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25 最強の魔法

 ささやかな打ち上げを終えると、すぐに公爵領近隣の亜人さんたちの回収に向かう。


 今回は、瞬間移動を行わずに、ミーティアに乗って束の間の空の旅だ。



 指定場所に到着すると、以前救出した亜人さんたちに交じって、多くの猫人さんたちが集まっていた。


 増えていたのは猫人さんだけでなく、狸や狐の亜人さんに、またもやオークさんまでもが、新天地に期待を膨らませて私たちの到着を待っていた。


 そして、ミーティアを見て腰を抜かしていた。



 彼らは、公爵領や帝国近辺で普通に生活していた人たちで、必ずしも公爵家や帝国から被害を受けたわけではないらしい。


 ただ、被害が出ていることを知っているとか、危険を感じていたところに、ゴニンジャーがやってきて口車に乗せられたそうだ。

 よく信じる気になったものだと呆れそうになったけれど、決断の決め手が、百鬼夜行の噂だったらしい。



 帝国の砦が悪魔に滅ぼされたとか、銀竜が倒されたとか、湖の迷宮で魔王が出現したとか、そういった噂は広まるのが早い。

 よほど遠い場所でのことでなければ、自分たちの生活に影響が出るかもしれないことなのだから、当然といえば当然だ。


 さらに、私が天使に襲われた時の光景を目撃した人も少なからずいて、詳細までは分からなくても、何だか大変なことが起きていることは感じていたのだろう。


 そこに、百鬼夜行の噂が合流した。


 あの時、壊れた世界から百鬼夜行が溢れ出して、卑劣な山賊や、外道な悪徳領主や、悪逆非道な帝国に牙を剥いている。

 実際に、潰された駐屯地や砦もあるという。


 その百鬼夜行の主が、今なら楽園に連れていってくれるとかどうとか。

 ……随分話が飛躍したな。


 もっとも、そんな話を信じたのは半数ほど。

 半数も信じたとか、この世界は狂っている。


 残りの半数は、百鬼夜行の主がいう楽園と聞いて、「あの世」を連想したので応じなかったらしい。


 さすがに、百鬼夜行があの世に招待するなら、わざわざ勧誘なんてしないと思うけれど、そうやって旨い話に飛びつかない慎重さは重要だと思う。


 とにかく、そんな感じで、ちょっと頭が可愛そうな人たちがいっぱい集まってきたらしい。



 うちの人口が増えるのは構わないのだけれど、この周辺のいろいろなバランスは大丈夫なのかとか、町にオークさんが増えると何か影響が出たりしないかとの不安もある。

 どちらも私が気にするべきことではないけれど。


 さらに、ここに集まっている人たちだけでなく、移動の遅い種族や移動のできない種族が集まりきれていないそうで、それらも回収しに行かなければならないらしい。



 まず牛人族。

 以前、砦から救出したのとは別口で、保護を求めてきたそうだ。


 牛歩という言葉もあるくらいだし、歩くのが遅いのは仕方ない――と思いきや、ミーティアの姿を見るや否や、結構なスピードで逃げ始めた。


 もちろん、私たちから逃げられるはずもなく、さっくり回収させてもらったけれど、逃げ惑う人たちの回収は、何だか山賊にでもなったかのような気分になる。



 続いて、ドライアドという木――というか、木の魔物とか精霊のような種族。

 本体は木なので動けないのだけれど、人型の分身というか義体を使って行動することもできるらしい。

 強い魔力を持っている種族らしいのだけれど、動けない上に火と金属性に弱いという致命的な弱点を抱えているため、保護してほしいと願い出てきたそうだ。


 火は分かるけれど、金属性って何だ?


 なお、彼女たちの人型は、例外なく美しい女性の姿だった。

 この姿だといろいろな種族の男の協力が得られやすいそうだ。

 男って莫迦だねえ。



 そして、河童。

 頭の皿が乾くと死んでしまうそうで、水の豊富なところから離れられないらしい。

 うちだと海水とか温泉になるのだけれど大丈夫なのだろうか?

