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自覚の足りない邪神さんは、いつもどこかで迷走しています  作者: デブ(小)
第六章 邪神さんの子育て大作戦
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18 生き地獄

 いつか見た廃教会を眼下に見る。


 ドワーフの町【アナグラ】のギルドの依頼にあった、邪教徒云々の場所。

 以前と同じように――その時以上に、ゾンビが(ひし)めきあっている。

 そのせいか、死体ばかりなのに妙に活気に溢れているような感じを受ける。



 そして、以前と違うのは、廃教会から明かりが漏れていることだ。

 もちろん、火葬をされている最中ということではなく、中に人がいるということである。


 なぜ今更こんな所に来ているのかというと、ノワールたちゴニンジャーがいろいろと情報を集めている中で、エルフの子供たちの元主人がここに潜伏していることを掴んだので、その確認に来たのだ。




 国家反逆罪で指名手配された彼は、同じように指名手配された同志と共にこの廃教会に逃げ込んでいて、ゾンビを盾にして籠城している。


 もちろん、ゾンビにそんなつもりはないと思うけれど。



 もっとも、帝国の憲兵さんからすれば、彼らの状況は袋の鼠である。

 脱出さえ阻止していれば、いずれ干上がる。

 なので、危険を冒して突入する必要は無かったりする。



 事実、中の様子は、それはそれは酷いものである。


 飢えのせいか、酷く痩せ細った十数人の男女が、なぜか裸で絡み合っている。

 生物は、死に瀕すると本能的に子孫を残そうとすると聞いたことがあるのだけれど、それだろうか?


 そして、その周囲には、食い散らかされた何者かの肉片と骨が散乱している。

 というか、それが人間の物であろうことは、最奥にいる正体不明の怪物が現在進行形で食べている物を見れば理解できる。



 怪物は胡坐(あぐら)をかいているので正確なサイズは分からないけれど、座高だけでも優に三メートルを超えていて、人型――力士のような体形で、腕が四本ある。

 さらに、オークのような大きな牙と、額に第三の目があったり、爬虫類のような大きな尻尾まである――と、私以上に何が何だか分からない存在である。

 その上、魂までもがちぐはぐというか、何とも形容し難い生物だった。


 それが、左右の手にそれぞれ持った人体に交互に(かじ)りついている。


 恐らく、私の下にいる子供たちのように保護されなかった奴隷や、何らかの理由で死んだ邪教徒が食べられているのだろう。

 そして、その化け物のお零れを邪教徒たちが競い合うように貪り食らっていて、無理やり連れてこられたであろう奴隷らしき子供たちが、虚ろな目でそれを眺めている。


「うわー……」

 という感想しか出ない。


 人間とは追い詰められるとここまで堕ちるのか。

 魔族の人たちとは違う形でヤバい。



 確か、ギルドの依頼では、ここを根城にしていたのは、悪魔信仰とか邪教の徒だったと記憶している。

 そうすると、この怪物が、彼らの求めていた悪魔とか神なのだろうか。


 どんな経緯があったのかは分からないけれど、この知性の欠片もなさそうなのは、明らかに外れだと分かりそうなものなのに。

 むしろ、知性や自我がない力の塊の方が神性を感じるのではないだろうか。

 種子みたいに。



 当初は、種子とか私を召喚しようとしているのかと警戒していたのに、逆にこんなので満足されているのかと思うと、妙に腹立たしい。

 そして、私が引き取ったエルフの子供たちもこんな経験をしてきたのかと思うと、更に不快感を覚える。

 だからといって、感情的に動くわけにもいかないけれど。



 私がわざわざ現場に足を運んだのには、(れっき)とした理由があるのだ。


 元々の目的は、生き残っている奴隷たちを回収しようとしただけなのだけれど、それだけなら領域を使うだけで事足りる。

 もちろん、展開させる範囲が狭い方がやりやすいとはいえ、現場に来る必要まではない。



 しかし、この怪物が、万が一にも神の眷属だったりした場合、その供物を横取りするような真似は、トラブルの元になってしまう。


 だからといって見過ごす気もないので、きちんと確認を取ってからにしよう――ということで現場の直上までやってきたのだ。



 それなのに、当の怪物は食べることに夢中で、私に気づいた様子もないし、神――というには貫禄も、何もかもが足りない気がするので、逆に困惑しているところだ。


 とはいえ、私も一応は神のカテゴリーに入るらしいし、鈍感さと神は関係ない――むしろ、神とは鈍感なものなのかもしれない。



 それはともかく、生理的嫌悪感を抱く容姿や、痴態に(ふけ)る人間たちを肴に人間を丸齧りするような存在とは関わり合いになりたくないのだけれど、私としては今現在無事な子だけでも助けたい。


