12 説明回
誤字脱字等修正。
「邪神か。言葉くらいは知っているのだが、どのような存在であるのかは分からないのだよ」
「経典の一節にある、神様が邪神から世界を守っているって程度かしら? 神様もだけれど、邪神やその眷属なんかも、確度の高い目撃情報は無いのよね」
クリスさんとセイラさんが、それぞれの邪神についての知識を披露してくれた。
もっとも、ほぼ何も分からないということの確認に終わっただけだけれど。
さておき、理屈の上では、神のいる世界なら邪神がいてもおかしくないのかもしれない。
しかし、それがなぜ俺の影にいるのか。
それに、何が66%なのか、その後のっJて何?
JuliのJ――俺のイニシャルだよね?
邪神のJじゃないよね?
パンツが邪――じゃぱん――横縞? 駄洒落か?
それに、年齢が妹たちと同い年なのもショックだけれど、事態はそれどころではない。
『ボクが何なのかは証明できないけど、この呼称は不本意だなー』
「でも、(呪)とか付いているのだけれど」
というか、憑いている。
言葉には出さないけれど、不本意なのは俺も同じだ。
彼が嫌だということではないけれど、同じ付くならプレミアでも付いてほしい。
いや、やっぱり要らない。
「ユーリ君、体や精神に不調や異常が出ていたりはしない?」
「自覚できる範囲では何も? いえ、むしろ調子が良いくらい――と、そういえば、服が脱げませんでした」
異常と言われて思いつくのはこれくらいだ。
「装備が外せなくなるのは、呪われた装備ではよくある症状ね。でも調子が良くなるというのは……ちょっと聞いたことがないわね。そう勘違いしているだけ、とか?」
「参考になるのかどうかは分からないけれど、頭がふたつあるイヌなら楽勝でした」
自分で言っておいて何だけれど、そもそも本来の俺の力を知らない人に対しては本当に参考にはならないな。
「ふむ。この辺りで双頭――となると、【オルトロス】のことなのだよ。平均的な個体ならばBランクの魔物だね。魔法もスキルも使わずに倒したのなら相当なものなのだよ」
「ユーリ君が嘘を言ってるとは思わないのだけれど、レベルは1のままよ? パラメータはゼロ……。1以下は1って表示されるから、誰でも最低1はあるはずなのよ? それに、オルトロスを斃してレベルが上がっていないのはおかしいわ」
『ユーリは嘘なんて吐いてないよ』
影の人がそう言うと、影の中から件のイヌの頭が姿を見せた。
というか、いきなり出されるとびっくりするので控えてほしい。
いや、スムーズに話を進めるためには必要だったか?
「ほう。なかなかの大物なのだよ。ところで、死体の眼球に花を挿すのは君の世界の風習なのかい?」
「呪いのせいだったりするのかしら? レベルが上がらなくなる呪いなんて聞いたことがないのだけれど――」
ふたりで一度に話されると、聞き取れはするけれど、混乱するので止めてほしい。
風習云々については、どう答えていいのか分からないのでスルー。
正直に話しても、よくよく考えると「気持ち悪いから飾った」では異常者だろうし。
呪いやレベルとやらについても答えようがない。
「セイラなら《解呪》が使えたのではないか?」
「専門外だから自信はないわ。――とにかく、ひとつずつ順番にやっていきましょう」
解呪という言葉には少し心惹かれる。
とにかく、セイラさんの言うように順を追ってやっていくべきだろう。
何せ、右も左も分からないのだ。
素人考えで、何も分からないまま飛びついて取り返しのつかないことになったりしても困るので、専門家か――少しでも知識のある人に頼るしかない。
分からないことは後で検証することにして、まずは鑑定結果についての説明を受けた。
彼らの勇者様が言うには、「ゲーム好きなら、ある程度直感で理解できる」らしいのだけれど、生憎とゲームは妹のお手伝い程度しかしていないので理解できない。
具体的には、俺にとってのゲームとは、レベル上げとか素材集め――適当に動かしてボタンを連打するか、任意の場所へ動かしてボタンを連打するお仕事なのだ。
妹には家事を一身に引き受けてもらっているので、その間の俺に拒否権などない。
ただ、ただ、ボタンを押す。
当然、内容など頭に入ってこない――何が面白いのか分からない。
敵と戦うのは現実世界で間に合っていたし、強くなるのも現実世界で強くなった方がいい。
