴさんのような神もいるわけだし。


 それを許すとアクマゾンの機会損失に繋がって、長期的に見れば、ここで大金を支払う以上の損害を受けると考えているんだろう。

 さすが悪魔、抜け目がないな。


◇◇◇


「でハ、契約の証として契約書を双方一部ずつ所持シ、本契約に定めのない事項ヤ、解釈に疑義が生じた事項についてハ、関係法規および慣例に従イ、双方誠意をもって解決に努めるものとしまス」


 セーレさんの用意してきた契約書は、至極まともなものだった――と思う。

 というか、《契約》魔法じゃなくて、紙ベースなんだな。

 いや、《契約》は《解呪》もできるし、分からなくもない。

 それに、紙に魔法が掛かってるけど。



 彼が提示してきた条件は、全て特約に記載されてたし、面倒な義務やノルマはなく、ただ専属契約を遵守するだけのものだった。

 ただし、それを破れば魂を回収された上で、強制的に悪魔に転生させられて、奴隷のように扱き使われるらしいけど。



「ありがとうございマース。でハ、早速契約に従イ、商品を入荷してくるのデース。グレイ様――いヤ、アルフォンス様。今後ともヨロシクお願いしマース」


 セーレさんは恭しく頭を下げると、またもや空間の歪みどころか魔法の発動の気配すら感じさせずに消えた。


 大悪魔、マジヤベえ。


 その気になれば、力尽くで俺を支配もできただろうに……。

 まあ、それがユノにバレたら、彼らでもピンチなんだろうけど。

 というか、何か思ってたよりずっと大事になってきたなあ……。



「くっ、遅かったか!」


「うおっ!?」


 またしても、何の気配もなく突然現れた男に、今度は声を出して驚いてしまった。

 だって、終わったと思ってて油断してたんだから、仕方ないじゃないか。


 しかも今度は天使――いや、神様か?


「さすがアクマゾン、フットワークが軽い……。今回は我らの負けか……! だが、我らにも意地がある。ただでは負けられん。おっと、申し遅れた。私はこういう者で――」


 またしても頂戴した名刺には、“落天”――落ちるんかい! と、心の中で思わずツッコんでしまった。

 元関西人の血か。



「いかに我らとて、悪魔の契約を無視することはできません。ですが、来世は必ずや我々にお力をお貸しください。今日のところは、ひとまず我らの誠意の証として、異世界ネットショッピング拡張のスキル結晶と、死後に聖人に認定される権利、そして、来世で神族に生まれ変わる権利をお持ちいたしました。どうかお納めください」


 俺の《主人公体質》も、ついに神様や悪魔に貢がれる段階まできたか。

 前々から嫌な予感はしてたけど、さすがにインフレが激しすぎる。


 漫画とかラノベの主人公のように、都合よく活躍してチヤホヤされるだけでよかったのに――いや、確かにチヤホヤされてるけど、人間の能力ではどうにもならんところまできてると、素直に喜べない。



 よくよく考えると、今回の俺は、負けてないけど勝ってもいない。

 ってか、神の秘石持ちを相手に、よく生き残れたもんだ。


 もうこれ呪いのレベルだよ。

 俺の意思とは関係無く、転生先に選択肢ができたみたいだけど、これも絶対フラグだろ。


 最終回が近いかのように、世界の謎も徐々に明らかになっていくけど、全然有り難くない。

 ……俺、死んじゃうのかな?



 いや、まだ諦めるのは早い。

 世界最大の謎で、最強のラスボスを落とそうとしてることを考えると、まだまだ通過点でしかない。


 レベルを上げてどうにかなる段階じゃなくなったけど、新たに得たユニークスキル、《異世界ネットショッピング》に、生き延びるための手掛かりとかがあるかもしれない。

 それに、インフレしているのは敵だけじゃない。


 ユノとの関係だって、順調にステップアップしてる――と思う。


 最近、何だか俺のことを気にしている気配もするし、いつものあいつらしくない、何かを迷っている感じもある。


 俺の時代が到達したのか、と思わざるを得ない。

 それとも、また何かやらかしたか――は考えてもどうにもならない。


 レッツ、ポジティブシンキング!



 このまま無事に生き残ることができれば、更なるご褒美的展開もあるかもしれない。


 それに、ユノとのこと以外にも、やりたいことはまだいっぱいある。


 きっと俺の物語は、明日からが本番なんだ。

 これはもう頑張るしかねえ!



 でも、新たな決意を胸に王国へ凱旋した俺を待ち受けていたのは、どうにもならない現実だった。

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