自我
「死ねるなら死にたい」
彼はそんな無責任な言葉を放つ
蚊の鳴くような声で
震えながら
彼が放つもの全て
聞いたことのない出来事 私の中にない経験
そんな言の葉を
詰まりながらも 錯綜しながらも
確かに 一つの線となるように紡いで
私に届く
ここまで来た己への憐憫
晴れぬ先への憧憬
絞り出すように出てきた言葉は
冬の空気よりも重く
私の心に落ちてゆく
廻り 廻り 巡り廻る
心を
身体を
血管を傷つけて
落ちる 落ちる 落ちる
私の深層心理に
育ってきた 育てられてきた 価値観に
変わる 変わる 替わる
私の中身が 徐々に 確実に
私は彼に代わってゆく
切らなくちゃ 離れなきゃ
彼の下から 聞こえてくる音から 届いてくる電波から
怖い 嫌だ 逃げないと
震える指を動かして
彼を私から引き剥がす
もう見えない 聞こえない 届かない
安心だ 安全だ 助かった
そうだ
このことをみんなに伝えなきゃ