おかげで今少し困ったことになっているのだけれど、「レベルを上げて物理で殴る。これが基本」と、妹がそんなことを言っていたような気がする――つまり、それを地で行く俺の方針は、この世界においても間違っていないと思われる。
まあ、レベルは上がっていないけれど、物理で殴れているのできっと大丈夫。
少し思考が脱線したけれど、「あまり詳しくないので、分りやすくお願いします」とお願いした。
◇◇◇
まずはレベルについて。
基本的に初期値は1で、特に戦闘などの経験の蓄積によって上昇する。
その経験とやらは、戦闘以外では仕事や訓練、時には遊びでも得られるのだけれど、命懸けの戦闘に比べれば上昇率は微々たるものだ。
とにかく、経験が一定量蓄積するとレベルが上昇する。
このレベルアップこそが、システムから受けられる恩恵の最たるものである。
レベルアップを果たした人は、レベルアップ以前の自分とは明確に違う存在といっていいくらいに能力が上昇するらしい。
まあ、ところどころに※個人の感想です。とか、※個人によって差があります。と注釈が入りそうな気がするので、話半分で聞いておく。
さておき、その例によると双頭蛇尾のイヌ――オルトロスという魔物を斃して経験を得たとすると、本来ならそこそこの熟練者でなければ斃せない相手なので、レベル1のままというのはあり得ないそうだ。
なお、現在考えられる原因は呪いのせい。
呪い自体は実在するらしいのだけれど、レベルアップができなくなる呪いというのは彼らも知らないらしい。
もっとも、レベルアップというものを知らない俺にとっては、呪いによって弱くなったわけでもないので大きな問題ではない。
ただ、異常だ異常だと大騒ぎをするふたりを見るとなぜか不安を覚えてしまう。
次に、クラスは職業を表す。
といっても、ほぼ自己申告に近い形で、自らの希望と能力に即したものが表示されるらしい。
例えば、いくら本人が「俺は戦士だ!」と思っていたところで、客観的に戦士足り得る能力がなければ“戦士”と表示されることはなく、逆に戦士として最低限の能力さえあれば、実態とは違っていても“戦士”と表示させることは可能らしい。
これに何の意味があるかというと、主に【冒険者】とよばれる存在が、パーティーを組む目安にするほか、稀に就職に要求されることもあるのだとか。
その冒険者というのは、世界中で広く活動している組合――【冒険者組合】に属している、雑用から魔物退治まで何でもこなす「何でも屋」のような存在だ。
中には組合に属さずに冒険者紛いの行為をしている人もいるそうだけれど、大抵は盗賊や追い剥ぎが本業だそうだ。
なお、そういった人たちが無所属なのは、冒険者組合に登録する際、職業欄に勝手に盗賊や追い剥ぎと表示されても困るからという理由だとか。
なるほど。
俺のクラスについては、別に戦っているつもりはないのだけれど、お飾りだとか無能だと表示されないだけマシなのだろう。
個体名、種族、年齢については、個体名のみ申告制。
個人情報保護の見地からだろうか?
もっとも、高レベルの《鑑定》スキルを使われると、本名や全ての偽名まで明らかになることもあるそうだ。
行政による開示請求的なものだろうか?
まあ、今のところ偽名を使うことはないのでどうでもいい。
余談になるけれど、姓を持つのは守るべき家を持つ貴族や豪商などの一部の家の人だけで、一般人は名前だけなのが一般的なのだとか。
同名の人の区別は、○○の村の〜とか、○○の子の〜という感じで区別されて、何かしらの功績や特徴がある人にはふたつ名がつくことがある。
また、上位の貴族にはミドルネームも付くのだけれど、原則としてふたつ以上は付けられない。
その理由が、昔、とある貴族が長ったらしいミドルネームに魔法の詠唱を仕込んでいて、王族とか上位の貴族に対して悪さをしようとした事件があったそうだ。
もちろん、そんなことが上手くいくはずもない――というか、「叛意あり」と自分で宣伝しているようなものに引っ掛かる方がおかしいのだけれど、どちらかというと、そんな莫迦が貴族にいると内外に示すのが都合が悪いらしい。
普通に考えればそんなことをしなくても他に手段はあると思うのだけれど、明文化していないとやらかす底抜けがいる可能性があるということなのだろう。
どこの世界でもヒトという存在は同じっぽい。
さておき、名前は隠すとか偽れるとしても、種族や年齢の詐称はできないらしい。
種族は価値観の相違なんかもあるだろうしさておいて、年齢を偽れないのはなぜなのだろう。
精神年齢が表示されているとか?
