06 狩る者と狩られる者
――第三者視点――
今より遙か昔、金銭などを対価に、魔物を狩ることを生業としていた一族が存在していた。
その地に突如として吸血鬼の魔王が現れ、暴虐の限りを尽くしていた時にも、彼らは平和を守るために立ち上がり、何の見返りもなく戦ったという。
しかし、歴戦の猛者である彼らでも、強大な力を持つ吸血鬼を真正面から打ち破るのは難しかった。
それでも、力を持つがゆえに驕りがある吸血鬼たちを、チームワーク――仲間との絆の力で対抗し、そして遂には魔王すらも退けたという。
ただ、当時の彼らの力では、吸血鬼の魔王を完全に滅するには至らなかった。
このままではいずれ魔王は復活してしまう。
それでも、いつの日か訪れるそのときに、今度こそ完全に滅しよう。
彼らは、この戦いで散っていった仲間たちの魂にそう誓って、この地の監視者、そして守護者となった。
その後、周囲の村や町からも感謝されて、尊敬も集めて、この辺り一帯の盟主のような立場になった。
というのは表向きの話である。
彼らは、勇者のような超常の力を持っていなかった。
そして、魔王のような、普通の人間では到底敵わない強敵と戦うような命知らずではなかった。
彼らは、魔族の中ではほんの少しだけ戦闘能力に秀でていて、生まれたその時からそれを磨ける環境にあったというだけだ。
彼らが主に獲物としていたのは、魔石や素材が採れる小・中型の魔物だった。
飽くまで生活のための狩りであり、魔王やその眷属のように、リスクに見合わない強敵に手を出すほど無謀ではない。
当然、慈善事業のようなまねは一切行っていない。
そんな彼らが吸血鬼の魔王の軍勢と戦うことになったのは、正義感や依頼からではない。
単なる成り行き――魔王の誕生した地から、そう遠くない所に彼らの村があったというだけの話だった。
それでも、彼らが吸血鬼と戦ったのは事実である。
しかし、正面から戦えるのは下級のはぐれ者くらいで、それも数的優位を作った上でのこと。
それが貴族級になると、逃げの一手である。
なぜか吸血鬼のランク分けには爵位が用いられていることが多く、自称貴族など笑ってしまいそうなものだが、その実力は、遭遇した者には笑えない。
不運にも遭遇してしまった時には、どう戦うかではなく、どう生き延びるかを考えるしかない。
魔王と戦うなど、到底考えられなかった。
彼らは、決して正面からは戦わず、ゲリラ戦や破壊工作に徹して、少しでも吸血鬼の侵攻を遅らせることに注力した。
無論、それは彼らの本意ではなかったが、彼らの実力では、非戦闘員の避難の時間を稼ぐくらいしかできなかったのだ。
しかし、理由は定かではないが、突如として魔王とその眷属たちからの攻撃が止んだ。
程なくして、偵察中の彼らに、魔王に囚われていた人たちが保護された。
そこで、拉致被害者たちから魔王が倒されたことを知らされたが、誰ひとりとしてそこでの詳細を話そうとしない。
腑に落ちないところもあったが、彼らは戻る場所のない被害者たちを、大幅に減ってしまった村人の補充という目的もあって村に迎え入れた。
それから、そんな事実も含んだ噂が、口の軽い商人から各地へ広がって、いつしか魔王を駆逐したのが彼らの功績であることにされていた。
それは、彼らがそれに気づいた時には、撤回することなど不可能な状況になっていた。
彼らも被害者だった。
無関係な人たちが安心したいがために、分不相応な英雄という業を背負わされて、次の有事の際は真っ先に生贄になることを予約されたのだ。
無論、その後の努力次第では挽回できることではあるが、彼らはそれをできなかった。
◇◇◇
月日が流れ、当時のことを知る者は少なくなった。
子孫たちのことを想えば、増長するのも無理もない環境に置き続けるのは憚られたが、誰の耳に入るかも分からない状況で真実を口にすることもできない。
