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幕間 勇者になれなかった者たちの非日常

 (くだん)の冒険者の泊まっている宿は、ユウジたちが中に入るのを躊躇うくらいの超高級ホテルだった。


 その外観は、冒険者が好んで使う安宿や、彼らが生活している寮のような軍の施設とはまるで違う。

 王侯貴族の別荘だといわれても信じてしまうくらいの煌びやかさで、住む世界の違いを思い知らされる。

 むしろ、このホテルの方が前線の町には似つかわしくない。


 しかも、彼女が泊まっている部屋は、最高級のスイートルームらしい。

 ますます人物像が分からなくなる。



 少なくとも、Bクラスの冒険者が泊まれるようなホテルではない。

 金額的にも格調的にも。


 当然、ドレスコードを満たしていない場合は門前払いされる可能性もある。


 一応、ユウジたちも支給されている軍服は着ているものの、非正規である彼らの物は平服とほぼ変わらない。

 最悪の場合、軍に苦情が入れられるだろう。



 それでも、彼らは勇気を振り絞って、表面上はにこやかな笑顔で応対してくれた従業員に要件を告げると、運良くすぐに会ってもらえることになった。




 ユウジたちが、従業員たちの冷たい微笑みに耐えながらしばらく待っていると、白銀の鎧を着込だ人物が、5人の幼いエルフの奴隷たちを伴って現れた。


 ホテル内で奴隷を連れているという非常識さにも、階段を一段降りるたびに、一歩歩くたびに、白銀の鎧がガシャガシャと音を立てていることにも、ホテルの従業員に気にした様子はない。