 彼らが管理してくれるなら、いっそ湖を造ってしまうのもいいかもしれない。


 なお、尻子玉を抜いたりする風習はないそうでひと安心だ。

 むしろ、尻子玉のことを知らなかったくらいだ。

 伝承も当てにならないものである。


◇◇◇


 そんな感じで、かなりの数の入植希望者を連れて帰ると、お城のあった崖の上には、なぜか巨大な神殿が建っていた。


 どういうことだ?


 とにかく、それは元のお城よりも遥かにサイズは小さいものの、パルテノン神殿っぽい巨大な物だった。

 少なくとも、半月弱で造れるような代物ではない。


 何より問題なのは、天辺には私を(かたど)ったような石像もあったりして、私を(まつ)っているのは疑いようもないことか。



 状況が理解ができなかったのは私だけではなかったようで、着陸する前に、辺りをひと通り観察して回ることになった。




 私のお城と敷地は、神殿から海を越えて東に五百メートルほどの海上にある島の上に移動していた。


 というか、あの不自然すぎる巨大な円柱状の島は何だ? 

 以前のように、景観を損ねているとか、そういうレベルの物ではない。

 むしろ、ここまで人工物感が出ると、整備された観光地のようでいっそ清々しい。



 島の海抜は三十メートルくらいで、神殿のある高台の高さとほぼ同じ。

 ただ、島の外周は高い城壁で囲まれているため、ぱっと見は崖より高く見える。


 島の直径は何キロメートルあるのだろう?

 比較対象が無いので分かりにくいけれど、以前の敷地より広くなっていることは間違いなさそうだけれど。



 お城の乗っている島というか土台というか柱は、よく見ると石というよりはコンクリートっぽい質感で、中にはしっかりと鉄筋が編み込まれているようだ。


 この世界に鉄筋コンクリートの技術が伝わっているのかどうかは分からないけれど、規模の大きさと、頭のおかしな発想からして、アルの仕業だろう。


 てっきり王都で仕事をしているものだと思っていたのだけれど、ここで油を売っていたのか?

 とにかく、この変化に何の意味があるのかは分からないけれど、永続する魔法は無いという原則的に土台が心配なので、私の方でも補強だけはしておこうと思う。



 その島と、神殿のある高台が、大きな橋で結ばれている。


 橋は石造りのかなり巨大な物で、大型の馬車を基準に片側3車線くらいはある。

 さらに、一番外側には歩道と、人魚たちも移動できるような水路がついていたりもする。


 橋と島の接続点には巨大な金属製の門があって、誰がどうやって開けるのか、そもそも何のためにこんな物を設置したのか分からない。


 とにかく、この門をくぐって、ずーっと東に行くと、島の東端くらいにお城があるそうだけれど、門の位置からだと地平線の向こうなので、お城の姿は見えない。


 お城自体は以前と変わらないようだけれど、他のスケールがアップしすぎているので、帰ってきたという実感が湧かない。




 何が何だか分からないけれど、分からなければ訊けばいい。

 というか、訊かなければならない。



「さすが英雄といわれるだけのことはありますね。ああ、神殿の建設には彼の手は借りていませんのでご安心を」


 シャロンに事情を訊くと、ニコニコとしながら答えてくれた。

 何を安心しろというのだろう。



 シャロンたちでは埒が明かないので、こうなった状況をアルに詳しく訊いてみた。


 今はまだ事後処理の最中だろうし、あまり邪魔はしたくは無かったのだけれど、放置できる問題でもない。


 やむなく通信珠で連絡を取ってみると、誇らしげな声で回答があった。



 アルが物資の搬入ついでにここの様子を見ていたところ、狂信者たちが、彼が建てていた仮設住宅を利用することもなく、ずっとお城の周辺で神殿を建てるに相応しい場所を探していたらしい。


 それを見兼ねたアルが、彼らのために神殿を立てる場所を用意するついでに、私たちの住処をラスボスの住むお城から裏ボスの住むお城にコンセプトを変更して、いろいろグレードアップさせたのだとか。