そのうち、口を酸っぱくして「慢心してはいけない」と説いても、うるさがられるだけになる。
それどころか、「ご先祖様は、努力して勇者に匹敵する強さにまで至ったのだ」と嘯いても、「その血を引く自分たちもそうなれる」と、増長するだけだった。
更に月日は流れ、いつしか魔物狩りの一族は、吸血鬼狩りの一族と名を変えて、かつてない繁栄の真っ只中にいた。
当時を知る者が残っていれば猛烈に抗議しただろうが、その頃には既に吸血鬼も過去の話だった。
痛みを伴う教訓であれば違ったのかもしれないが、英雄が勝利する物語は時の流れと共に脚色され、事実は遠ざかっていった。
ただ、吸血鬼狩りの一族には、頭領のみに閲覧が許される文献が存在していた。
それは、世間の人が知ることはない真実が記されている物だった。
そこには吸血鬼の強さや残虐さ、特性や対処法、更には幼女を怒らせてはいけないことなど、文献なのか日記帳なのか分からないような内容も含まれていた。
そして、その最後には、魔王を倒したのは彼らの一族ではないことと、魔王とは絶対に戦うなと記されていた。
当代の頭領【ベネット】は、それを一笑に付した。
そこに記されていた真実に、信憑性が無かったのだ。
ベネットも、当時の状況で命懸けで戦ったご先祖様を尊敬していたが、過去と現在では状況が違う。
スタート地点が違う。
積み重ねてきたものも違う。
背負っているものの重さも違う。
現在二千人ほどいる狩人たちの半数は、マスターレベルに到達している。
ベネット自身のレベルも27と、歴代の頭領の中でも上位に入る。
彼も30歳を目前に肉体的な成長こそ鈍ってきたが、技の切れや勝負勘は年齢を重ねるごとに冴え渡っている。
さらに、ひとり息子の【ライアン】は、彼を軽く上回る才能を秘めている真の天才であった。
それは決して親莫迦ではなく、誰の目にも明らかなものであった。
ライアンの才能は、勇者もかくやというほど、文武共に抜きん出ていた。
頭領とは決して世襲制ではないが、息子は間違いなく歴代で最高の狩人に、そして頭領になる。
それは、いずれ訪れるであろう新しい時代に、誰もが想いを馳せるくらいの分かりやすい力だった。
ベネット自身も、息子に追い越される日を、一抹の寂しさを覚えるものの心待ちにしていた。
◇◇◇
始まりは十年ほど前、西の方にある小さな村に起きた異変だった。
付近を巡回していた狩人のパーティーが、無人になっている村を発見した。
ひと通り見て回ったものの、僅かに戦闘の痕跡はあるが、死体はおろか血痕すら残されていない。
彼らがその情報を村に持ち帰ると、すぐに詳細な調査するために、別のパーティーが派遣された。
しかし、そのパーティーとの連絡が途絶した。
そんな調査隊の捜索に向かったパーティーが発見したのは、アンデッドと成り果てた彼らの姿だった。
それも、ただのアンデッドではなかった。
一見すると生者と変わりはないが、生者特有の気配が無い。
躊躇なく生者に襲いかかる姿に知性は感じられなかったが、捜索隊を翻弄する速度や怪力は、鈍重なゾンビとは一線を画している。
それどころか、その身体能力で、生前身につけていたのであろう体術やスキルを繰り出してくる。
そして、仕留めた獲物の血を啜る。
この特徴に該当するのは、「吸血鬼」しかない。
遭遇が夜明け前だったことが幸いして、日の出まで凌ぎきって、辛うじて何人かは逃げ延びることができた。
もうひとつ救いがあるとすれば、下位の吸血鬼には眷属を作る能力はないため、ここで餌にされた犠牲者たちが、吸血鬼となることはないことだ。
もっとも、ゾンビになる可能性が高かったが。
逃げ延びた狩人たちは、村に戻るとすぐにベネットに報告を行った。