 格調の高いホテルでは、ドレスコードが存在するのが普通である。

 この帝国ホテルもその例に漏れない。


 そして、当然のことだが、全身鎧は正装ではない。


 同じく正装ではない――平服にしか見えない制服のユウジたちは、一部従業員から汚物を見るような目で見られている。


 しかし、彼女は支配人と思しき男性にエスコートまでされている。


 確かに、彼女の纏っているミスリル以上の輝きを放つ鎧と比べれば、軍から支給されたぼろぼろの布きれなど比べるべくもない。

 それでも、全身鎧がこの場に相応しくないことには違いがないはずだ。


 微妙に納得がいかない感もあったがその場は堪え、彼女がやって来るのを待った。




 程なくして、白銀の鎧がユウジたちの前に到着すると、エスコートしていた支配人らしき人物は、無駄のない動きで下がっていった。


 彼女はこう見えて実は王侯貴族なのか、若しくは金の力なのか――ユウジはそんなことを考えながら、改めてユノなる人物を観察する。



 鎧や兜のせいで正確なところは分からないが、身長は160センチメートル前後だろうか。

 180センチメートルあるユウジからは、見下ろしてしまう形になっている。


 更に近くでよく見ると、彼女の被っているグレートヘルムは、開口部に当たる部分は黒くペイントされているだけで、中の顔を窺い知ることができない。

 というか、それはヘルメットというよりは、ただのバケツであった。


 これは何かの冗談なのか、触れてはいけない何かなのか、ユウジたちには判断がつかない。


 ヒントを求めて目線を彷徨わせるが、この明らかに異常な主人に対して、奴隷の子供たちの身形は、奴隷の証である首輪以外は至ってまともである。

 むしろ、奴隷としては不相応な、まるで貴族の子弟のような、ユウジたちの着ている服よりも遥かに上等な物である。


 そして、ホテルの職員たちの、ユノに対する態度にも不自然なところは見られない。


 ユウジたちは、ユノがどんな人物なのかを何パターンにもわたって想定して、それをベースに交渉しようと考えていた。

 しかし、当のユノは、どのパターンにも当て嵌まらない。

 この想定外の事態に、ユウジたちの頭から事前に用意していた想定問答がすっかり抜けてしまった。 



「こんにちは。初めまして、ユノです」


 透き通るような涼やかな声で、鎧の草摺を摘まんで淑女風の挨拶をするユノに、ユウジたちの思考が止まる。


 所作は素人目にも「見事」のひと言だった。

 しかし、全身鎧のフル装備でカーテシーをする人を見たのはユウジたちには初めての経験で、どう返すのが正解なのか分からない。

 それで返事をする機会を逸してしまった。

 これからお願いごとをするに当たって、いきなりの大失態である。



「立ち話も何ですからカフェにでも。――支配人、構わないかな?」


 ユノは、ユウジたちの無作法を咎めるでもなく、何も気にしていないといわんばかりにお茶に誘った。


「もちろんでございます」


 話しの邪魔をしないようにと控えていた支配人がスッと進み出すと、満面の笑みで即座に応える。

 つい先ほどまで、ユウジたちを害虫か何かを見るような目をしていた人がだ。


 なお、彼らが不興を買っている最大の原因が、ユノを値踏みするような彼らの態度にあったのだが、精神的にいっぱいいっぱいのユウジたちにはそれに気づけない。



「ありがとう。さて、貴方たちはお客人が緊張しているみたいだから、案内してあげて」


「「「はい!ユノ様!」」」


 ユウジたちが戸惑っているのを余所に、ユノは再び支配人にエスコートされて先行してしまう。

 その後を、エルフの子供たちが、取り残されたユウジたちの手を引いて追いかける。



 舞い上がってしまっていたユウジたちだったが、彼らの手を引いている子供たちが微かに震えていたり、表情が蒼褪め、強張ったりしていることに気づくと、一気に冷静さを取り戻した。


 子供たちがユノに向けていた眼差しや返事は信頼に満ちていたが、彼らに対してはそうではない。


 つまり、どんな理由があるのかは分からないが、子供たちはユウジたちを――もしかすると、ユノ以外の人間を恐れているのかもしれないのだ。

 だというのに、子供たちの倍以上を生きている自分たちがいつまでも怯えていてはいけないと、ユウジは心の中で自身を一喝して、気合を入れ直した。




 気を引き締め直したユウジは、歩くのが申し訳なるような高級なカーペットの上を心を殺して進み、腰掛けると二度と立てなくなりそうなフカフカなソファに腰を下ろした。


「初めまして、ユノさん。僕は帝国軍下部組織所属のユウジといいます。このふたりは同僚のシノブとメイコです。僕らは――」


 ユウジは腰を降ろしてしまってから自己紹介もしていなかったことを思い出して、慌てて立ち上がると機を逸していた自己紹介を済ませた。


『自己紹介も済んだことだし、まずはお茶でも。それと、堅苦しいのは抜きにしてもらえるかな?』


 しかし本題に入る前にユノに遮られてしまい、座り直すことを余儀なくされた。


「貴方たちも座りなさい。――私は紅茶で。この子たちにはジュースと、彼らにも好きな物を。それと何か軽く摘まめる物を適当にお願い」


「畏まりました」


「は、はい」


 この世界では、奴隷が主人と共に食事をするなど有り得ないことだ。

 例外的に、異世界人やそれに影響を受けた者などは気にしないこともあるが、奴隷制度を利用しながら人道を口にする、若しくは「食事をみんなで摂った方が効率的」なくらいの集団規模で奴隷を所有するような者は稀である。


 少なくとも、奴隷商ではそのような希少な例についての教育は行われない。

 それを証明するように、エルフの子供たちも返事はしたものの戸惑っていた。


 しかし、ユノはそんなことはお構いなしに、わざわざ立ち上がるってから、ひとりずつ子供たちの手を引いてソファに座らせる。


 そして、座らせてからもあれこれ世話を焼いているユノの姿は、主人や支配者というより母親のそれであり、ユウジたちはユノという人物が噂ほど悪い人物ではないのかと思い始めた。