 つまり、ラスボスは神殿に、裏ボスはお城に――ということらしい。

 意味が分からない。



 ただ、これだけの大工事を、さすがにこの短期間に単独でやり遂げたわけではないらしい。


「それは分かりましたが、その、後ろにいる方たちは?」

 アイリスが、シャロンの後方でこちらの様子を窺っている、私たちの知らない存在について尋ねる。


「それが、彼らはここの良質な魔素に惹かれて自然に集まってきた精霊たちなのですが、何でもするからここに置いてほしいと――。ユノ様の許可も得ずに敷地内に侵入させて申し訳ありません! この償いは――」

「そんなことで自害しようとしないでください!」


 アイリスが、不穏な雰囲気と共に短刀を握りしめたシャロンを制止する。

 自害なのか小指を詰めるつもりだったのかは分からないけれど、どちらにしても迷惑でしかないので勘弁してほしい。



 魔素に誘き寄せられた精霊は、ノームという小人のような土の妖精と、ウンディーネという人間の女性そっくりな水の妖精の2種族だ。

 数はそれぞれが五十に満たないくらい。


 それぞれの属性に合った魔力が濃い場所に住み着く習性がある種族で、魔力の素となる魔素が満ちているここは、彼らにとって楽園らしい。


 つまり、これから更に増えるのは間違いなく、そのうちにサラマンダーとかいう火の精霊や、シルフという風の精霊なども来るかもしれない――いや、絶対に来るとのことだ。

 そう断言できるくらいに、この辺りの魔素濃度が高いらしい。



 そして、神殿の建立に、島を作ってお城を移動させることに協力したのも彼らだそうだ。


 ノームが良質な石材を造りだして、ウンディーネが水を使っての加工や運搬などなど。

 本来ならそこまでの力はない彼らも、この地の潤沢で良質な魔素――自動販売機に触れて、時にはお酒に溺れることで、通常では考えられない力を発揮していたのだとか。


 私たちが留守にしていた短期間で、どうやってこれほどの物ができたのかの謎が解けたけれど、どう評価するべきなのかは分からない。



 また、ノームの恩恵で土質が、ウンディーネの恩恵で水質が良くなったとかで、作物の質や成長が良くなったとか。


 ついでに、温泉の質も向上しているらしいので、こればかりはグッジョブというほかない。


 どのみち、ドライアド――木の精霊もお城に植える予定だったし、彼女たちも合わせれば、庭園の維持管理もできるのではないだろうか。



 ひとまずは、シャロンたちに精霊の面倒を見させて、もう少し町に余裕ができれば、お城で働く人を募集することになった。


◇◇◇


 新規入植者と先住者を神殿前の広場に集めて、後のことはシャロンを始めとした巫女たちに任せる。


 何でもかんでも任せっきりで悪いなーとは思うものの、政治や経済や宗教は私向きの仕事ではない。

 というか、現状私が何かを言うと、神の言葉か何かにされてしまうおそれがある。

 ヤバい人に燃料を与えてはいけないのだ。


 なので、そういうのはもう少し私のことを知ってもらってからにした方がいいと思う。

 私みたいなのが神なんてとんでもない。

 そもそも、神なんてろくでなしの代名詞だろう。

 人の世界のことは、人の手で行ってこそだ。


 少し退屈な気もするけれど、私も警察や軍隊と同じで、仕事がないことが一番平和なのだろう。



 さておき、先住者からしてみれば、突然倍以上増えた人口に、新規入植者からしてみれば、「豊か」という言葉では片付けられない世界が目の前に広がっていることに、驚きを隠せないようだ。


 オークというなんちゃってではなく、鬼やアラクネーという一端の魔物が混じっていることも騒ぎの一因かもしれない。

 普通は捕食者と被捕食者の関係っぽいしね。



「静粛に!」


 シャロンの凛とした声が広場に響き渡ると、浮ついた雰囲気はピタリと収まった。

 アイリスといい、巫女の声には不思議な力があるのだろう。

 羨ましい限りだ。


「私たちごときの種族の違いなど、ユノ様から見れば些細なことです!」


 シャロンは一体何を言っているのか。


 そんなことはない。


 アラクネーは人型のところがなければアウトだし、完全な虫やミミズやナメクジみたいなのは駄目だ。


 人を見た目で判断してはいけないのは重々承知しているけれど、駄目なものは駄目だから仕方がない。


 そういえば、サラマンダーはトカゲ型だといっていたように思うのだけれど、油でギトギトだったりしたりどうしよう?