その内容に、そこに居合わせた狩人たちは色めき立った。
マスターランクに至っている者も多い調査隊が、下級と思わしき吸血鬼を相手に敗走したのだ。
調査隊のリーダーの油断や、指揮の拙さを責める声も多く上がった。
生存者が酷く混乱していたこともあって、報告の信憑性に問題はあった。
それでも、ベネットは、すぐさま百人を超える討伐部隊を編成して、仲間たちの魂を解放すべく進軍を開始した。
◇◇◇
報告にあった村で待ち受けていたのは、9人の吸血鬼。
ただし、狩人たちのかつての仲間ではなく、全く見ず知らずの吸血鬼である。
その吸血鬼たちは、狩人たちが調査を行う原因を作った――最初にこの村を襲った吸血鬼たちであり、調査隊を吸血鬼にした張本人でもあった。
彼らが村を襲ったのは、食料調達――人を攫うためだった。
調査隊と遭遇した時は、物資の回収のために訪れていて、彼らに手を出したのはただの戯れでしかなかった。
そして、今日ここで待ち受けていたのは、逃げた者たちが仲間を連れてくるのを期待していたからである。
ベネットは、この状況を「吸血鬼たちが、この村を拠点にしようとしている」と誤解した。
当然、そんなことを認めるわけにもいかず、吸血鬼の排除に向けて動く。
狩人たちは、吸血鬼狩りとしての自分たちの力と、十倍を超える数の差に慢心して、夜明けまで時間があるにもかかわらず、正面から押し潰そうと攻撃を開始した。
当然、それだけの大人数で行動していて、吸血鬼に気づかれていないはずがない。
待っていましたとばかりに、狩人たちを迎え撃つ吸血鬼たち。
狩人たちも、さすがにこの大人数での不意打ちが成功するとは思っていない。
そして、実際に成功しなかったのだが、なぜか違和感が拭えない。
多くの狩人たちの覚えていた違和感の正体は、この場に貴族級吸血鬼がいたことだった。
本能的には「戦うべきではない」と理解していながら、魔王を倒したご先祖様よりも強い自分たちが、吸血鬼に負けるはずがないと思って始めた戦い。
それが、圧倒的な数的有利もありながら、蓋を開けてみると、戦況は不利――敗色濃厚だった。
それでも、狩人たちはそれを認められない。
これまで信じてきた虚飾と、目の前にある真実の間で精神の均衡を欠き、いわゆる正常性バイアスが働いていたのだ。
なぜか苦戦はしているが、最後はいつもどおり、勝てるはずだと。
狩人たちが現実に気づいたのは、仲間の大半が行動不能にされた後だった。
彼らの多くは吸血鬼たちの食糧として捕らわれ、食料として魅力がない者は、殺されるか吸血鬼に変えられていた。
眷属化したばかりの吸血鬼ですら3人がかりでなければ抑えられず、最初にいた9人に至っては、その倍でも軽くあしらわれる。
ここまで来ると、さすがに現実を受け容れざるを得ない。
自分たちは強者などではなかったのだ。
この状況から約三割が逃げ延びることができたのは、ただの幸運ではない。
これは、吸血鬼たちにとっては遊戯なのだ。
抵抗しない者を甚振っても面白くなく、逃げるという抵抗をする者を、ゆっくりと追い詰める遊戯である。
吸血鬼の快楽は、「吸血」という行為に集約される。
しかし、そこに至るまでの過程や状況、そして贄の恐怖や恥辱などの感情が、それを彩るスパイスとなる。
その甘美な味わいは、生きるために吸血するのではなく、吸血するために生きている者を生むほどのものである。
散り散りに逃げ延びた狩人たちは、それぞれに「隠れ家」とよばれている活動拠点へと逃げ込んだ。
隠れ家は、彼らの活動範囲を広げる、又は安定させるために、付近一帯に広く点在している。
そして、それは巧妙に偽装されていて、そこに在ると知っていなければまず発見されることのない、彼らのセーフゾーンでもあった。