……それはそれでどうなのか。
どちらにしても、16歳だとお酒も飲めないし、夜のお店とかにも行けないよね……。
気を取り直して、HPからMAGまでの8項目の数値のことをパラメータという。
HPは生命力――という表現だけれど、ダメージを受けたりするたびに減っていって、ゼロになると戦闘不能になる。
とはいえ、この時点では死亡ではないという、正確には何と表現すればいいのか分からないものだ。
大きな傷を受けたり、骨折したりすると大きく減るらしいので、戦闘能力と言い換えるべきか――それも微妙か?
普通の人はスタミナ切れでも戦闘――に限らず、能力が低下するみたいだし。呼吸を卒業できていない人は大変である。
MPは魔力量で、こちらはゼロになると昏倒するらしい。
まあ、戦場で戦闘不能になるとか死んだも同然だと思うけれど。
STRは力の強さを、VITは体力、AGIは敏捷性、DEXは器用さ、PIEは信仰心、MNDは精神力、MAGは魔力の強さを表す。
表すと言われても、俺の場合は全部ゼロだし、そうでなくても何がどういう意味なのか分からないけれど、普通に表示される人には意味があることなのだろう。
本来は各項目ごとに数値が表示されて、数値が大きいほどその能力に長けているということらしい。
ただ、STRが力の強さというのは分かりやすいけれど、VITは体力と訳されているものの、実際にそれが表しているのは身体の強さだったり、スタミナだったり、その回復速度だったり、病気などに対する免疫の強さだったりなどなど、いろいろな要素が含まれている。
というか、信仰心って何?
それは数値で表せるものなのか?
お布施の額?
カルトなの?
異世界の常識は俺には難しい。
とまあ、一般的な《鑑定》だとこのような表記になるだけで、これはその個人の全てを数値化したものではない。
そもそも、これらは飽くまで参考程度の扱いで、実戦において重視されることは少ない。
表示されるのは予想される最大値であって、その時々のコンディションで変わるものである。
さらに、多少の数値の差はスキルや魔法、戦術で簡単に覆るからだ。
また、数値が同じでも体格が違えば実際の威力や速度は変わるようで、特に大型の魔物などは数値以上に危険な相手となるらしい。
本来これらは、対象者がどういうタイプに向いているかの適性を示すだけのものだった。
しかし、過去のとある勇者が、対象者の魔力を解析して、およその能力を数値で表示できる《鑑定》を開発した。
それを切っ掛けに、以降はそれが主流になっていったそうだ。
一応、本来の用途にも使えるし、詳細な数値を知ることのメリットもあるけれど、主に実戦をしない貴族などの間では、数値そのものを絶対視する風潮などの弊害も生まれている。
ちなみに、俺のパラメーターのようにゼロという数値はあり得ない。
セイラさんの言ったように、1以下は全て“1”と表示されて、測定エラーの場合は“エラー”と表示されるし、《鑑定》そのものが失敗の場合は表示無しになるからだ。
装置が故障していないことは、クリスさんやセイラさんの《鑑定》が正常に機能していたことで確認されている。
なお、ふたりともフィジカルに関する能力が低い反面、メンタル――いや、マジカル? とにかく、魔法に関する能力が高いモヤ――インテリだった。
他に考えられる要因は、《鑑定》を妨害する何らかの力が作用している――恐らく呪いのせいだと推測される。
またかよ、呪い。
とにかく、おかしいのは表示上のことだけなので――HPという生命力を表すパラメータがゼロだと俺は死んでいるか昏倒していることになってしまうし、STRという力を表すパラメータがゼロではオルトロスの首を斬ることは敵わない。
よって、これに関しても後回しになった。
参考までに、人族の15歳――この世界での成人男性のSTR値は8〜12くらいで、勇者を除く普通の人族の限界が100くらいだそうだ。
そして、オルトロスの首を一刀両断にするには、得物にもよるものの50くらいは必要らしい。
オルトロスの首の切断面から推測するに、俺のSTRは少なくても50以上で、AGIやDEXも非常に高いと思われる。
なお、パラメータが上昇したからといって、俺のように体重の軽さや反作用に悩む人はいないらしい。
彼らからすれば当然のことすぎて疑問に思ったこともなかったそうなのだけれど、システムのサポートは、能力の上昇に応じて反作用などの軽減も行うらしい。
ずるい。
それに、成人年齢が15歳って低すぎるだろう?