「新しくこの町にやってきた皆さん――いえ、これから共に暮らすことになる皆さん、ようこそいらっしゃいました」


 シャロンが、新規入植者の方をゆっくりと見回しながら話し始める。

 アイリスもシャロンも、いつも突然仕事を振るのに、まるで原稿でも用意しているかのように上手く喋るものだと感心してしまう。


「先ほど申上げたとおり、この町では種族の差、力の差、容姿の差などは大きな意味を持ちません。全てはユノ様からすれば些細なものです」


 既存も新規も、みんなうんうんと首を縦に振っているけれどそんなことはない。

 変な説得力があるのだから、発言内容に気をつけてほしいのだけれど。



「この町はユノ様の恩恵によって成り立っていますが、ユノ様は私たちに何ら見返りを求めておられません」


 それも、微妙にニュアンスが違う。

 町の開発とか生活が落ち着いたら、お城の方に人を回してもらうつもりなのだけれど……。


「ですが、ユノ様は努力する人を好みます」


 確かにそうだけれど――それだけ?

 それだけだと、「だから何?」って話で終わるのではないだろうか?


 シャロンは町で暮らす上の注意点――町も人も私に見られても恥ずかしくないように5Sを心がけようとか、お城へのアクセスの方法や禁止事項などについて話している。


 いつの間にそんなルールが決められたのかも知らないのだけれど、至極真っ当な内容だし、私としては彼らの自主性からくるものを無下にはできない。



 彼らがこの先どうなるかは分からないけれど、ひとまず学校や病院くらいは私の方で用意しておこうと思う。

 活用するかしないかは彼ら次第だけれど。


 なお、この世界での病院の役割は教会が担っているけれど、私の名前で造った教会などろくなことにならないと思うので、この町では「病院」という名前で運営するつもりだ。


 とまあ、当初は干渉するつもりはなかった町のことも、これだけ大規模になれば、無責任にならない程度の介入は必要だと思う。

 最低限、子供たちの権利の保護とか、大人も含めた福祉とか。

 ああ、一応、生贄とかは禁止しておいた方がいいだろうか?


 とにかく、最終的に自立してほしいと思っているのは変わっていないので、干渉は最低限に留めるけれど、願わくば私たちも楽しめるような町や文化を創ってほしい。


 とはいえ、多種多様な種族が共存するだけでも難しいだろうとは思うけれど――などと考えていたところに、シャロンから声がかけられた。


「ではユノ様、最後にひと言お願いします」


 何……だと……!?

 そんなこと聞いていないよ?


 そういうことは先に言ってくれないと――いや、私はこの町の支配者でも何でもないから――などと言える雰囲気でもない。


 ヤバい。

 表情には出さずに焦りながら、静まり返った広場を見ると、みんな期待を込めた目で私を見上げている。

 大人だけならともかく、子供たちも期待しているし、「私、知らない」と、放り出せる状況ではない。


 なぜこんなことになってるのかなあ?

 私は家に帰りたいだけだったのに、いつの間にか異世界で神扱いだよ!?


 などと、心の中で愚痴っても状況は変わらない。


 女は度胸――元々は男だけれど、今はそんなことはどうでもいい。

 どのみち、全員を満足させられる言葉なんて出ないだろうし、思うままに言ってやろう。



「みんなで私を楽しませて」


 自分でも何を言っているのだろうと思わなくもないけれど、眼下ではみんな拳を振り上げ、或いはガッツポーズをとって気勢を上げている。

 そんな反応するようなことを言ったつもりはないのだけれど……。



「以上、ユノ様の有り難いお言葉でした。それではこれより、新しく来られた方たちの歓迎会を行いたいと思います」


 シャロンがそう言うと、兎と犬の亜人たちが神殿内へ入っていき、そこから大量のお酒や料理を運び出し始めた。


 私たちは事前連絡無しで帰ってきたので、満足に用意する時間などなかったはずなのだけれど、そこはバーベキューなど、料理をしながら食べられるものがメインになっているようだ。


 とはいえ、結構な人数分となると、アルに用意してもらっていた分を相当消費するだろう。

 それでも、衣食足りて礼節を知るともいうし、お腹が減っているのに友好も共存もあったものではないのかもしれないし、必要な出費だと思おう。



 アルにはまた食料の調達やらいろいろと助けてもらわなければならないようだ――いや、瞬間移動もできるようになったし、食糧調達くらいは自分で行くべきか?


