表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
205/725

04 NTR

 当初は一触即発な雰囲気だったけれど、すぐにみんなの熱も冷めて、落ち着いて話せる雰囲気になってきた。

 ある意味、私のおかげ。


 残念ながら、まだ友好的という感じではないものの、場所をエントランスからラウンジに移して、お茶やお茶請けを出してくれたことを思うと、賠償の話にはならないのだろう。


 というか、洋風のホテルで出されたのが、日本茶にお饅頭(まんじゅう)なのが気になって仕方がない。



「悪くはないが……。白の相棒じゃとしょせんはこんなものか」


 ミーティアは出された物が何であるかより、その味に不満があるようだ。

 最近は私の創った料理ばかりを食べていたので、舌が肥えてしまったのかもしれない。


 しかし、縁日の出店や、海の家などで食べる安っぽい物にも、独特の味わいとか情緒があるものだ。

 それが分からないようでは、まだまだである。



「あ゛ぁん!?」


 そんなミーティアを、白竜がすごい顔で睨んでいた。

 今日日(きょうび)、チンピラでもこんな顔はしない。

 美人が台無しだ。



「待て、ミーティア。権力も財力もない男が、湯の川に対抗しようと精一杯背伸びをしているのだ。生暖かく見守ってやるのが上の者の務めだろう」


 アーサーはフォローのしようがない。

 いっそのこと、猿轡(さるぐつわ)でも噛ませておこうかと思ってしまう。



「くっ」


 そんな古竜たちの()撃に、レオンさんが唇を噛む。


 魔王が空気を読めないことは知っているけれど、古竜もナチュラルに口が悪い。

 というか、この世界の人は、口と頭が悪い傾向にある。



「あの、本当にすみません……」


「……いいさ、お前が悪いわけじゃない」


 私たちをダシにして、アルがレオンさんとの距離を詰めていた。

 やるな、人(たら)しめ。



「この餡子(あんこ)、甘さの加減と舌触りがすごくいいですよね。皮もモチモチしてて、絶妙なバランスですよ」


「そうか、分かるか、この良さが」


「ええ、とても強い拘りを感じます。ここまでの物を仕上げるのには、随分苦労をなさったんじゃ?」


「ああ。ゼロからの出発だったこともあって――」

「ユノよ、あれをやってくれんかのう?」


 ミーティアが、アルとレオンさんの会話を無視して、私に「あれ」を要求してきた。



 その「あれ」とは、私が最近覚えた、「何でも美味しくなる魔法」のことだろう。


 朔によるシステムを模倣した魔法ではなく、私の料理魔法派生の固有魔法で、朔が『女子力が限界突破したよ!』と宣言した直後に使えるようになった。

 何をどうツッコんでいいのかは分からなかったけれど、半ば自棄になって使ってみたその魔法の効果は絶大だった。



「ここで?」


 しかし、その魔法には欠点があった。


「うむ。お主ならできる」


「ユノ様、俺のもお願いします!」


『やってあげればいいじゃないか。それで大人しくなるなら安いものだよ』


 確かに朔の言うとおり、悪い雰囲気のままというのはよろしくない。


 それに、どうせ食べるなら美味しく食べたいし、仕方がないか。



「美味しくな〜れ、萌え萌えキュン☆」


 精一杯の猫撫で声で、胸の前で両手を合わせてハートを作ると、そこから溢れるよく分からないパワーが、お茶とお菓子に照射される。


「ふむ、バケツを外しておらんから、30点といったところじゃな」


「しかし、ユノ様にかかれば、生ゴミでも美食に変わる」


 私がパワーを注いだ物を食べたふたりが、批評を始めた。


 この魔法は、どれだけ可愛くパワーを注げたかで効果が変わるのだ。