「お行儀良くね」


 そして、他の宿泊客に対する配慮も忘れない。

 荒事とは無縁なホテル内で完全武装している時点で配慮としては微妙だが、一応は周囲のことも気に懸ける良識は持っている。



「あっ、美味しい! ユウジ、メイコ、これ、美味しい!」


「う、うん。こんなに美味しいお茶とお菓子、久しぶりだね」


 目的を忘れてはしゃぐ女性陣を余所に、ユウジは逸る気持ちを押し殺して、世間話に付き合いながらも(つぶさ)にユノを観察していた。


 しかし、先ほども感じたとおり、奴隷の子供たちを両側に座らせ、汚れた口元を拭ったりしている姿には母性しか感じず、「死神」というイメージからは程遠い。

 子供たちも、ユノにだけは心を許しているように見えるし、それは無理やりやらされている演技にも見えない。



 それでも、この世界には現代日本ほど手の込んだ犯罪は少ないが、悪人と呼ばれる類の人種は多い。

 愛情という飴を与えておいて、それと引き換えに――ということも考えられなくはない。


 恐らく、シノブとメイコは「ユノさん、良い人じゃん」としか思っていないだろうし――と、ユウジは自身がしっかり見極めなければとさらに気を引き締める。


 サヤのことを考えれば、彼には判断を間違えたり先延ばしにする余裕は無い。

 ここで見極めなければ、先には進めないのだ。



「甘いものは苦手だった? 口に合わなければ別のものを持ってきてもらうけれど」


「――あ、いえ、大丈夫です!」


 ユウジは、ユノを見極めようとしようと気負いすぎて、食事の手が止まってしまっていた。

 それを、当のユノに気を遣われてしまった。


 ユウジは慌ててコーヒーに口をつけ、今更ながらにそれがこの世界で初めてのコーヒーであったことを思い出す。


(――ああ、ホントに美味い)