 とにかく、私からも何か差し入れをするべきかとも考えたけれど、それで彼らの努力をふいにしてしまうのは良くないと思う。

 なので、シャロンにも宴会に混じってくるように告げて、私たちはお城に戻ることにした。


 私も帰ってきたばかりでやることが山積みだし、町の人の交流に私が混じるのも無粋だろう。

 何より、素面で平伏するような人たちが酔っているところに飛び込むのは勇気が要る。


◇◇◇


 お城に戻ると、真っ先に厨房へ向かって、マザーを配置した。


「貴方には、今日からこのお城の料理長になってもらおうと思う」


『ボクたちの食事や、来客があればその食事をお願い。部下にホムンクルスを何体かつけるから、上手く使って』


「今日からこの広いキッチンが俺の城か。ありがとう――いや、感謝の気持は、全力で期待に応えることに替えさせてもらうぜ。母う――おっといけねえ、ユノ様!」


 マザーはやる気に満ち溢れているようで、プルプル武者震いのようなものをしていた。

 興奮して余計なことを口に出しそうになっていたけれど、とりあえずは目からビームを出さなければいい。



 続けて、自動販売機の改修か新造をしようかと思ったけれど、新しい魔法を創るたびにやるというのは非効率だと気がついた。


 ということで、城内の自動販売機や、それ以外のあれこれの管理用の邪神君を創ることにした。


 これで何かあっても、この邪神君をアップグレードすれば、他の自動販売機などにも自動で反映される――と、我ながら良いアイデアだと思う。



 とりあえず、雑事はこれくらいにしておいて、温泉に浸かって汚れと疲れをとる。

 もちろん、汚れても疲れてもいないのだけれど、気持ち的な問題だ。


 温泉でさっぱりすれば、待ちに待った具入り麺パーティーの始まりだ。

 サイドメニューも豊富にあるし、それ以外もマザーが対応してくれる、超豪華な食卓である。


 どこで嗅ぎ付けたか、アルも偶然を装って来訪していたけれど、祝勝会だと思えばいいだろう



「美味しいですね。――美味しい麺料理を出す店はこの世界にも多くありますが、ここまでクオリティが高いのは、本当に前世振り――前世でもここまでのはないですね」


「ほんと、何てもん食わせるんだよ。お前のとこで飯食ったら、他で食えなくなるじゃねーか」


 いつもどおり、味は当然のこと、何か変な補正でも入っているのかと疑うくらいにお箸が止まらなくなるクオリティに、自分でも大満足。

 アイリスとアル、日本での味を知っているふたりにも好評なら、成功といっていいだろう。


 もちろん、リリー、ミーティア、ソフィアの3人も、麺だけではなく、唐揚げや餃子などの料理にも大喜び。

 そして、ますますクオリティを上げていくソフトドリンクやお酒にも舌鼓を打っていた。


 惜しむらくは、餃子のたれなどの調味料の用意を忘れていたことだけれど、アルが手持ちの調味料を組み合わせてそれっぽいものを作ってくれたので、事なきを得た。


 これはこれで良いものだったけれど、ホストとしては速やかに調味料も創り出すか、揃えておかなければならない。



 みんなが楽しそうにしているのを見て実感する。

 やはり、スキルや魔法は――いや、それに限らず、人を笑顔にできるものの方がいい。


 そういう意味では、私の料理魔法は満点だけれど、町やお城の方でも、そういうので溢れるといいな。

 お読みいただきありがとうございます。

 本章では、ユノ本人はこっそり暗躍しているつもりで、被害者としては事態が大きすぎて下手に動けなかったとか、情報統制に必死でそれどころではなかったとか、そんな感じの情勢になっています。

 ひとつ幕間を挟んで、次章では本拠地の生活基盤を確立させようと、邪神的スローライフに挑戦します。

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