 ある意味では、日本でも毎日やっていたことだけれど、あっちは誰かに見られることがなかったので平気だった。



「な、な、何をやっとんのじゃあ!?」


 その光景を見ていたレオンさんが、言葉にできないような変な顔でキレた。



「レオン、悔しいけれど……美味しいわ、これ……。手が、手が止まらないの……というか、指まで美味しいの……」


 白竜は、悔し涙を流しながらお饅頭を口に運び、それどころか、自らの指まではしたなくしゃぶっている。



 この魔法の最大の問題点――それは、食べ物以外も美味しくなるというか、私が食べられるものなら何でも美味しくなることだ。


 つまり、虫とかの気持ち悪いもの以外、それこそ、石とか空気でも美味しく頂けるようになる。


 女子力が上がって、どうしてこうなるのか。


 私の女子力はお砂糖とスパイスと素敵な何かでできているらしいし、それが限界突破して漏れ出しているのだろうか?



「シロ、すまない……! 俺の力が足りないばかりに……!」


「貴方だけのせいじゃないわ! これからも、ふたりの力を合わせて乗り越えていきましょう!」


「シロ!」

「レオン!」


 お互いの名前を呼び合って、ふたりはひしと抱き合っていた。

 何だか分からないけれど、丸く収まったらしい。


◇◇◇


「なるほど、ヤマトの調査にね。あれは俺もどうしたものかと考えていたところなんだが、そっちでも情報を掴んでいたとは、さすが英雄と言われるだけはあるな」


 一度派手に興奮したからか、以降は落ち着いて話をすることができた。


 といっても、理解してもらえたのは、私たちがチェストを訪れた理由と、彼らに対して危害を加える意思が無いことくらいだけれど。


 魔王に対して後者の理由はどうかと思うけれど、ひと言に魔王といっても、ピンからキリまで存在している。

 そして、レオンさんは、残念ながら白竜の付属品扱いだ。



「どういう形に落ち着くかは分かりませんが……、レオンさんはどうするつもりだったんですか?」


「俺のことはいい――が、そういうことならホテルの利用を許可しよう。金も要らん。だが――、ちっ」


 アルの問いにまともに答えなかったのはともかく、この魔王、私の方を見て舌打ちしやがった。



「そいつが認識阻害の結界を壊してしまったからな。復旧するまでは手を貸してやることはできん」


「ああ……、本当にすみません。後できつく言っておきますので……」


 私のせいにされるのは、まあ、事実だし仕方がない。

 しかしあんなに脆いものを壊しただけで、こうまで言われるのは面白くない。



「手伝う気など(はな)からないじゃろうが」


「だが、確かにあの結界は素晴らしかった。この俺が、ここまで接近しなければ白の存在に気がつかなかったほどだからな」


「貴様と同じ意見なのは面白うないが、確かに見事じゃったのう。まさか、古竜と魔王が人間に紛れておるなど、考えもせなんだ。じゃが、貴様らも儂らに気づかぬのは、間抜けというほかないのう」


 褒めているのか、(けな)しているのかは分からないけれど、ミーティアとアーサーは妙に息が合っているし、やはり仲が良いようだ。



「まあ、小物にしてはよくやった方だろうが。――やはり、ユノ様のように、世界樹を創って隠れ蓑にすることに比べれば、塵芥(じんかい)以下だな」


「最も恐ろしいのは、あれで何かを隠した気になっておるユノの頭の中じゃがの」


「そのアンバランスさがまた魅力なのではないか!」


「確かにそうじゃな」


「「はっはっはっ」」


 なぜか私ディスりにシフトしていた。


 あれでも一応、魔素の発生源とかは偽装できていると思っていたのだけれど、実は違うのだろうか?