 さて、どうしたものか――。


◇◇◇


――第三者視点――

 エルフの里でも帝国の亜人狩りの件は問題視されていた。


 帝国は巧妙に情報を隠滅していたが、森の中でのことでエルフの知覚能力は誤魔化せない。


 同時に、多くのエルフたちは、いくら精強な帝国兵が相手でも、自分たちの庭も同然な森の中では後れを取ることはないと慢心していた。



 事実、エルフたちは、帝国兵の集団を何度も撃退していた。


 それも、可能な限り殺さず、負傷者を量産するようにして、帝国の力を削ぐ。

 どんなに優勢でも、それ以上の追撃はせず、専守防衛に努める。


 それ以上の脅威だと認識されてしまうと、焼き討ちされる可能性もあるのだ。

 実際に、そうして滅んだエルフの村もあるが、焼き討ちは魔物の大移動なども引き起こすため、帝国としてもリスクが高い行為であり、滅多なことでは実行されることはない。



 そうして、エルフたちは過去に何度もあった小競り合いと同様に、今回も退けられると思い込んでいた。



 しかし、ある日、帝国軍が一頭の怪物を持ち込んだことで、その均衡は破られた。




 それは、帝国で秘密裏に行われていた実験の産物のひとつだった。


 運用している帝国兵たちにも、一切詳細は知らされていない。


 兵士たちは、内心では良くないことが起きていると理解しつつも、命令に従ってそれを運用するだけ。

 悪魔やデスに襲われた砦があるとの噂を耳にしていた彼らは、無意識に自らの罪から目を背けようとしていたので、理解できないことを理解しようとはしなかった。


 上層部がそんな噂を否定していたことも、彼らを安心させた。

 そんな些細なものでも、罪深さの象徴の前では(すが)れるものが必要だったのだ。


 悪魔やデスが帝国を襲う理由が、それ以外に思いつかないのだから。


 それでも、認めてしまうと全てが終わってしまうような気がして、漠然と神に赦しを乞うのが精一杯だった。


 それに、その怪物の由来が何であれ、強大な戦闘能力によって味方の被害が減少していて、難攻不落だったエルフの森を攻略できているという結果が全てだった。




 その怪物が投入されて以降、エルフたちは劣勢に陥った。


 その怪物には、エルフたちの戦術も、矢も剣も魔法も通じない。

 逆に、エルフたちは、怪物のまき散らす爆炎や暴風、純粋な破壊の嵐の前に蹂躙されるばかり。



 いくら地の利を利用して、知恵を振り絞ったとしても、圧倒的な力の差の前には、戦う力のない同胞が逃げる時間を稼ぐくらいしか――それすらも満足にできなかった。


 むしろ、下手な抵抗はいたずらに被害を増やすだけであり、結局、非戦闘員も含めて、かなりの数のエルフが犠牲になった。


 これは、帝国としてもかなりの損害であった。



 森に散在しているエルフ氏族の攻略は、帝国の版図を広げるための戦略であると同時に、エルフという種を支配下に置き、利用しようとする目的もあったのだ。


 エルフの多くは、帝国が身をもって知っているとおり、弓の名手が多く、また魔法を扱うことにも長けている。


 何より、人間の倍以上の寿命の長さのおかげで、蓄積できる知識や経験の量が段違いである。

 その分、レベルが上がりにくいといった欠点はあるものの、戦闘関連以外でも容姿端麗な者が多いせいで、観賞用や愛玩用としての人気も高かった。



 しかし、当然ではあるが、死体には価値はない。


 エルフの村を陥落させたとしても、上層部の予想より遥かに少ない収穫では、攻略目的からすると失敗と大差ない。

 いくら秘密兵器の投入実験という側面があるにしても、指揮官の責任問題にもなりかねない。



 そこで、処分を恐れた指揮官が、損害の補填をしようと、運用規定を無視して(くだん)の怪物を率いて、いまだどこかに隠れているか逃げ続けているであろうエルフの残党狩りに向かった。