若年者の飲酒は心身にとって良くないらしいよ?
その後の数十年を豊かに生きるためにも、もう数年くらい我慢した方がいいと思うのだけれど。
また気を取り直して、スキル、魔法には一定の法則が存在する。
基本的に、術者の腕力や体力などの物理的な能力で効果が上昇するものが「スキル」で、魔力で効果が上昇するものを「魔法」というらしい。
例外もいっぱいあるけれど、本質的にはどちらも同じものである。
分類するのかまとめるのか、どっちかにしてくれないかな?
この世界の人は、どうにも面倒な性格をしているようだ。
などと、ここで不満を言っても仕方がない。
またもや気を取り直して――まず、両者ともに大まかな系統が存在する。
スキルでは「生活技術」や「戦闘技術」、魔法では「生活魔法」や「元素魔法」といったものがそれに当たる。
次に属性が存在する。
さきの例に合わせると、「生活技術:汎用」「戦闘技術:奥義」、「生活魔法:汎用」「元素魔法:火属性」などとなる。なお、火属性については「火」と省略する場合や、系統と混ざって「火魔法」と呼ばれることもある。
だから、統一してほしい。
最後に術技。
いわゆる、技術や魔法の名称のことで、「正拳突き」とか「大外刈」のようなものだと思っていいだろう。
これもさきの例でいうと、「生活技術:汎用《鑑定》」「戦闘技術:奥義《縮地》」、「生活魔法:汎用《洗浄》」「元素魔法:火属性《火弾》」のようになる。
なお、ここまでが一般的なスキルと魔法の概念で、術者によっては術技を応用した派生を行使できたりする。一例を挙げると「元素魔法:火属性《火弾―誘導―》」といったものだ。
属性には熟練度――スキルレベルというものが存在する。
一応術技にも存在しているそうだけれど、システム的な補正はなく、術者の慣れとかそういう扱いらしい。
さておき、スキルレベルは各属性ごとに1から10の10段階。例外的にSとかEXという評価もあるらしい。
何それ下ネタなの?
とにかく、レベルやパラメータの能力値で圧倒的に劣っていても、優秀なスキルや魔法があれば覆せることもあるという、かなり重要な要素らしい。
スキル、魔法共に、所持しているだけで対応した行動――火魔法ならそれに属する魔法や魔法道具、剣術なら剣を使った行動全般に、スキルレベルに応じたボーナスが付く。
ボーナスというのがよく分からないけれど、この自動で発現するスキルや魔法のことを「パッシブスキル」――略して「パッシブ」というらしい。
パッシブスキルを所持していないと、武器や術技が使えないといったことはない。
しかし、レベルアップ同様にシステムのサポートがあるため、持っているといないでは、威力、範囲、効率など、全てにおいて隔絶した差が出る。
そのため、戦闘能力の向上には、自身のスキルにあった装備の選定や戦術の構築が重要となる。
スキル、魔法の取得条件は人によって異なる。
本人の資質に合っている属性や術技は取得しやすく、合っていないものは難しい。
まあ、スキルや魔法に限らず当然のことだろう。
なお、魔法やスキルには、様々な効果のものがあるそうだけれど、共通していることがふたつある。
ひとつは、永続する魔法やスキルは存在しないということ。
それを発動した時の、若しくは持続させるための魔力なり体力なりが途切れたところで終了である。
もうひとつは、魔法やスキルでは、消費した魔力や体力を上回る効果は出ないということ。
例えるなら、魔力を回復するための魔法があったとして、消費した魔力以上の回復はできない。
他にも、【ゴーレム】という魔力で動く人形などを労働力とした場合、人間より労働効率が上がったとしても、最終的なコストと成果を魔力で換算すると、必ずマイナスになる。
永久機関とか、それに類するものは存在しないということだ。
というか、応用や機転の利かないゴーレムを労力として運用するのは失敗例に枚挙にいとまがなく、それをするのは莫迦の見本というのがこの世界の常識らしい。
一例を挙げると、「畑を耕せ」と命令したゴーレムが作物まで耕していたり、「作物は耕すな」と追加で命令を出すと、作物の無い場所を延々と耕し続けるといった役立たず具合なのだとか。