 というか、本当に息ぴったりだな。



「莫迦なことを言わないでちょうだい。あの結界は、計算に計算を重ねて、高度に洗練されたものよ! 貴方たちのところのでたらめな悪夢と一緒にしないでちょうだい!」


「その悪夢の御業(みわざ)で涙を流していたのはどこのどいつだ?」


「くっ……!」


「その悪夢から採れた一番搾りが、この『神の御初汁』じゃが、くくく、一度味わうと、もうこれ無しでは生きられなくなる禁断の酒じゃ。その上、萌え萌えキュンで更に美味くなるのじゃが、これでもまだ悪夢などと言えるかのう?」


「あぁ、レオン、ごめんなさい……! 駄目だって分かっているのに、身体が反応してしまうの……! あぁ、見ないで!」


 何ともいえない下卑た顔で一升瓶を見せつけるミーティアとアーサー。

 そして、滂沱(ぼうだ)の涙と涎を流しながら(すが)りつこうとする白竜に、みんなドン引きだ。


「あれ? 何このNTR感? 悔しいっ! でもっ!」


 レオンさんもまた悔しそうな表情で、なぜか股間を押さえている。

 というかNTRとは何だろう?

 新手のパラメータ?



「酒も分けてもらえるように言っておきますので……」


「重ね重ねすまない……。お前、良い男だな……」


 個人で楽しむ用途なら、お酒を分けるくらいは構わないのだけれど、それを逸早く自らのポイントに変えてしまうアルが侮れない。

 これが英雄のやり口か。


◇◇◇


 私がいると一向に話が進まないとアルに怒られたので、ミーティアやアーサーが騒がないように、私がお茶とお菓子を用意して彼らから少し距離をとる。

 物欲しそうな目で私を見ている白竜には、後で《竜殺し》を進呈する約束をした。


 いろいろとおかしい気がするものの、私が泥を被ることで収まるなら、甘んじて受け入れよう。



「俺もお前たちと同じ、平穏な暮らしを望んでいる。だからこその結界で、オルデアの軍事行動にも注意を払っていた。お前たちが知っていることには正直驚いたが、どこまで情報を持っている?」


 その甲斐あってか、先ほどまでのふざけた様子が嘘のように、それぞれ真面目な顔でテーブルに着いている。

 最初からそうしてくれればよかったのだけれど。


「今年に入ってから、オルデア共和国が現代兵器――異世界の現代兵器を大量に用いてヤマトに侵攻して、今はヤマトが陥落寸前――くらいです」


「そうか。お前も異世界人――日本人なんだろう? 答える必要は無いが、その前提で話させてもらう」


 レオンさんは何かを言いかけたアルを制して、構わず話を進める。



「まずはひとつ訂正をしておこう。ヤマトの首都――帝都は既にオルデアの占領下にある」


 レオンさんの言葉に、アルとシズクさんが息を呑む。

 想像はしていても、実際に聞かされるとショックだったのだろう。


「オルデアは、その圧倒的な戦力で一気に帝都を落とし、その際に(みかど)を捕らえている。――処刑しないのは、まだ統治体制が整っていないことと、各地に潜んでいる抵抗勢力に帝を神格化されたり、自棄になられるのを防ぐためだろう」


 レオンさんは、そんなふたりの様子を見ながら、ゆっくりと話を進めている。

 キラキラした名前の割には、配慮ができる人のようだ。


「戦力差は圧倒的なのに、統治しきれてないところで気づいたと思うが、侵略に使用された兵器に対して、占領統治を行う地上部隊には特別なものはない。それに、人員が足りてないせいで、占領できている割合も少ない。だから、抵抗勢力が地上部隊に付け入る隙は充分にある」


 分かるような、分からないような理屈で話が進んでいく。

 できれば、私にも分かるように配慮してほしいところだ。


「さらに、占領政策の一環で、ヤマトの一般の民衆は二等市民という身分に落とされ、かなり自由や権利を制限されて、不満が募っている。そのせいで、抵抗勢力を応援したり協力する奴も多い。オルデアも、まさか、戦争に勝利すれば民に万歳で迎えられると思っていた――なんてことはないだろうがな。正直、オルデアが何を考えているのかが分からん」


 一気に話されると、私もよく分からん。

 つまり、ヤマトはもう終わったということ?