 もっとも、数日後に彼らが満足な成果を上げられずに戻ってきた時には、砦のあった場所は奇麗な更地になっていて、彼が処分されることはなかったのだが。


 ただし、それは決して幸運ではなかった。


 ほどなくして、彼らは制御可能限界を超えて暴走した怪物の餌食になる。


◇◇◇


 その男は、辺境の町とはいえ、名家と呼ばれる家の次男として生まれた。


 男は幼い頃から、優秀で人望も厚い父親や兄たちと比べられ続け、早々に努力することを諦めた。

 ただ、保身だけには長けていたので、責められない程度に努力をしている振りはしていたし、表向きは素直に、そして謙虚に振舞っていた。



 そんな男の周囲からの評価は、人が好いだけの無能。

 両親もそんな彼を心配しつつも、優秀な長男にかかりっきりになってしまう。



 その男は、内心では常に彼と兄を比べようとする両親には嫌気が差していたし、彼を見下す兄を憎悪していた。

 そんな男が、帝国内に流行しつつあった終末思想に触れ、悪魔や邪神崇拝に傾倒していくのも自然な流れだったのかもしれない。


 それでも、人目を忍んで、怪しい儀式に夢中になっている間は害はなかった。



 そんなある日、両親と兄が出先で盗賊の襲撃に遭い、命を落としてしまった。


 治安の悪化している帝国内では珍しくもない不幸な事件でしかなかった。

 しかし、目の上のたん瘤がまとめて消えた形になった男には、それが彼の祈りを、神か悪魔が聞き届けたのだと信じ込んでしまった。


 しかし、そうして浮かれていられたのも束の間のことで、これまで家のことなど全くやってこなかった男に、いきなりその全てを担うようなことなどできるはずがない。



 当然、先代の遺した資産を、ただただ食い潰していくだけ。


 そんな頼りない男が愛想を尽かされるのも当然のことで、先祖代々積み上げてきた人脈なども失われていく。

 そうして、家は急速に衰退していった。



 男は、それで心を入れ替えて真剣に生きるのかと思えば、更に邪教にのめり込んでいった。


 悪いのは自分ではない。

 間違っているのは周囲の人間の方であり、世界の方である。

 そして、間違っているこの世界を、神に選ばれた自分が壊すのだ――と、多くの人が子供のうちに卒業するようなことを、本気で思い込んでいた。


 そんな中、同じような思想の集団と出会った。

 更に性質(たち)の悪いことに、彼は金だけは持っていたため、その資金源となって、活動がどんどん過激化していくことになった。



 男が奴隷を買ったのは、邪神に捧げる生贄にするためだ。


 邪教徒の活動も、元々は、信者の血や家畜を捧げる程度のお遊びだった。


 それが奴隷を使うようになってエスカレートしていった結果、実際に命を奪うばかりか、その苦悶をも捧げようなどと過激な方へと発展していった。


 そんな中で目覚めた男の嗜虐心は、儀式とは関係の無いところでも奴隷を暴行したり、時には他の奴隷の目の前で殺して、その肉を食ったり、無理矢理食わせたりするようになっていた。


 男を恐れる奴隷たちの目が、彼の自尊心を満たす。

 そして、エスカレートして行き着いた、殺して食らうという強者にのみ許された行為に、まるで自分が神になったかのような全能感を覚えていた。


 男にとっても奴隷は決して安い買い物ではなかったが、それから得られる快楽は、男の経済観念を破壊するには充分な魅力があった。



 しかし、男が用意する奴隷だけでは満足できなくなった狂信者たちは、人攫いにまで手を染めるようになった。


 彼らには奴隷を用意できる資力がなく、そこに付けこんで増長した男の態度に思うところがあったことも一因だった。



 当然、そんな生活は長続きはしない。

 あっという間に彼らの所業は官憲の知るところとなり、多くの仲間は逃げる暇もなく摘発されるか、その場で処分された。



 男や一部の邪教徒たちは、すんでのところで摘発を免れて逃げ出すことに成功したが、残されたのは僅かな金と数人の奴隷のみ。

 それから、合流した同志たちと共に逃げ回るうちに、邪神を祀る祭壇――廃教会に辿り着いた。




 そこには先客がいた。


 それは、男が――邪教徒たちが見たことのないような姿をした、醜い怪物だった。


 それが、彼らが造った祭壇に横になって、(いびき)を立てて眠っていた。


 祭壇といっても、事情を知らない者が見れば、とてもそうは見えない粗末な物だが、彼らにとっては神聖なものである。

 無論、そんな神聖なものを醜い怪物に占拠されるなど、彼らにとっては許し難いことだった。



 しかし、それの寝首を掻いてやろうと不用意に近づいた狂信者のひとりが、あまりの速さに反応することもできずにその巨大な手で無造作に掴まれ、潰された。

 そして、目を覚ました怪物に、頭から食われてしまった。


 呆気にとられる、若しくは恐慌状態に陥った邪教徒たち。

 しかし、男の目には、なぜかそれがとても神聖な光景に見えた。


 強者が圧倒的な力で弱者を踏み(にじ)る光景は、男の歪んだ理想そのものである。



 そして、それを体現している目の前の存在こそが、彼らが待ち望んでいた神なのだと主張を始めた。


 いくら何でも無理がある主張だったが、とにかく死にたくない一心だった者や、混乱していた邪教徒たちが、目の前の現実に整合性を求めた結果、異論が出ることなく受け容れられてしまった。