 ユウジは鼻腔をくすぐる香りと、口内に広がる苦味や酸味を味わい、ひとつ大きく息を吐くと、少しだけ落ち着いた。



 いくらユウジが優秀だといっても、それは同年代の少年少女の中での話である。

 海千山千の冒険者を相手にするには経験が足りない。


 むしろ、彼らくらいの年齢の少年少女であれば、(さか)しらに策を弄したりせずに、経験不足ゆえの怖いもの知らずを前面に出した方が上手くまとまることもある。

 無論、相手にそれを受け止める度量があることが前提になるが。



「私のことが気になるのは分かるけれど、女性をそんなにじっと見るのはどうかと思うよ?」


 そして、ユウジの計画は、彼の経験のなさゆえに不測の事態に対応できず、軌道修正もままならない。

 それどころか、からかわれる始末だった。


「え? いや、そんなつもりでは!?」


 ユノの顔や肌が見えないせいで、女性と相対している意識が薄れていたユウジは、そんな指摘にしどろもどろになってしまう。

 口調からしてユノが本気で責めていないことは明らかだが、頭の中がパニックで真っ白になってしまったユウジはそれすら気づけない。


 ユウジは助けを求めて両隣を見るが、そこには久々の糖分に夢中になっているシノブとメイコの姿があるだけだ。



「そんなにガチガチになっていると、簡単に付け込まれるよ?」


 その言葉に、ユウジの心臓はドキリと大きく脈打つ。

 その横で、シノブとメイコは、ようやくここに来た目的を思い出して顔を上げた。


『ゴメンね、君たちの状況は大体知っていたんだ。まあ、君たちの場合は情報収集をするまでもなく、随分熱心に走り回っていたみたいだから、知らない人の方が少ないかもね』


 人が悪い――と、笑って取り繕える余裕はユウジたちには無い。


 それでも、ユウジたちの事情を知った上で、自分からは動かず、ユウジたちが来るまで待っていたということは、裏があるとは考えにくい。

 それくらいは分かる。

 そして、それが分かると、さきの言葉も本気で彼らを心配してのものだと理解できる。


 そうやって温かく見守る姿勢は、どんなことがあっても優しく出迎えてくれる母親のように感じられた。


◇◇◇


「「「お願いします!」」」


 ユウジたち3人は、詳しい事情を説明し終えると、一斉に立ち上がって頭を下げた。


 (まば)らにいた客が何事かと彼らの方に目を向けたり、奴隷の子供たちが怯えていたが、そんなことを気に留めている余裕は無かった。



「事情は分かったから、とりあえず座って」


 ユノは縮こまってしまった子供たちを(なだ)めながら、ユウジたちに再び座るように告げた。



『うーん……。言いたいことはいろいろとあるんだけど、何があっても、自分たちを安売りしちゃ駄目だよ』


 そして、想定外のお説教が始まった。


『切羽詰まってるのは分かるけど、相手の条件を何も聞かない状態で頭を下げるって、白紙委任を渡すみたいなものだよ? 仲間が本当に大事なら、安易な自己犠牲なんかに逃げちゃ駄目ダメ。同じ自己犠牲でも、彼女はその時にできる最善を尽くしたんじゃないの? 彼女がそうまでして守ったものを君たちが祖末に扱ったりしたら、彼女の覚悟が報われないと思わない?』


 ユウジたちから差し出せる物はほとんどなく、せめて誠意だけでも見せようとしたのだが、それ以前のところを指摘されてしまった。


 サヤを救う。

 最悪身体を売ってでも――そう考えていた彼らは、それ以降のことを改めて考えさせられた。


『逆の立場で考えて、――仲間が自分のために、私みたいな不審人物に奴隷のように扱われてたらどう思う? そんなことのために助けたんじゃないって思わない?』


 ユノの言っていることは紛れもなく正論である。

 結果は同じ自己犠牲でも、サヤのそれは決断であり、ユウジたちのそれは罪悪感から逃れるための逃避なのだと突きつけられているのだ。


 だからといって、どうすればよかったのか――と、反論したい気持ちを、ユウジはぐっと堪える。


 ユウジは、自分たちを怒るではなく叱ってくれる人に見放されてはお仕舞いなのだと、日本にいた時に誰かに言われた言葉を思い出していた。



「まあ、仲間を助けたいって気持ちは分かったから」


 何も言い返す――どころか、言い訳することもできずに項垂れるだけだった三人の前に、虹色に煌めく不思議な液体の入った透明な小瓶が置かれた。


 状況から考えて、ポーションの類かと思われたが、三人の知っているポーションは、赤や橙の回復薬と青い魔力回復薬、緑や白の解毒剤――後は伝説にあるエリクサーも青色だという噂を知っているくらいで、虹色のものなど記憶に無い。


「――これは?」


「薬。これをあげるから、その子に飲ませるなり、患部に塗るなり、どちらでもいいから一本きちんと使いきること。信じられないならこの話はお仕舞い。それを持って今日は帰りなさい。貴方たちにも他にもすることがあるでしょう?」