「ヤマトがもう……」


 シズクさんの顔色がレオンさんの説明で蒼白になって、アルが彼女を労わるように無言で抱きしめた。



「残念だが、抵抗勢力がいくら頑張ろうと状況は覆せないだろう。いや、そもそもあの軍勢を撃退できる勢力がどれほどいるか……。問題はそれだけじゃない。その大量の兵器が、オルデアの勇者のスキルか魔法であることは間違いない。異世界の物を召喚か、再現か、他の何かかは分からないが、それだけの量を用意して、維持している力の源泉は何だ。どう考えても、勇者や魔王であっても個人で賄えるレベルではない。今、目に見えているもので終わりなのか、それともまだ出てくるのか、青が出てくれば何か分かったかもしれないが、奴が出てくる気配が一向にない。だったら赤でも(けしか)けるかって考えてたら、銀に負けたとか……。で、様子を見に行ったらあれだ、もっとヤバいもん見つけた。オルデアがチェストにも侵攻してきたら、俺たちも西へ逃げようかと考えてたんだが、そっちにはお前らがいるんで、退避場所すら当てがなくなったってわけだ」


「自分で戦ってみようとは思わなかったんですか?」


「シロはやりたがってたけどな。たとえ局地戦でいくつか勝ったとしても、シロや仲間に被害が出た時点で負けだからな。勝算がなけりゃ、魔王だって逃げるさ」


「レオン……」


『逃げることは、負けることと同じではないってことは分かるけど、この場合は問題の根本的な解決にはならないでしょ。集会の後、うちに来た魔王たちみたいに、うちを頼ろうとは思わなかったの?』


「言っただろ、俺の目的は平穏な暮らしだって。お前らのとこ、火種――いや、炎上案件しかないじゃん! ヤバいフラグ立ちすぎてるんだよ!」



「!?」


 誰かがいきなり大きな声を出すものだから、少し驚いてしまった。


「聞いとらんかったな」


「朔が聞いているから大丈夫」


 途中から聞いていなかったのは事実なので、言い訳はしない。

 しかし、今の私の仕事は、ミーティアとアーサーのお目付け役のようなもので、途中でついていけなくなった彼らの話を聞いても特に意味は無い。


 むしろ、今の私より忙しい人などそうはいないはず。

 疲労など感じない身体とはいえ、気分的に疲れた気になることはあるのだし、そうなるとミスも増えるので、休めるところで休むことも重要なのだ。



「こいつ、マジか……。本当に何しに来たんだよ……」


 それは私の台詞だ。

 面倒事に首を突っ込みに来たとでも思っていたのか?


 私が面倒事に関わると、更に面倒なことになるかもしれないのだけれど、それでもいいのか?


『人の話を聞かないのはユノの悪い癖だけど、ボクらの出番は、みんなの手に負えなくなってからだからね。今の段階だとただの観光だよ』


 その出番も禁忌に関わることだけになるのだけれど、そこまで言う必要は無い。

 というか、言ってしまうと、神とか禁忌にまで話が及ぶので、話せない。



「……マジで? こいつ、闘神に勝つくらい強いくせに、戦わないのか?」


「戦って勝つことが解決にはなるとは限らないよ」


「あれ? 何だろう、この理不尽な感じ」


 それこそ私の台詞だ。

 自分では良いことを言ったつもりなのに、白い目で見られるとは想像もしなかった。


「情報源は明かせませんし、詳細も聞いてませんが、オルデアは禁忌に触れているらしくて、ユノを連れてきているのは保険です」


「禁忌か……。その禁忌に、そいつ抜きで挑もうってのか?」


「いきなり戦いを挑むことはないですよ。俺にも立場とかありますし。――でも、大国の影をチラつかせて、古竜も結束するんだというところを見せて、圧力をかけようかと思ってます」


「なるほどな……。どう思う、シロ?」


「少なくとも、当てもなく逃げるよりは未来があると思うわ。――やるの?」


「ああ。その話、俺たちにも協力させてもらえないか? ――俺たち、といっても俺とシロだけだが」


「うふふ、素敵よレオン。それでこそ私の見込んだ男だわ」


 ふたりの世界に入り始めたレオンさんと白竜とは対照的に、アルは渋い表情で考え込んでいる。


(白竜の加勢は有り難いけど、魔王と手を組んだって評判はまずいってところかな。共和国に大義名分ができちゃうと、アルフォンスの作戦は破綻しちゃうからね)