 当の怪物も、彼らに崇められるのが気に入ったのか、生贄として差し出される奴隷や、反対意見を言おうとして吊し上げを食った狂信者にしか手をつけなかった。




 そうして人間と怪物、そして食料代わりの奴隷たちの奇妙な生活が始まった。


 しかし、少しばかり時間が経つと、邪教徒の中にも冷静さを取り戻して、その異質さに気づく者もいた。

 しかし、そんなことを指摘したり逃げ出そうとすれば、次に食われるのは自分である。

 それを理解した上で、自ら命を捨てるような真似などできるはずもない。


 死にたくないから、他人より良い思いをしたいから、それもつらい思いをすることなく――そんな甘い考えで邪教にのめり込んでいた彼らには、この状況を打破する手段などなかった。


 彼らにできたことは、ただひとつだけ。


 壊れることだった。




 人が、人を食らう怪物に頭を垂れて、そのおこぼれを啜る。

 そのすぐ横では、理性など失ってしまったかのように享楽に耽る、悪夢のような光景。


 運悪くここに連れてこられた奴隷の少年少女は、それを虚ろな目で眺めていることしかできない。



 彼らは、同族食いをしている人間たちと違って、長い間まともな食事を摂っていない。


 当然、怪物の食べ残しは、邪教徒たちがそれこそ骨までしゃぶり尽くすので回ってこない。

 それ以前に、友人を食べてまで生きるという発想がなかった。


 むしろ、衰弱が激しく、動くどころか話すことさえ――意識を保つことさえ難しい状態では、目の前で行われていることが、夢か現実かの判断もできなかった。



 ふと意識が戻ったエルフの少年は、現実ではあり得ない悪夢、若しくは悪夢より酷い現実がまだ続いていることに、何度目かも分からない絶望を覚えた。


 この悪夢に早く終わってほしい。

 それは彼だけでなく、他の奴隷たちも同じ思いだった。


 怪物に食われるくらいなら、このまま眠るように餓死した方がマシだとも思っていたが、そうやって先に死んだ友人が、しばらくしてゾンビ化したのを見てしまった後ではそれも恐ろしい。



 本音では、これが現実であろうと夢であろうと死にたくなんてなかった。


 しかし、この地獄でこれ以上生きていくことも、もう考えられない。


 生物としての本能で死を恐れているが、絶望に染まった心は安らかな死を望んでいる――そんな状態だった。




 そんな少年に、怪物の毛むくじゃらな手が伸びる。


 それでも、少年は「いよいよ僕の番か」くらいにしか思わない。


 ピンチに都合よく助けが現れることなどないことは、友人がそこにいる主人に彼の目の前で殺されて、そして食べられた時に、いやというほど思い知らされた。



 この世に神などいない。

 少なくとも、彼らを助けてくれる神などおらず、間違っても目の前の怪物が神などではない。



 そもそも、この怪物は、村を襲って多くの大人を殺した帝国の兵器である。


 少しばかり姿形は変わっていたが、この異様な雰囲気を間違えようがない。

 むしろ、その時の怒りや恐怖を思い出してか、少しばかり意識がはっきりしたくらいだ。



 もっとも、戻ったのは少しばかりの意識だけで、身体を動かすような余力は無い。

 動かせたとしても、何かができるわけではないだろうが。


 彼が無力な子供であることを差し引いても、これに勝てるのは、それこそ勇者などの特別な存在だけだ。



 燃え尽きる前の蝋燭(ろうそく)の煌めきか、怪物に掴まれた際に骨折した痛みでか、少年の意識が覚醒した。


(やっと終わる。でも、痛いのは嫌だな。――ここに連れてこられなかった子たちは無事なのかな? また会いたいな――)


 最初に感じたのは、痛み。

 そして安堵。

 それから、友人たちのこと。


 目をギュッと瞑り、間もなく訪れるであろうその瞬間を待ちながら、走馬灯のようにいろいろな思いが巡る。


(ああ、やっぱり死にたくない! いやだ、いやだ! 悔しい――神様、助けて!)


 しかし、間近に迫った怪物の巨大な顎と酷い悪臭に、燃え尽きる前の蝋燭のように絞り出した生命力が、本能的に死を拒んだ。


 これ以上ない嫌悪感と死の恐怖の中で、既に手も足も、口すらも動かなかったが、それでも、心の中だけでも精一杯の抵抗をする。


 しかし、いよいよ血生臭い怪物の口内に少年の頭が入り、動かない身体で身構えた瞬間、想像していたものとは全く違う、何ともいえない良い匂いと、温かく柔らかいものに包まれた。



「呼んだ?」


 少年はすぐ側からかけられた、とても単純なはずの言葉が理解できなかった。


 勇気と力を振り絞って、恐る恐る目を開けた少年の目に映ったのは、彼の表現力では説明のできない存在だった。


 透き通るような白い肌に、夜の闇より黒い髪、濡れたルビーのような真紅の瞳をした美しい女性が、彼に優しく語りかけていたのだ。


 それは、少年がこれまでに経験したどんなものより非現実的な光景だった。

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