しかし、彼らを追っていたのは、吸血鬼化した元仲間である。
知性の大半を失っていても――いずれ全てを失うとしても、すぐに消えるものではない。
僅かに残る生前の記憶か、血への渇望や執念か、吸血鬼化した狩人も、本能的にそこへと辿り着く。
隠れ家にいたのは、逃げ込んだ討伐隊だけではなかった。
吸血鬼討伐に出た隊とは別の仕事に就いていた隊や、そこの保守などの管理を行う者など、少なくない人数が滞在、若しくは常駐していた。
そこに、かつては仲間であった吸血鬼が、貴族級の吸血鬼を連れてやって来る。
吸血鬼にとってはちょっとした娯楽の始まりであり、狩人たちには悪夢の始まりだった。
狩人たちは、初動を誤ったことで多くの隠れ家を失ってしまった。
そのせいで、彼らの先祖が用いたゲリラ戦術や、大掛かりな罠などを用いた工作も制限されることになり、日に日に追い詰められていくことになった。
そんな状態が何日か続くと、討伐隊に参加していなかった者たちも異変に気づき始める。
吸血鬼の追跡を振り切ったベネットが村に戻った時、村は混乱の最中にあった。
村に残っていた討伐隊の家族や友人が、彼らが予定を大幅にすぎているのに帰ってこないのはどういうことなのか、なぜベネットだけが戻ってきたのかと詰め寄るが、彼はそれに答えることができなかった。
ただ、討伐隊全体に油断があったこと、予想以上に吸血鬼が強かったことを言い訳として、早急に事態の解決を図ると空約束するのが精一杯だった。
それでも、ベネットに続いて生還した者たちの口から、当時とその後のことが語られる。
そうして、全てではないが、被害の全容が明らかになっていく。
それによってベネットが責められることは、彼の想定どおり。
しかし、その強さは彼が想像していたほどではなかった。
それは、彼や先代たちが、文献の存在や内容について黙していたからである。
誰も吸血鬼の真の脅威を知らないのだ。
ベネットも被害者だと同情されたのだ。
それによって、ベネットは絶対に文献を公開できなくなった。
もしも公開して、大切な人を喪い復讐に燃える者や、吸血鬼狩りの一員として誇りだけが支えの者たちが、真実を知ればどうなるか。
彼らの行き場のない感情が、ベネットに向けられることは想像に難くない。
最悪の場合は、吸血鬼の手を借りるまでもなく、内紛で自滅する可能性もあり得るのだ。
被害者遺族の感情も理解できるが、そもそも、このような事態に陥る前に文献の存在や内容を伝えたところで、ベネットと同じく信じる者はいなかっただろう。
むしろ、そんな腰抜けに頭領は務まらないと、資質を疑われただろう。
そう考えると、むざむざ彼らの感情の捌け口になるなど、保身を抜きにしても納得できるものではない。
とはいえ、他の誰に頼れるような状況でもない。
頭領として、村が存続できる方法を考えなくてはいけない。
こんな心労を抱えるくらいなら、頭領なんかになるんじゃなかった――と、ベネットが何を思っても後の祭りである。
ベネットは心労で日々薄くなっていく頭頂部に手をやりながら、どうするのが最善か悩み続けた。
◇◇◇
答えを出せないまま、時間と人命は浪費され続けた。
村にまで侵攻されていないことが救いだが、それもいつまで続くか分からない。
吸血鬼に対しての基本的な戦術は、少数によるゲリラ戦を仕掛けるだけの消極的なものだった。
しかし、襲撃には吸血鬼たちの目から村を隠すための陽動も兼ねていたので、リスクはあってもしないというわけにはいかない。
当然、撤退する際の方角にも非常に気を遣った。
村の守りは万全だが、戦場にならないに越したことはない。
村を守るために、捕まったり吸血鬼にされて情報を漏らさないよう、万一の場合には自死する者も多く出た。