 なるほど。


 勝てば官軍といけば楽なのだろう。

 しかし、現実はそう甘くはないということか。



「心配しなくても、お前の立場は分かっている。迷惑を掛けるつもりはない。ま、無理強いはしないが」


「いえ――おふたりのお力、有り難くお借りします」


 そう言って手を差し出したアルに、レオンさんが「よろしく頼む」と応じて、固く握手を交わす。

 良い話だなー。

 多分。




 レオンさんを仲間に――というか、巻き込んだアルの手腕をどう評価すればいいのかは分からないけれど、シズクさんが完全に置いてけぼりにされていた。


「大変ですね」


 そういうプレイなのかもしれないけれど、一応フォローしておこうかと思って声をかける。


「ええ、まあ、いつものことですから。それでも、新しい嫁候補じゃないだけマシですよ」


 しかし、私が思っているほど動揺はしていないらしい――というか、諦めているのか?



「そういう意味で、一番怖いのは貴女なんですけどね……」


 マジか。

 いつの間にそんなことになっていたのだろう?


 というか、誤解は早めに解いておかなければ。



『王国貴族的な意味でも、男女的な意味でも、線は引いてると思うけど?』


 私が弁明する前に、朔が事実を述べる。



「それは分かっていますが、分かっていても――旦那様の遍歴を考えると、ついに神様にまで手を出すつもりなのかと……」


 アルの信用が無かった。



『ユノがアルフォンスを気に入っているのは事実だけど、君たち家族を想って必死に頑張っているアルフォンスを気に入っているのであって、それがなければ――」

「貴女にとってはそうなのかもしれませんが――貴女が魅力的すぎるのがいけないんです! 同性の私から見ても、嫉妬する気も起きないくらい魅力的で、もし私が男性だったらとか、旦那様に出会う前に貴女に出会えていれば――などと浅ましいことを考えてしまうのです!」


『……』


 突然そんなことをカミングアウトされても困る。

 朔も困っている。



「ですから、私にあまり優しくしないでください。でも、冷たくされるのはもっと嫌です。それに、旦那様にも優しくしないでください。ダブルで嫉妬してしまいます」


 私にどうしろというのだ。


「ああ、でも旦那様と3人でというのも悪くないかも……。いえ、愛する旦那様と、愛する女性の絡み合う姿を、ただ見せつけられるだけ……! 目を逸らすことも、自分で慰めることもできず……! あれ、案外良いかも……?」


 この人ヤバい。

 真顔で妄想全開だよ。

 ついでに業も深いよ。


「駄目よ、シズク。私には子供もいるのよ。あの子を裏切ることなんて――! でも、あの子が納得してくれるなら……!」


 葛藤(かっとう)を続けるシズクさんから、静かに距離を取る。


 お城で私の素顔を見た時には何の反応もなかったように見えたのに、心の中でこんな葛藤をしていたとは……。

 アルは、レオンさんとの話に夢中で、奥さんの異常に気づいた様子はない。


 ヤマトもピンチだけれど、家庭もピンチだよ――と、声に出さずに訴えるけれど、当然ながら、私の想いは届かない。

 これで鈍感と言われるのは堪ったものではないけれど、そう言いたくなる気持ちも分かった。


 こんなときこそ、助けて朔!


(無理。男女の――いや、同性の機微とか、ボクに分かるはずがないじゃないか。セイラのところの書物にもこんな展開はなかったし、データ不足だよ)


 あっさりと見捨てられた。


 朔はアドリブに弱いのか?

 こんな展開の載っている書物があればいいの?

 そんな物があるの?


 でも、人間の可能性って、私の想像の上を行くからなあ……。

 機会があったら探してみようか?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