 ユノは、ユウジたちの返事を待たずに席を立つと、またしても優雅な挨拶をしてから、それ以上は何も言わずに、奴隷の子供たちを引き連れて自室に戻ってしまった。


 叱ってくれたのかと思えば突き放される。

 親切なようにも思えるが、説明が足りない。


 ユウジたちには、ユノの意図が理解できない。

 渡された小瓶を手に、困惑することしかできなかった。


 それでもしばらくすると、自分たちが場違いな場所にいるのを思い出して、そそくさと逃げ出すようにホテルを後にした。


◇◇◇


「ユノさん良い人だったね。あ、でも、サヤの分のお菓子とか、お土産にもらってくればよかったかも?」


「そ、それ、どうするんですか? 《鑑定》してもらいます?」


 天然なのか現実逃避なのか分からないシノブはさておき、メイコの言うとおり、得体の知れない薬品は《鑑定》してから使うのが常識だ。



「――いや、僕はあの人を信じてみようと思う。……《鑑定》するお金も無いしね。ふたりはどう思う?」


 明確な根拠などは何も無い。

 それでもユウジはそうすべきだと思ったし、何より《鑑定》するにも金が必要になる。

 そして、そんな金銭的余裕は無い。


「ユウジが信じるならアタシも信じる」


「わ、私もユウジ君が信じるなら……」


 ユウジにとっては有り難くない答えだったが、問い直してもふたりを困らせるだけだと、喉まで出かけた言葉を呑み込んだ。


 それに、ふたりの同意ももらって許された気分になるのは違うのだ。

 ユノの口にした覚悟とはそういうことではないのだと、ユウジはひとり納得した。




 三人は宿舎に戻ると、サヤに事の顛末を話した。


 サヤは回復魔法によって体力こそ回復しているものの、傷はまだ完全には癒えていない。


 むしろ、回復魔法では、失った部位を修復することはできないどころか、完全に傷口を塞いでしまうとそれは古傷となってしまい、再生魔法を行使する際の障害になる。

 更に時間が経つと、奇跡以外では何をどうしても戻らなくなる。


 そんな彼女が、傷口に障ることも顧みずにベッドから身を起こすと、ユウジの頬を、残された手で弱々しく「ペチン」と叩いて抗議の意を示した。


 ユノの言ったとおり、自分のことで危険な橋を渡ってほしくなかったのだ。


 そして、サヤに「私が動けない間に、死神と探索に出かけて全滅されてたら――」と泣かれてしまっては、結果オーライだなどと口にはできなかった。



 ユウジたちは、サヤに充分な謝罪と反省をさせられると、今度こそ四人で問題の小瓶と向かい合う。


 正直なところ、虹色に輝く液体など、不気味以外の何物でもない。

 一応、部位欠損どころか死の淵からでも回復するというエリクサーの青色も含まれてはいるが、ただの魔力回復薬をエリクサーと偽る詐欺は定番である。



「みんなが信じたなら、私も信じる――。いや、でも、やっぱ怖いね……。いやいや、女は度胸!」


 ユウジたちが止める暇もなく――止めるつもりはなかったが、心の準備をする暇も与えずに、サヤはその液体を一気に飲み干した。



 直後、サヤの身体がビクンと大きく跳ねると、目から、口から、そして傷口から、虹色の光が溢れた。


 これは危険な物だったのかと、ユウジたちが後悔するも後の祭りである。


 そして、ひと際眩い光を放った後、部屋には静寂が――訪れなかった。


「目が! 目があぁ!?」


 閃光で目が眩んだユウジたちが呻いていた。



 しかし、光を放っていた側のサヤの眼には影響がなかった。


 それどころか、視界が広い――失ったはずの側の目にも、光を感じている。


 サヤは慌てて引き出しを開け、手鏡を取り出す。

 鏡台の鏡はうっかり割ってしまったので、今この部屋にある鏡はこれしかないのだ。


 鏡に映る顔は見慣れた――事件の前の彼女の顔だった。

 目を失った時に一緒に付けられた大きな傷跡も、全く見当たらない。


 むしろ、以前よりお肌がスベスベになっているような気すらしていた。


「見て――見て! 治った! 手も! 嘘、じゃないよね? ね?」


 サヤが鏡を持っているのも、失ったはずの右手である。

 それに気づいて喜ぶのも無理はない。


 しかし、その喜びを共有すべき仲間たちは目を押さえて蹲っており、サヤの気持ちは行き場を失ってしまっていた。




 サヤが、今度はユウジたちが盲目になったのかと心配になってきた頃に、ようやく彼らの盲目状態も回復した。


 しかし、その頃にはサヤの興奮はすっかり冷めていて、何ともいえない雰囲気が漂っていた。

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