そんな日々の中で、時折下位の貴族に勝利することもあったが、それは逆に残酷な希望を抱かせ続けることにもなった。
そして、今より二年前、遂にベネットも引き返すことができない状況に陥った。
最後の砦、隠れ里が吸血鬼に襲撃されたのだ。
遭遇戦では勝ち目は薄いが、防衛戦では、城壁というには些か粗末ではあるものの簡単には越えられない壁と、古めかしい防衛兵器、そして地の利がある。
これまでのように、易々と負けることはない。
そんな希望は早々に打ち砕かれた。
資金不足のため、それしか入手できなかった骨董品のような兵器は、いつでも使用できるよう整備はされていて、実際に使用はできた。
しかし、砲手の練度が低すぎた。
頭では理解できていても、いざ実戦となると、緊張や焦りで上手くいかない。
それに、狙うは大型の魔物ではなく、二メートル弱の吸血鬼である。
さらに、一部の吸血鬼は、身体を霧化して、物理攻撃を無効化できる。
魔法で狙うにしても、満月の夜とはいえ、夜の闇に溶けた霧を見分けるのは至難の業である。
吸血鬼側としても、霧化できる者はごく一部の貴族級だけ。
霧化中は魔力を消費し続けるため、ずっと霧化できるわけではないし、復活のための魔力も残さなくてはいけないので、狩人たちが思うほど便利な能力ではない。
そして、実体に砲弾が直撃すれば、さすがに戦闘不能になる。
朝日が昇るまでに再生できなければ、塵になってしまう可能性もある。
彼らにとっても、砦攻めは非常に危険な遊びであったが、時の運は彼らに味方した。
砲手の照準は、見える的――霧化できない下級の吸血鬼に集中して、真に危険な貴族級については見落としがちだった。
その隙に乗じて、貴族級吸血鬼が城門を越えることに成功する。
その結果、兵器と砲手は、町の内部に侵入された吸血鬼によって次第に無力化されて、狩人たちは撤退戦に移行せざるを得なかった。
◇◇◇
この撤退戦で、狩人の数は当初の3分の1以下になり、ベネットも妻を喪った。
それでも、闘志を失うものは少なかった。
多くの者がそれぞれ何かしら大切なものを奪われ、穢されて、復讐の念に憑りつかれて、半ば死兵と化した。
そして、少数のそうでない者も、同調圧力の前に屈していた。
それは妻を喪ったベネットも同じであり、舵を取る者がいなくなった彼らは破滅へと突き進んでいく。
ただ、自身の命や尊厳すら道具として使いだした狩人たちには、吸血鬼たちも手を焼くようになる。
そうして、結果として侵攻ペースが落ちたのは、皮肉としかいえない。
さらに、半年前の作戦で恋人を攫われたライアンが、《憤怒》のスキルを獲得すると、初めて中位の吸血鬼を倒す快挙を成し遂げる。
《憤怒》のスキルは、全能力を限界以上に引き上げる破格のスキルだが、活動可能時間が短い上に、発動中は理性を失ったり、発動後は反動で動けなくなるほど消耗するなどのデメリットがある。
結局、中位の貴族を倒せたのは、その吸血鬼が油断していたところが大きい。
そんな博打要素の高いスキルでも、あるとないでは全く違う。
大勢は相変わらず吸血鬼に有利なままであったが、吸血鬼側のリスクは確実に上昇した。
現状、吸血鬼にとって警戒すべき存在はライアンひとりだけだが、いつどんな切っ掛けで、新たな脅威が生まれるとも限らない。
人族を襲うのが食料の確保のためであれば必要なリスクといえるが、大半は吸血鬼になって力に溺れた者たちの憂さ晴らしや暇潰しでしかない。
そんなことに命を懸けるのは、ごく一部の物好きだけである。
また、それ以外にもやむを得ない事情もあって、自然と吸血鬼たちの活動は消極的なものになっていった。
そうなると、狩人たちの勝率も上がっていく。
それが燃え尽きる前の輝きだとしても、狩人たちはようやく吸血鬼狩りとしてのスタートラインに立ったのだ。