もちろん、命令を細かく出せば行動に関しては解決するのだけれど、そのコストを考えるとやはり赤字になるのだとか。
それからすると、クリスさんの造ったホムンクルスはとても優秀だ。
それでも、魔力で労働力を買っているようなものなので、効率がいいかというとそうでもない。
さておき、他にも他者から生命力や魔力を奪う、瞑想等によって魔力を回復するなど、一見すると例外に思えるものもある。
しかし、実際には生命力や魔力を持った他者がいなければ発動できないとか、時間という別のコストを必要とするなど、それらを魔力換算すると、結局は例外は存在しないことになる。
なお、この原則は、この世界の人たち以上に、魔法に幻想を抱いている異世界から召喚された勇者に刺さることが多いそうだ。
とにかく、何をするにもシステムが絡んでくる。
もちろん、筋トレで筋肉を鍛えたり、走り込みで体力を鍛えたりしても能力は成長はするし、剣術などの武術の修行をすることで技術を磨くこともできる。
ただ、レベルアップやスキルアップなどで得られるシステムの恩恵からみれば微々たるもので、底上げ程度の意味しか持たない。
地道な訓練で得た能力など、パラメータを例にすると10から10+0.001になるとかその程度のことで、レベルをひとつ上げれば10が15にも20にもなることもある。
つまり、労力に対して見返りが低いのだ。
そういった訓練が無駄とまではいわないけれど、その分の労力をレベルアップに注ぎ込んだ方が効率が良いというのが、この世界の常識である。
この世界で強くなるためには、いかに上手にシステムを利用するかといっても過言ではないらしい。
これには少し思うところもあるけれど、身近に差し迫った危険がある世界で生き抜くためには必要なことなのかもしれない。
というか、他人がどうしようが俺には関係無い。
そもそも、俺はなぜかレベルを上げられないみたいだし、無いものねだりをしても時間の無駄なのだ。
ひととおり聞いて、なるほどと思う。
ステータスとは、本人の能力の向き不向きとその資質の大きさ、技能などを表している。
個々人を数値化して比較できるのはやりすぎだと思うけれど、適性が分かるだけでも指揮官や雇用主からすれば有用な情報だろう。
要するに、これは異世界版履歴書なのだ。
差し詰め俺は、「経験も能力もスキルもありませんが、やる気と呪いだけはあります!」なのだろうか?
俺が人事なら絶対に採用しない。
今後の活躍や幸せすら祈らない。
頼むからじっとしていてください。
無能な働き者ほど厄介なものはないのだ。
更に呪い付きとか、罰ゲームでしかない。
結局、影の人のことはよく分からなかった。
《鑑定》結果にある邪神というのも、彼の余剰分のみを指していて、彼本体についてのものではない。
その邪神というのもシステムがそう判断しているだけで、本当に邪神であるかどうかは別問題だし、実際に神と比較でもしなければ結論は出ないだろう。
とはいえ、神の力も及ばない何かであると考えれば、邪神と呼ばれても仕方がない気がする。
呪いに関しても、なぜ呪われているのか、誰に呪われているのか、呪いがどういう効果を及ぼしているのかも分からない。
呪いや能力に関することは、セイラさんが検証も兼ねて、後でいろいろと教えてくれるそうだ。
妙にニコニコしてたり、「いろいろ」を強調していたりするけれど、他意は無いと思いたい。
それでも、魔法が使えるようになるかもしれないのは、ちょっと楽しみかもしれない。
クリスさんも情報収集の傍ら、時間があればいろいろと教えてくれるそうだ。
特に、この世界で活動するに当たって、最低限の知識は身につけたほうがいいと言われた。
当然といえば当然だ。
ただ、覚えなければいけないことの範囲が広すぎる。
それに、勉強は得意ではないので気が滅入る。
それでも、早く帰るためには必要なら仕方ない。
ただし、見返りも要求された――とはいえ、当然のことである。
とはいえ、ふたり揃って、たまには俺のいた日本のこと教えてもらいたいとお願いされただけだ。
よほど勇者のことを尊敬しているのだろう。
それくらいで恩返しになるのなら、喜んで応えたいと思う。
とりあえず、こんなわけの分からない世界で最初に出会ったのが彼らだったのは幸運だったのだろう。




